ホンダと日産の経営統合に関して、番組ではその背景を探るため、中国やタイを取材しました。見えてきたのは、電子機器やスマホメーカーまでEV開発に乗り出すなど、自働車業界が100年に1度の転換点を迎えている実態でした。
■往年ファン悲哀 「やはり“エンジン音”」
(草薙和輝アナウンサー)「こちら栃木県佐野市では、クラッシックカーが集まるイベントが行われています。ホンダのN360、日産のスカイラインGT―R、時代を彩った名車が集まっています」 スカイラインGT―R、通称ハコスカ。日産の名車です。 Q.いくらぐらい? (日産「GT―R」のオーナー)「(中古相場が)3000から4000万ですかね」 「日産とホンダが合併しても難しいんじゃないかな。いいところを重ね合わせればね、いいんだろうけども。」 こちらは日産フェアレディーZS30。 Q.中古でいくら? (日産「フェアレディーZ」のオーナー)「値段はちょっと…」 Q.ホンダとの統合ですがどうですか? 「やむを得ないんじゃないかなと私は思いますけどね。この先も経営していってもらって、こういう古い車を乗っている人たちも大事にしてもらいたいなと思う。」 Q.昨今の電気自動車への移行については? (日本旧軽車会 吉崎勝会長)「電気はもう絶対ダメですよ。絶対乗らないですよ」 Q.何が違いますか? 「やっぱりエンジン音、エンジン音が全然違うから」
■台湾「鴻海」EV開発 日産技術力狙いか
経営統合に向けた協議入りについて、明日にも発表する見通しのホンダと日産。巨額の投資が必要な「EV=電気自動車」の開発などで競争力を高めるのが狙いとみられています。 その決断の裏には、台湾の電子機器メーカー「鴻海(ホンハイ)」の動きがあったと、日産を25年以上取材する経済ジャーナリストの井上久男さんは言います。 (経済ジャーナリスト 井上久男氏)「(鴻海は)『日産の買収を狙っているけれども理解してもらえるか』という打診を(関係者に)今年の秋ぐらいから始めたんですね。その状況を日産が察知しまして、(ホンダとの)経営統合交渉に向けてその動きを速めた」
「iPhone」の受託生産で成長した鴻海は2019年、次の柱としてEV事業への参入を表明。鴻海の子会社のシャープは9月、開発中のEVを初公開しています。 (島田龍二記者)「こちら普通に外が見える窓ですけれども、いま液晶シャッターが閉じました。完全なプライベート空間が完成しました」 実は、鴻海でEV事業を担うのは、日産の元ナンバー3の関潤氏。エンジンの生産技術部門などを中心に歩んだ生粋の技術者ながら、中国事業の責任者を務めるなど経営にも強く、「自動車産業のプロ経営者」と称されています。
(経済ジャーナリスト 井上久男氏)「自動車は幅広い技術が融合してできている製品ですから、鴻海にとってみれば足りない技術がまだあるとみているわけですね。そうした時に自社の新たな成長戦略であるEV事業を強化しようと思えば、どこか自動車メーカーを買収した方が、それが早く軌道に乗るのではないかと。」 台湾の中央通信によると、鴻海は日産の買収を諦めておらず、フランスに派遣された関氏が日産の筆頭株主であるルノーと日産株の売却について協議しているといいます。 (経済ジャーナリスト 井上久男氏)「いま自動車産業が100年に1度と言われるほど産業構造が大きく変わろうとしているわけですね。いま一時的にEVは後退していますけれども、将来的にはEV比率が増えてくると、一言で言うなら車のスマートフォン化が加速しているわけですね」
■中国 家電メーカーもEV開発「走るスマホ」
“EVシフト”が進む中国。今年7月、EVなどの「新エネルギー車」の販売台数のシェアが50%を超え、初めてガソリン車を抜いています。 こちらはスマホなどを作っている中国の家電メーカー小米(シャオミ)が開発した電気自動車。 (尾崎文康記者)「こちらにカードをかざしますとこういう形でサイドミラーが開きまして、運転席に乗り込むことが出来ます。“窓を開けて”。この窓の開け閉めのように車内では声を出すだけで様々な機器を動かすことができます」 今年3月に発売され、価格は450万円以上しますが、すでに約10万台売れています。 (西橋拓輝記者)「街中にはこうした中国車の広告も多く掲げられています」 中国の電気自動車は「日本車の牙城」と言われたタイでも… 「日本円で約500万円するこちらの車種が大人気で、納車の時期が見通しづらくなってきているということです」 タイの自動車市場に占める日本車の割合は数年前まで9割近くありましたが、去年は7割台まで低下しています。 こちらの男性は数カ月前まで日本車に乗っていましたが中国メーカーの電気自動車に買い替えたといいます。 (EV利用者)「内燃車(ガソリン車など)は高いから、電気自動車はコストも抑えられていい。私はEV車が好き。内燃車には二度と戻らない」 (経済ジャーナリスト 井上久男氏)「スマホメーカーが車を作っているわけですから、そういう相手と競争していかないといけない。違うルール、違う価値観の人たちと戦わないといけないということが、既存の自動車メーカー、ホンダや日産の危機感を高めているんだと思います」
12月22日『有働Times』より