アメリカの調査会社が発表した「世界の10大リスク」には、今年も「ならず者国家のロシア」が入りました。そのロシアではウクライナに対する特別軍事作戦のしわ寄せが広がっています。
■ロシア 疲弊する地方都市
捕虜となった2人の北朝鮮兵。ロシア西部のクルスク州で戦闘に参加していました。北朝鮮の兵士が捕虜となり、生存が公表されるのは初めてで、うち1人は2005年生まれで「戦闘ではなく訓練に行くと聞いていた」と主張しているといいます。
兵士不足が深刻化しているとみられるロシアですが、ウクライナへの侵攻は続けられています。ロシアの人々は戦争を本当に望んでいるのでしょうか。モスクワから東へおよそ700キロ離れた地方都市を取材しました。
ロシア各地で不足する兵士の墓地。戦死者の急増を物語っています。一方で、兵士募集の看板があちらこちらで見られます。ロシア全土にあふれるこうした看板は、戦争への強い同調圧力も生み出しています。
ロシアで最も貧しい行政区の一つ、マリ・エル共和国。厳しい財政状況にもかかわらず、「特別軍事作戦」を推進するプロパガンダに国内で最高額となる7450万ルーブル、日本円にしておよそ1億1700万円を投じました。
巨額の資金をつぎ込んで、新たな戦争博物館を建設しました。ロシアを守るための戦いなんだと説明しています。最新のデジタル技術を駆使して語られるのは、ロシアはウクライナに「侵攻」したのではなく西側の脅威からロシア人を「守っている」という主張。
亡くなった兵士は、国を守るために命を捧げた英雄と位置付けられています。こうした博物館の建設はロシア全土で進んでいます。
国としての予算編成も大きく変化しました。国防費は前の年から大きく増え、予算の3割以上を占める一方、社会保障費は18%削減されました。その代償を負うのは地方です。
■特別軍事作戦の“しわ寄せ”広がる
広大なボルガ河沿いにたたずむ世俗から切り離されたかのような村も、戦争と無関係ではいられません。
住人 「そこの家では息子さんが戦地に送られました。あの家の息子さんは目を負傷し、治療した後に再び戦地に送られました。その下の家にも、もう1人います」
そんな村に去年7月、大きな問題が起こります。
住人 「水道が止まりました。私たちは雨水をくみに行かなければなりませんでした。そうやってどうにか生き延びてきたんですよ」
給水施設が壊れ、村全体で水道が止まってしまったのです。村の男性はほとんどが兵士に送られ、壊れたインフラは放置されたまま。声を出せない弱い人々が犠牲になっています。
住人 「この村にはもう男性はいません。誰が水を運ぶのでしょうか?」
ウクライナ侵攻を開始してからまもなく3年。今年はどうなるのでしょうか。
ユーラシア・グループ会長 クリフ・カプチャン氏 「前線での戦いは激しさを増していくだろう。しかし、ロシアは自国の兵士の不足や経済問題に直面している。プーチン大統領は停戦をトランプへの“投資”にすると思います」
ただし、ウクライナと和平合意することはなく、双方で暗殺行為などがエスカレート。ロシアは今年も「ならず者国家」として世界の安定を大きく揺るがすとしています。
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