新型コロナウイルスの影響で外食の需要が落ち込むなど酒蔵にとっても厳しい状況が続いています。そんな中、こだわりの日本酒で差別化を図り、販路を海外に求める酒蔵の取り組みをご紹介します。
1本11万円の日本酒…その秘密とは
大量のお米を蒸しているのは大正4年(1915年)創業、岡山市中区にある宮下酒造です。
毎年12月から3月にかけては「寒造り」といわれ、日本酒造りの最盛期です。そんな酒蔵も新型コロナの影響を受けています。
(宮下酒造/宮下附一竜 社長)
「街の中の飲食店やホテル観光地のお土産としてのお酒、こういったものが全然売れなくなっている」
岡山県酒造組合によりますと、2020年の県内の日本酒の出荷量は、2019年と比べて21.9パーセント減少しました。宮下酒造でも日本酒の売り上げが前の年の約7割となっています。
そんな中、窮地を脱するため新たに1月に販売を始めたのが、純米大吟醸「MIYASHITA ESTATE」です。価格はなんと、1本11万円!
(記者リポート)
「貴重なお酒を試飲させていただきます。すごい華やかな上品な香りでおいしい」
「MIYASHITA ESTATE」の原料には、岡山県産のブランド米「雄町米」が使われています。破格ともいえる高価な日本酒の秘密は、なんと7パーセントの精米歩合にあります。
精米歩合とは、玄米から表面を削り取って残った部分の割合を示す数値です。普段日本酒用に使われる米と比較すると、かなり小さく削っているのが分かります。
これを酵母で仕込み、1年以上熟成させて仕上げています。この高価な日本酒が中国の富裕層の目にとまり、これまでに10本売れたということです。
(宮下酒造/宮下附一竜 社長)
「とにかく高級な酒が売れるということで、とても助かっている」
そしてもう一つ、思わぬところで海外での販売に成功した事例も。
浅口市の魅力を全て詰め込んだ日本酒
慶応3年(1867年)創業、浅口市にある丸本酒造です。
国立天文台などがある浅口市は星空が美しいことで知られ、「天文のまち」と言われています。
地元にこだわる丸本酒造は、原料の米を浅口市で自社栽培しています。そして、地域の美しい星空を瓶のラベルに表現しました。
(丸本酒造/新井裕貴さん)
「僕らがお酒造りをしている場所は気候が良くて星空がきれいに見える場所という要素を全て詰め込んだお酒」
するとこれが香港のバイヤーの目に留まりました。1000本を販売したうち480本は香港に出荷したということです。
(丸本酒造/新井裕貴さん)
「寒星という言葉がしっかり響いたかもしれないし、見た目が気になったのかと思う」
コロナ禍の中、それぞれの工夫で逆風を乗り切ろうと生産者は試行錯誤しています。