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発災から9か月“復興の遅れ”象徴 「倒壊したビル」なぜ解体がすすまないのか?

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■発災直後に倒壊した7階建てのビルのいま

 輪島市、志賀町で震度7を記録、甚大な被害をもたらした能登半島地震、発生から間もなく9カ月が過ぎようとしています。

テレビ朝日 平石直之アナウンサー 「こちらの建物は傾いていますね。その先も壊れていまして、その先もですね、まだまだ解体が進んでいないのですね」

 地震によって全半壊した家屋は申請すれば公費で解体してくれますが、輪島市では解体が完了したのはわずか6.9%。周辺の自治体のなかでも復旧作業が遅れています。

テレビ朝日 平石直之アナウンサー 「この建物ですね。今も横倒しのままです。一部はこう車道にはみ出しているんですね。ずっと気になっていたのですけども解体が始まる気配はありません」

 輪島市の中心部、老舗の漆器工房と店舗が入っていた7階建てのビルは地震直後に倒壊、隣にあった居酒屋の建物を押しつぶしました。

テレビ朝日 平石直之アナウンサー 「ここには住宅があったんですけれども、それが押しつぶされてお2人の方が亡くなりました。本当に心が痛みます」

 この道は近隣の小学校の通学路にもなっていて、毎日多くの児童が登下校に使っています。

小学生 「(Q.倒れた建物がずっとあることについて)ずっと信号が渡れなくなったりとかちょっと怖い」 「車も通りくいしね」

 いつ大きな余震が来るとも分からないなか、9カ月放置されているビル。地震の後、日本建築学会の調査チームとして現地調査を行った金沢工業大学の山岸邦彰教授に、なぜビルは倒壊したのか聞きました。

■「見たことない破壊状況」原因究明求める声

金沢工業大学 建築学部 山岸邦彰教授 「(Q.山岸さん、この状態から特徴としてどういったことが言えるんでしょうか?)一つは上の上部構造がそんなに大きな損傷を受けていないという事がよく分かると思います。どのような時系列で倒れたかは分かりませんけど、基礎がやられてしまってゆっくり傾いていって、上部がそれほど問題なくきれいな形で倒れていったというふうに想像できます」

 山岸教授によると、ビル倒壊は建物部分へのダメージではなく、建物を支える地盤と基礎部分に原因があったと言います。

金沢工業大学 建築学部 山岸邦彰教授 「(Q.本来建物は(基礎に)杭が走っていて、それによって倒れないように作られていると思うのですけど、建物はどうなってしまったのですか?)本来ならば(建物の重さで杭が)圧縮を受けていたものが引っ張り側になってて抵抗できずに切れてしまった、ないしは取れてしまった」

 地中の杭に支えられているこのビルが建設された1970年代は地震による水平方向の力に対する規制が想定されていなかったため、震度7の揺れによる力には耐えられなかったと推測できると山岸教授は指摘します。

金沢工業大学 建築学部 山岸邦彰教授 「(Q.土もむき出しになっていますが地盤はどうだったのか分かることはありますか?)事前に調べますと、こちらの地盤は相当軟弱な地盤でございまして、建物が地盤の中に思いきり埋め込まれている状況になっているのが分かると思うのですが、今回は地盤そのものが破壊されて建物を支持できなくなって、このような形になってしまった。私自身も見たことない破壊状況になります」

 専門家も経験したことがないというビルの倒壊。撤去の前にその原因を突き止めたいと望む人がいます。

 楠健二さんは倒壊したビルの隣で居酒屋を経営、自宅を兼ねた家屋は押しつぶされ、家族を失いました。

自宅がビルの下敷きに 楠健二さん 「居るんだったらいくらでも見せるけど、居なくなっちゃったからさ」

 今年6月から、以前住んでいた川崎に輪島の店と同じ名前の居酒屋をオープンしました。

自宅がビルの下敷きに 楠健二さん 「やはり向こうではちょっと住むことは考えにくい。店がないしね、当然地震で犠牲もあったし、今は居たくないっていう」

 地震の後、何度も輪島を訪れた楠さん。ビル撤去を求める地元の声も聞いたと言います。

自宅がビルの下敷きに 楠健二さん 「向こうに帰るたびにドンってあれが見えると、また1月1日に引き戻されちゃうの、すべての気持ちが。だけどあれをさっさと潰してしまったら、調べられるものも調べられなくなっちゃうじゃないですか」

