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【特集】再犯防止へ 元受刑者との交流を続けてきた大学生 選んだ進路は「保護観察官」 香川

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 再犯防止に向けて元受刑者との交流を続けている香川大学の学生団体が10月、内閣総理大臣から表彰されました。
 団体で代表と副代表を務める学生は、卒業後も元受刑者の支援に関わっていこうと進路を決めました。活動を通して2人が学んだこととは――。

 10月開かれた香川大学の大学祭。こちらの教室では、全国の刑務所で作られた「刑務所作業製品」や受刑者を取り巻く状況を説明したパネルなどを展示していました。

(訪れた人は―)
「売り上げが、作った人に入るのではなくて被害を受けられた方に少し助けになると初めて知ったので、きょうは勉強になりました」

 展示を企画したのは再犯防止のために活動する香川大学の学生団体「さぬき再犯防止プロジェクト」通称・PROS(プロス)です。

 展示したものの中にはPROSの学生がデザインし高松刑務所の受刑者が作った「エコバック」や、木の「しおり」の試作品もあります。

(訪れた人は―)
「なかなか受刑者の人と接点がないですよね。身近なところで言えばその方たちが作っているものを通して、その方の生活とか背景とかを知るっていうのはすごく大切なことかな」

(PROS代表/西田侑莉さん)
「学生がデザインして刑務所で作った新製品というので興味を持ってもらったことをきっかけに、再犯防止とか出所者のことだったりちょっとでも身近なこと自分事のように感じてもらえたら」

 この展示会には大学祭の2日間で300人以上が訪れました。

 法務省が公表している「犯罪白書」によりますと刑法犯全体に占める再犯者の割合は増加傾向で、2020年は過去最高の49.1%、2021年も48.6%と高い状態でした。

 国は、再犯の背景には、出所しても住む場所や仕事、身寄りがなく地域社会から孤立していることなどがあり、再犯を防ぐためには「居場所と出番が必要」だとしています。

 PROSは、法学部の学生と教授を中心に2020年の8月に活動を始め、現在は20人が所属しています。

 メンバーは研修を受けた上で高齢、または障害がある元受刑者と交流する「茶話会」などを行っています。

 これらの活動で元受刑者の「居場所と出番」を作るとともにシンポジウムなどを開いて、多様な人を受け入れる社会をつくる必要性を広く呼び掛けています。

 10月12日にはPROSの活動が「再犯防止への理解促進に大きく貢献した」として、内閣総理大臣から表彰されました。

 9月には依存症回復支援施設で働く渡邊洋次郎さんを招いて座談会を行いました。

(渡邊洋次郎さん)
「自分自身はアルコールとか薬物の依存があって……、自分の持ってた『しんどさ』の結果が病院の時もあれば刑務所の時もあったのかな」

 渡邊さんはアルコールや薬物の依存症で病院への入退院を繰り返し、その後、窃盗罪などで服役した過去があります。

(渡邊洋次郎さん)
「社会において『やり直し』ってなった時に、依存症とか精神疾患というと多少病気というところで見てくれるけど、犯罪とか刑務所入ってたとかいうと違った見え方になって……。本人の持ってる問題と社会でどう生きていくかというときの問題が違うのかな」

(PROS副代表/山田羽里さん)
「自分がたまたま犯罪をしなくて済んだ環境にいただけで、もし自分がその人の立場だったらどうなっていたかわからないなという部分で、身近にではないですけど、あり得なくはないと感じて」

(PROS代表/西田侑莉さん)
「直接関わってお話聞く中でただお話を聞くだけじゃなくて、自分が将来、今その人が困っているから必要な支援ができるようにしようって」

 PROSの活動を通して元受刑者らと交流を重ねた代表の西田侑莉さんと副代表の山田羽里さんは、出所者の社会復帰を支える保護観察官を目指すことを決意。2022年秋から勉強を重ね、国の試験を受けました。

「中国地方での採用内定が決まった通知になります」

 2人は見事試験に合格。2024年春から3年間は庶務や会計の事務作業を通して経験を積み、その後、保護観察官に任命されます。

(PROS副代表/山田羽里さん)
「今よりももっと、多くの方と密に関わることができると思うので、その機会がこれからできてうれしい」

(PROS代表/西田侑莉さん)
「目の前にいる対象者の方が相談しやすいとか話しやすい、頼りやすいと思ってもらえるような支援者になりたい」

 1年の冬からPROSで活動してきた2人。この3年間で学んだことはー―。

(PROS副代表/山田羽里さん)
「受刑経験があるとか障害があるないとか、年齢とかにかかわらず、他の人の価値観とかを受容する、それに寄り添う姿勢が大切なんだなと思いました」

(PROS代表/西田侑莉さん)
「『自分とは違う人だ』という線引きをしないことが、再犯防止に限らず、日ごろから自分が意識できることだなというのを一番学びました」

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