業務の負担となっている電話対応はAIにお任せ。東京・大田区役所でAIを使った電話対応の実証実験が行われました。
■電話対応が業務上の負担に
大切な情報伝達の手段として、家庭や職場に欠かせない存在の「電話」。しかし最近は、そんな電話に対する意識も変わってきたようです。
全国の会社員など1000人を対象に行った調査では、職場での「電話対応に苦手意識がある」と答えた人は64%に達しました。3年前の調査から7ポイント増加しています。
さらに固定電話が鳴ると「不快に感じる」人は56%で、こちらも前回から1割以上増加。その理由として最も多かったのが「手を止めて対応する必要があり、集中力が途切れ業務効率が悪い」(50.3%)というものです。
電話対応はいまや、仕事の時間を取られるうえに、緊張も強いられる、業務上の負担に…。そんななか、この問題をAI(人工知能)で解決しようという動きが今、広がっているんです。
■AI電話「ミライAI」の実証実験
東京・大田区役所。区民からの問い合わせなど、毎日たくさんの電話がかかってきます。
大田区 イノベーション事業担当課長 中谷建文さん 「直接区民からの問い合わせがある課はかなり問い合わせの量も多く、職員が時間を取られて持っている業務が進まない。そういった課題は多くの課で抱えている」
大田区のある課では、1週間の電話対応の件数はおよそ290件。1日あたり4.5時間を電話の対応に充てているといいます。
そんな職員の負担軽減を目指し、大田区が今年1月に行ったのが、AI電話「ミライAI」を使った実証実験です。
ミライAI 「大田区防災危機管理課です。ただいまAI自動対応しています。どちらに関するお問い合わせでしょうか。家具転倒防止器具について、感震ブレーカーについて」
区民などからかかってきた電話は、まず「ミライAI」が応答。用件を聞き取って回答をしたり、担当部署への取り次ぎを行います。
さらに会話内容のテキスト化や要約も自動で行うことで、職員はその後の対応を効率よく行うことができます。
中谷建文さん 「電話の内容を記録して次の対応につなげていくのも必要なので、電話応対の記録が瞬時に書き起こされたり、確認することができるのは区の職員にとってはありがたい」
実際に実証実験で使われたミライAIのデモ機に電話をかけてみました。
ミライAI 「家具転倒防止器具についてですね。ご要件をお伺いいたします」 質問 「母の家に取り付けをしたいのですが」 ミライAI 「家具転倒防止器具を母の家に取り付けたい場合、まずは申請が必要です。申請は郵送、電子、窓口のいずれかで行えます」 質問 「どんなものが取り付けられますか?」 ミライAI 「家具転倒防止器具として、L型金具や家具転倒防止用安定板が取り付けられます」
職員に代わって、丁寧な回答を行う「ミライAI」。2021年、コロナ禍でリモートワークが増えたことをきっかけに開発が開始され、現在650社以上の企業に導入されています。
ソフツー代表取締役 鍾勝雄さん 「一番多いのはIT企業。続いて建設や不動産、医療とか士業、製造業とか、あと農業もですね最近は。農業の方たちもご利用いただいたり、幅広い業種でご利用いただいています」
■自治体での導入には課題も
しかし、自治体への展開は始まったばかり。大田区の実証実験では課題も多かったといいます。
鍾勝雄さん 「自治体の場合は基本的に決まった質問に回答するような設計で、網羅できていない質問もたくさんあった。専門用語も結構あって、当時のAIが専門用語をうまく認識できないなど、色々な課題が見えてきた」
高齢者からの問い合わせも多い自治体への電話は、言語化ができていない相談のようなものも多く、AIが対応できない場面もみられたということです。
実証実験でのAIの対応成功率は当初80%を目標としていましたが、結果は37%にとどまりました。
中谷建文さん 「実証の期間が1カ月という短い期間ということもあり、職員の負担軽減につながったというところには至ってないというのが現状だが、行政現場でこういったところに対してはAIでの応対が現時点で難しいとか、課題の洗い出しはうまく進んだと思います」
■AIが対応することに街の人は
街の人たちは自治体の電話対応をAIが行うことについて、どのように感じているのでしょうか。
70代 「いいんじゃないですか。かえって早いような気がして。待たされるのは嫌だから」
60代 「人と直接しゃべった方がいいですね。顔が見えない分、直接声で対応したほうが安心感はありますよね。やっぱりあったかみというか」
70代 「機械の回答より人の回答のほうが信頼を受けるという感じはする」
まだまだAIに対する不安や疑念の声も聞かれるなか、香川県高松市や岡山県倉敷市が導入を開始するなど、自治体でのAI電話の活用は少しづつ広がっています。
そして大田区もさらなる課題の解決に向け、2回目の実証実験を9月中にもスタートさせます。
中谷建文さん 「どこまでAIが対応してどこから職員が対応していくか。今後の課題だと捉えています。AIだけに任せるわけではなく、人間とAIがうまいバランスで対応しながら、区民の方も満足できるような電話応対だったり、行政サービスを提供できればいいと思います」