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【解説】円安で暮らしへの影響は?青果高騰で「国産」需要高まる…酪農業はコスト高騰で打撃 香川

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 今回は、「円安」による暮らしへの影響についてお伝えします。
 4月29日には一時、34年ぶりに1ドル160円台をつけるなど記録的な円安水準が続いています。この影響で食品スーパーでは輸入ものの野菜や果物の価格が高騰。「国産」のものにまで影響が出ています。

(松木梨菜リポート)
「こちらのスーパーでは、海外から輸入したアボカドが1個200円以上で販売されています。例年の1.5倍ほどの価格だということです」

 香川県高松市の食品スーパー「新鮮市場きむら」では、特に野菜や果物などの「青果」に円安の影響が出ています。

(新鮮市場きむら 青果部バイヤー/岡田卓也さん)
「輸入もの、野菜も果物も。お客さんに安いねって思われづらい価格帯になってしまってるので」

 輸入ものの野菜や果物の価格は、例年の約1.5倍になるものもあるなど高騰しています。

 そのため、輸入ものから「国産」に切り替える動きも。

(松木梨菜リポート)
「パプリカは韓国産を販売していましたが、静岡産に切り替えています」

 韓国産のパプリカは例年1個120円ほどで販売されていましたが、この円安の影響で200円以上に。国産と同じぐらいの相場になったことから「国産」に切り替えました。

 こうした動きにより、「国産」の価格の相場も1割ほど上がっているといいます。

(買い物客は―)
「果物もすごく高いように思います。すべてが高いんですけど、高いけど買わないわけにもいかないし。困ります」

 今後、「国産」ものの価格の高騰も懸念されています。

(新鮮市場きむら 青果部バイヤー/岡田卓也さん)
「需要が高まるのはいいと思うんですけど、手に入りづらくなるといいますか。それの影響で、高値で取引される状態がずっと続くっていうのはあると思います」

 こうした輸入ものから国産へのシフトを、生産農家はどう捉えているのでしょうか? 

 三豊市仁尾町でかんきつ類などを生産している「まるく農園」では、3haの敷地でレモンを育てています。6月中旬まで出荷が続きますが、2024年は例年とは違う動きになっています。

(まるく農園/組橋聖司 代表)
「国内のレモンの生産量が1万t。日本に入ってくる(輸入)レモン量は6万tあったんですけど、それが少なくなってきてるので輸入ものを扱う業者さんから問い合わせがあったり。大手飲料メーカーさんからも問い合わせがあります」

 円安の影響で、これまで輸入レモンを使っていた業者から仕入れたいという依頼が増えているんです。

(まるく農園/組橋聖司 代表)
「ほかの国の方が高く買ってくれる中で、日本が買い負けしてる状況なのかと思います」

 組橋さんによると、これまで輸入ものは国産の半額ほどの価格で取引されていましたが、円安などの影響で輸入量が激減したため、単価が国産の1.1倍ほどになることも。

 国産が輸入ものより「安価」になるケースが増え、国産の需要が高まっているというわけです。

(松木梨菜リポート)
「国産レモンの需要が高まっていることから、今後単価自体も上がるのではないかとみられています」

 国産の農家にとってはチャンスとも言えますが、組橋さんは食料需給の観点から「危機感」があると言います。

(まるく農園/組橋聖司 代表)
「これだけ輸入で食料が入ってきたものがなくなりつつあるときに、国内基盤の農業自体が高齢化でもっと減っていく。想像すると大変なことになるんじゃないかと危機感はあります」

 また、酪農家にとっては餌代など生産コストの高騰にこの円安が追い打ちをかけています。

 高松市香南町由佐の赤松牧場です。

 4つの牛舎で500頭あまりの牛を飼っていて、1日あたり約9000Lを搾乳して四国の乳業メーカーに出荷しています。

 50年以上の歴史があるという赤松牧場ですが、いま、厳しい経営状況に直面しています。

(赤松牧場/赤松省一 取締役会長)
「一番大事な利益がほとんどないという状況でいま動いています。もう大変ですね」

 その理由が、トウモロコシや大豆などを主な原料とする配合飼料、餌代の高騰です。

 農林水産省によると、乳牛や肉牛、ブロイラーといった家畜の配合飼料の平均価格は、2020年9月は1tあたり6万5600円ほどでしたが、中国での需要増大やロシアのウクライナ侵攻の影響で2022年10月には約1.5倍の約10万2000円になり、その後も高止まりしています。

 この状況に追い打ちをかけているのが今回の「円安」です。

(赤松牧場/赤松省一 取締役会長)
「我々の生乳生産の中で、飼料・エサが円安によって大きく値上がりをして大変な状況です」

 赤松牧場では、1カ月で140から150tほどの餌を牛に与えています。トウモロコシや大豆などの配合飼料に加え、牧草も大半がアメリカやオーストラリアからの輸入に頼っているのです。

(赤松牧場/赤松省一 取締役会長)
「1kgの乳価に対して餌の割合がいま80%くらい。50%を切るくらいじゃないと経営が回らない」

 一方で、配合飼料をより安いものに変えるわけにもいかないそうです。

(赤松牧場/赤松省一 取締役会長)
「あまり大きく変えると牛への影響が大きい。結果として生産されるミルクのレベルがどんどん落ちていく。牛の健康にも良くないし。だからなるべく安定した良質な餌を牛に食べさせる」

 また、消費者の牛乳離れを防ぐため、飼料の高騰分と同じ程度、牛乳の価格を値上げすることは難しいといいます。

(赤松牧場/赤松省一 取締役会長)
「円安がどこまで進行していくか我々では読み切れないところがあります。だから、生産原価に応じて乳価を上げていく普通の流れを作らないと酪農産業がもたなくなる」

 原料価格の値上げを価格に転嫁できないのは酪農業だけではありません。

 民間信用調査会社帝国データバンク高松支店が2024年2月、四国に本社を置く企業を対象に行ったアンケート調査で、自社の主な商品、サービスでコストの上昇分を「多少なりとも価格に転嫁できている」と回答した企業は73.6%、「全く転嫁できない」が12.4%でした。

 どの程度転嫁できているかという「価格転嫁率」は39.6%、つまり、コストが100円上昇しても39.6円しか価格に反映できていない状態です。

 帝国データバンクによると、この背景には原材料費だけではなく、表には見えにくい人件費の高騰や取引先企業との関係もあり、仮に円安が落ち着いても企業の経営が改善するには時間がかかりそうです。

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