 時間はかかっても、ビルを撤去する前に倒壊の原因を解明してほしいと願う楠さん。その訳は。

自宅がビルの下敷きに 楠健二さん 「うちの場合は自分の家が倒壊した訳ではなく、要はビルが倒れたから色々なことが起きているわけで、いまだにやっぱり地震のせいじゃないという気がしてどうしようもない、俺の気持ちの中で」

 春には結果が出ると言われていた倒壊ビルの調査。9月末の今も終了していないのはなぜなのでしょうか。

 今年4月に起きた台湾東部沖地震では多くの建物が倒壊するなか、発生翌日には傾いたビルを安全確保のために撤去。台湾では有事の際、安全確保の必要がある場合、持ち主への通告なしにビルを撤去できることが法律で決められています。

■解体進まない“横倒しビル”取り巻く問題

 先月17日、輪島市の坂口市長は懇談会で解体に向け、国と準備を進めていると説明しました。“復興の遅れ”の象徴とまで言われてきた横倒しのビル。建物の公費解体を受け持つ輪島市に聞きました。

輪島市企画振興部 山本利治部長 「(Q.解体が進んでいないことに市としてどう受け止めていますか?)やはり危険ということ、そして心の部分で解体が進まないというイメージの一つになるので早く解体してほしいという市民の声を多く頂いております」

 市民の希望が寄せられるなか、今も解体作業に入っていないのはなぜなのでしょうか。

輪島市企画振興部 山本利治部長 「(Q.調査の主体は市と国土交通省でよろしいですか?)基本的には国土交通省ということになります。国・関係者からいいですよという返事をもらえれば、すぐに作業に入れる状況を市の立場で作っています」

 本来、公費での解体は輪島市が申請を受けて行いますが、今回のビル倒壊では国土交通省が原因解明の調査に入ったことなどもあり、輪島市の一存では解体ができないと言います。

 一方、国土交通省は8月から状況把握の調査を始めていますが、建物の骨組みや基礎部分の調査は解体しながらでないとできないことから、市による公費解体の開始を待っているといいます。

 さらに解体にあたっては他にも条件があります。

輪島市企画振興部 山本利治部長 「(Q.ビルが倒れた映像のインパクトはとても大きくて、それがそのまま残っている、これも衝撃が大きいわけですが、なかなか倒れたからといってすぐ解体できないんですよというふうに捉えた方がいいのか)公費解体するにあたってはビルの所有者、そして周辺の住人の同意という形がすべてそろった時点で公費解体ができるということで、その書類自体なかなかそろわない。同意を得ることができなかったのかなと思っております」

 倒壊したビルだけでなく、輪島市全体で公費解体がなかなか進まない理由の一つが人出不足です。

解体業者  「(Q.どちらから皆さんいらっしゃったんですか?)上田市。長野県から」 「(Q.じゃあ全国から集まって解体にあたっているという)そうですね」 「(Q.長野からこちらに住み込みみたいな形ですか?)珠洲市の方に寮を借りて泊まり込みでやらしてもらっています」

 あまりにも被害が大きいため解体を行う業者など、復興の手が足りていないのが現状です。

 輪島市中心部で今も横たわったままのビル。倒壊の原因調査がいつ終わるのか?解体作業はいつ始められるのか?準備だけが進められています。

(2024年9月29日「サンデーLIVE!!」ヒライシ未来視点)

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