芸術の秋。岡山県高梁市の美術館で江戸庶民の旅への憧れをテーマにした美術展が開かれています。コロナ禍でしばらく旅行に行けていない方も多いと思いますが、作品を通して旅の楽しさと江戸の粋を感じてください。
高梁市の成羽美術館では、江戸時代の浮世絵師・歌川広重が制作した「東海道五拾三次」の展示会が開かれています。
(歌川広重「東海道五拾三次」府中宿の説明)
宿場町の旅籠の客引きが旅人を呼び込んでいる府中宿を描いた作品は、女たちの朗らかな笑い声が響いてきそうな旅のさりげないワンシーンです。
展示されている丸清版は刷られた点数が少ないため「幻」とも言われています。空前の旅ブームに沸いた江戸時代、広重は江戸・日本橋から京都・三条大橋に至る東海道の旅を生き生きと、そして、克明に描きました。
道中で、何度も描かれる富士の山。
存在感あふれる絵の主役かと思えば、船旅をさりげなく彩る脇役だったりと、変幻自在な描き分けがなされています。
(記者リポート)
「これは、覗き見しているような、不思議なおかしさがありますね」
宿屋に着いた旅人がくつろいでいる1コマ。体をほぐしてもらい、旅の疲れを癒しています。
四日市宿を描いた華やかな1枚。なんと、犬も旅をしました! まんじゅうをもらい喜ぶ様子に思わず頬がゆるみます。
大きな川を渡るのは、客を運ぶ男たちにとっても大仕事。苦労も多かった東海道中、そんな中でも作品からは江戸時代の人の旅への強い憧れと、楽しげな様子が伝わってきます。
江戸時代の人たちの生き生きとした様子や旅の風情が描かれていて、旅に出かけたような気持ちになれる展示会「江戸庶民の美 大津絵と浮世絵版画」は、高梁市成羽美術館で12月19日まで開かれています。