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【解説】今年は逆打ちで多くのお遍路さんが…外国人も増える中、浮き彫りになる課題とは?

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 ゴールデンウィークは3日から後半戦。この連休中、例年以上に多くの人が訪れているのが、四国八十八ヶ所霊場です。実は2024年は4年に一度の「特別な年」。コロナ禍を経て外国人のお遍路さんも増える中、課題も見えてきました。

 ゴールデンウィーク前半の4月29日、四国霊場75番札所、善通寺には多くの人がお参りに訪れていました。

 外国人のお遍路さんの姿も……。

(スイスから)
「スイスでもよく歩くし、山をハイキングするのも好きだし、何より日本が好きだから」

(オーストリアから)
「全てのお寺で特別に本(納経帳)に文字を書いてもらえたのでうれしかった」

 そんな中、参拝客の多くが口にする「キーワード」が……。

(山口から)
「4回目ぐらいと思うんですけど。子どもは今4歳になります。(Q.お子さんは初めて?)去年から一緒に。今回は逆打ちで」

(香川県内から)
「今年で6回目ですね。逆打ちは今回で2回目になります」

 通常、四国遍路は徳島県にある1番札所・霊山寺から88番、さぬき市の大窪寺までの約1400kmを巡りますが、4年に一度、うるう年に88番から逆に回る「逆打ち」をすると、ご利益が3倍になると言われています。

 例年より多くのお遍路さんが見込まれる中、「ある課題」が浮き彫りになってきています。

(山口から)
「ちょっと取りづらいなと思います」

(栃木から)
「泊まろうと思って予約したら取れない」

 多くのお遍路さんが利用する「遍路宿」の予約が取れないというものです。

 善通寺市にある「遍路民宿 鶴吉」では、このゴールデンウィーク中は満室だということです。

(遍路民宿 鶴吉/大浦健 オーナー)
「去年ぐらいから増えましたね。外国の人が半分で日本人が半分。多いんですよ外国の人」

 お遍路さんは……。

(神奈川から)
「何とか取ることができました。ゴールデンウィーク中は考え方によってはそれも修行なのかもしれないです」

(和歌山から)
「10年前だったら(宿が)取れていたところが、閉館したところが多くて」

 なぜこのような事態になっているのでしょうか。

 国からの委託事業で、歩き遍路の外国人の受け入れ態勢について調査している「百十四経済研究所」によりますと、2020年に四国に687軒あった遍路宿は2023年までに70軒減りました。

 宿の廃業の大きな引き金になったのが、新型コロナ禍による参拝客の激減でした。

(遍路民宿 鶴吉/大浦健 オーナー)
「山奥の方は年配の方がやられてて、後継ぎがいないから閉められたとか聞いてまして。20軒ぐらい閉まったと言ってますね」

 そしてコロナ禍の影響を受けたのは「札所」も同じです。

(四国八十八ヶ所霊場会 讃岐部会/髙吉清文 会長)
「収入が激減して、これがあと数年続けば立ち行かなくなっていたところでしたから」

 「四国八十八ヶ所霊場会」はお遍路さんが札所で納経帳などに御朱印をもらう納経料を、4月から全ての札所で300円から500円に改定しました。

 納経料の値上げは30年ぶりです。

 また、納経所の対応時間も午前7時から午後5時までだったものを、4月からは午前8時から午後5時までと1時間短縮しました。

 昨今の物価や人件費の高騰も関係しています。

(四国八十八ヶ所霊場会 讃岐部会/髙吉清文 会長)
「八十八ヶ所霊場はお参りが大部分ですから、お参りがなくなってくると壊滅的な打撃がありましたね。日本だけでなく世界からお参りにきていただきたいと思いますね」

 四国八十八ヶ所霊場会は参拝客の具体的な数字を公表していませんが、2020年から2022年まではコロナ禍前の3割から4割ほどに落ち込んだということです。これが2023年は9割ほどまで回復。2024年の1月から3月はコロナ禍前の逆打ちの年とほぼ同じ水準の参拝客が訪れています。

 そして、インバウンドの回復に伴い増えているのが外国人のお遍路さんです。

 百十四経済研究所が四国霊場11番札所、徳島県の藤井寺近くで行った定点調査によると、2023年歩き遍路をした外国人は1500人を超え、過去5年で最も多くなりました。

 四国遍路の世界遺産登録を目指す動きがある中、求められるものとは?

 2024年4月から初めて四国遍路をしているスペイン人の男性は、こんな要望を口にします。

(スペイン人のお遍路さん)
「勤行体験であるとかお寺の中でできる活動を知ることができたらありがたい。今回の旅で私は2度しかそういった勤行体験ができなかったので、そういう情報を知れるといいお遍路の旅になると思う」

 四国4県や経済団体などは、2010年に「四国遍路世界遺産登録推進協議会」を立ち上げ、資産の保護や普及啓発、そして受け入れ態勢の整備に向けた取り組みを行っています。

 2023年には英語版のパンフレットを作成。観光案内所や一部の札所などで無料で配布しています。

 一方……。

(松木梨菜リポート)
「お守りなどが販売されている場所なんですが、表記を見てみると全て日本語で書かれています」

(四国八十八ヶ所霊場会 讃岐部会/髙吉清文 会長)
「対応しないといけないと思っているんですけど、手がついてない状況ですね」

 ほとんどの札所が外国語に対応できていないということです。

 百十四経済研究所は、世界遺産に登録される前にまずは態勢を強化すべきだと指摘します。

(百十四経済研究所/澁江政興 所長)
「どこに問い合わせていいのか一元的な窓口が整備されていなくて、外国人の遍路の方が増加することを見込んで情報発信したり、宿の手配を一元的にできるようなワンストップの司令塔のような組織を作っていくことが重要になると思います」

 円安などの影響で今後、日本に来る外国人は増えるとみられます。

 宿の手配や荷物の保管など、外国人の目線に立った受け入れ体制を地域全体で考える必要がありそうです。

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