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【特集】女子少年院の今 課題と支援は? 多くの少女に虐待を受けた経験も

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 四国唯一の女子少年院「丸亀少女の家」には現在8人が入所しています。女子少年院に入っている少女の多くが虐待を受けた経験があるという調査がある中、考えや気持ちを表現することに課題がある少女もいます。少年院での教育や再犯を防ごうという大学生の活動をお伝えします。

四国唯一の女子少年院 少女たちが抱える“課題”

(法務教官)
「この事例をどうやって解決するか皆で考えましょう」

 授業が行われているのは、丸亀市にある四国で唯一の女子少年院「丸亀少女の家」。全国に9つある女子少年院の一つで、現在、16歳から20歳までの8人が入所しています。

 施設に入る理由は大麻や覚醒剤といった薬物に関連したものが多く、傷害や窃盗などの非行事案もあります。

 2022年6月、香川大学の学生や教員らが施設の見学に訪れました。学生たちは「さぬき再犯防止プロジェクト」として、出所者の再犯を防ごうと地域での居場所づくりに取り組んでいます。事前に学生たちから集めた質問には、入所している少女の「虐待経験」に関するものもありました。

 2021年の犯罪白書では女子少年院に入っている少女の半数以上が身体的虐待を受けた経験があるとしています。心理的・性的なども合わせると7割近くが何らかの虐待を受けた経験がありました。対して、男子で虐待を受けた経験があるのは4割ほどでした。

(丸亀少女の家長/溝口麻美さん)
「被虐待経験はトラウマになりやすいと言われておりまして、自己肯定感が乏しくなったり、感情を調節する力を失ったり、安定的な人間関係を結べなくなるなど、社会生活を送る上での支障が生じると言われております。このような状態は少年院在院者、女子の在院者に多く見受けられる症状です」

 この施設でも「虐待を受けた経験」がある少女は少なくありません。

(さぬき再犯防止プロジェクト代表/西田侑莉さん)
「『私を忘れないで』っていう切り絵があって、それはすごく自分の気持ちを表現している感じがしてすごく印象的だった」

 学生の目に止まったのは寮の入り口に飾っていた「ワスレナグサ」とその花言葉の切り絵です。

(丸亀少女の家長/溝口麻美さん)
「さまざまな痛み、心も体もですけれども、困りごとをもしも適切な誰かに相談することができていたら、もしかしたら非行にはつながっていなかったかもしれないと推察されるケースも少なからずある」

成人年齢引き下げ 「変わる」少年院での教育

 2022年4月、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、18歳・19歳は「特定少年」として引き続き「少年法」が適用されます。それでも、「大人」としての自覚や責任、知識を身に付けるために、少年院では18歳以上への指導内容が変わりました。

 職業指導の一環で行っている「編み物」もその一つ。これまでは決められた型を編むだけでしたが、これからは「実際に売ること」を目指して、材料選びやデザインなどから考えます。

(法務教官)
「きょうは民事訴訟の話をします」

 また、新たに「契約」や「選挙」など、大人として知っておくべきことに関する指導も始まりました。

 この日は、架空の民事裁判を基に解決策を考えました。

 ナオミが、友人・ユウコの子どもを預かり自分の子どもと一緒に遊ばせていたところ、ユウコの子どもが大けがをしました。ナオミが謝罪しなかったためユウコが損害賠償を求めています。

 少女たちが考えた解決策は――。

(少女は―)
「ナオミがユウコにわざとでないことを伝える。ナオミがユウコに治療費の一部を払う」
「ユウコの話にやむを得ず裁判を起こしたとか、ナオミの話に法的責任を負うのは納得できないとかあったから、裁判やめて二人で話し合う」

 この日の夜にある少女が書いた日記には授業の感想がありました。「授業の時は和解するように勧めたし、仲良くなってほしいと思ったけど、裁判を起こしたり被害に遭ったりした時点で、元の関係には戻れないと考えが変わりました」。

(法務教官)
「自分はどうしたいのかとかどう思っているのかとか、そこら辺を考えられなかったり、そもそも考えるような環境になかったりした子も多いので、自分が今思っていることとか考えていることとか、これがしたいんだっていうこととかをちゃんと自分でわかって、できれば人に伝えたり話したりできるようになったらいいなっていうのは一番思っています」

女子少年院の少女たちに… 出院後の社会復帰に向けて

 女子少年院に収容された4人の少女を追ったドキュメンタリー映画「記憶」。7月18日、香川大学でその上映会がありました。

 開いたのは香川大学の学生らでつくる「さぬき再犯防止プロジェクト」です。映画では、少年院から出た後に民間の支援団体の下で働き始めるも支援者の男性に心を開けず衝突し、追い込まれていく少女の姿が描かれていました。

(学生は―)
「助けてあげたい大人と助けてもらいたいけど助けられ方のわからない少女のすれ違い」
「本人が変わりたいなと思って少年院を出ても周りの環境が変わっていなかったら意味がないように思った」

 上映会のあとには、学生が中村すえこ監督と「社会復帰」について話し合いました。中村監督自身も少年院にいた経験があり、今は少年院を出た人たちを支援しています。

(「記憶」/中村すえこ 監督)
「私は中学校の時に学校の先生が『またあしたも来いよ』って言ってくれるのがすごくうれしかった。それって大きな事じゃなくてきょうから実践できることじゃないですか。そのできることを社会の人が少しづつ考えてくれたら実行してくれたら社会は変わるんじゃないかって」

(さぬき再犯防止プロジェクト代表/西田侑莉さん)
「人との関わりだったり、人とつながる温かさっていうのを少年少女自身が感じることが大事なんだなって思いました」

(丸亀少女の家長/溝口麻美さん)
「当事者自身も孤立していかない努力も必要ですし、当事者を孤立させない周りの存在も必要。そういうことによって新たな被害者を生み出さない社会、新たな当事者を生み出さない社会。それが再犯防止につながっていくことになるのかな」

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