政府・与党が進める税制改正の議論が本格化する中、東京都の政策財源を巡り、政治の緊張が高まりつつある。地方税制度見直しの検討に対して、小池百合子東京都知事は12月5日、「東京を狙い撃ちにするか如く一方的に収奪し、他自治体に分配することは地方税制や地方自治の根幹を否定するものにほかならない」と批判した。総務省の試算によると、東京都が独自財源として活用可能な規模は全国46道府県の約3.6倍に達し、地価上昇や法人税収増を背景に突出した財源余力を持つ。一方、政府・与党はこの偏在是正を名目に、地方法人税や固定資産税の制度見直しを、年内策定の2026年度税制改正大綱に盛り込む方針と伝えられる。
子育て政策を巡っても摩擦が生じている。政府は児童手当拡充と高校無償化の実施に伴い、高校生扶養控除額の縮小を検討中で、所得税(現行38万円)と住民税(同33万円)をそれぞれ25万円、12万円に引き下げる案が俎上に載っている。仮に実施されれば、控除縮小額は合計34万円に達する見通しで、国民民主の榛葉賀津也幹事長は、「(高校無償化の財源負担で)高校生の親御さんい増税でしょう?あり得ない。時代に逆行している」と批判を強めた。これを受け高市総理は、「私が縮減に関する指示を出したということもありませんし、与党税制調査会で本件について決定した事実もありません」とXに投稿した。
米実業家のイーロン・マスク氏が率いたDOGE(政府効率化省)の日本版が始動した。12月2日には租税特別措置・補助金見直し関係閣僚会合の初会合が開かれ、片山さつき財務大臣は「直ちに、見直し可能な項目があれば反映する」と表明した。租税特別措置は企業に対して、特定の行動誘導を目的とする条件付き減税で、2023年度には約2兆9000億円の法人税収が減少した。しかし、対象企業名が公表されず、効果検証が不透明であるとの指摘がある。
自民党と日本維新の会は12月5日、衆議院議員定数(465)について1割削減を工程に明記した法案を国会に提出した。法施行後1年以内に与野党で改革案がまとまらない場合、小選挙区25、比例代表20の計45議席を自動的に削減する規定を組み込んだ。自動削減規定を含む合意は、当初から自民党内部にも深刻な反発を招いた。自民党総裁・高市氏と維新代表・吉村洋文氏が12月1日、定数1割削減で合意したことを受け、2日には、自民党の党内審査が行われたが異論が噴出。了承は見送られた。岩屋毅前外務大臣は、「拙速で乱暴なやり方だということは指摘した。『問答無用条項』みたいなものを付けるのは与党の姿勢としていかがなものか」と明確に反対の姿勢を示した。与党は3日、2日連続の審査を経て、ようやく法案了承にこぎつけた。
法案成立には野党の賛同が不可欠だが、主要野党は強く反発した。立憲民主・野田佳彦代表は12月5日、「与党だけで期限を決め、数を決め、ダメなら自動削減。二重、三重に乱暴すぎる」と断じた。国民民主・玉木雄一郎代表も「論点がずれている。本来は定数削減を含む選挙制度改革の議論をすべきだ」と批判。公明・斎藤鉄夫代表も「自動削減は民主主義の手続きを否定するやり方」と批判した。
★ゲスト:林尚行(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役)、佐藤千矢子(毎日新聞専門編集委員) ★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)