岡山県警は2025年1月から8月までの特殊詐欺の被害額がすでに2024年1年間を上回ったと発表しました。背景にあるのは「ニセ警察詐欺」と呼ばれる犯罪手口の増加です。
(ニセ警察官のビデオ通話)
「事情聴取ですが、双方向の音声と片方の映像による方式で行って、全過程、録音・録画することで法的な効力を持つものとなります」
警視庁が公開している「ニセ警察官」のビデオ通話の内容です。制服などの身なりとともに警察官のような口ぶりで話しかけてきます。このように警察官などを装って現金をだまし取る、いわゆる「ニセ警察詐欺」の被害が全国で急増しています。
(岡山県警察本部 生活安全企画課/小川俊幸 課長補佐)
「パッと見て本物なんだなと思ってしまう人がいてもおかしくない。今年になって急激に増えている」
このニセ警察詐欺、「若者」の被害も多くなっています。
岡山県警によりますと、2022年に岡山県で特殊詐欺の被害にあった人のうち、65歳未満は15.9%でした。一方、2025年1月から8月までの「ニセ警察詐欺」被害は65歳未満が59.7%。中でも20代から30代だけで全体の4割を超えています。
なぜ若者も被害にあうのか? それは犯罪の入り口の変化です。
(岡山県警察本部 生活安全企画課/小川俊幸 課長補佐)
「かつては8割ぐらいが自宅の固定電話にかかってくる電話から始まっていたが、最近は携帯電話に直接電話をかけてきて被害に遭うパターンが増えている」
ニセ警察詐欺の手口において犯人からの最初の接触手段は携帯電話が6割以上を占めます。かかってくる番号は「+(プラス)」から始まる国際電話が7割ほど。
あやしいと思っても、番号の末尾が110番になっていて「警察からの電話」だと思い込んでしまいます。
そして電話に出ると、ニセの警察官などが「あなたの口座が犯罪に使用されている」「逮捕状がでているため出頭して捜査をさせろ」などと要求。そして「出頭できないならビデオ通話で取り調べをする」などとし、LINEなどのビデオ通話に巧みに誘導してきます。
(岡山県警察本部 生活安全企画課/小川俊幸 課長補佐)
「自分の名前や住所が書かれた逮捕状を見せられるので、それを見せられた被害者の方は本当に逮捕されてしまうのではと、より不安になり信用してしまう」
2025年1月から8月までの岡山県の特殊詐欺の被害額は約6億8700万円で、すでに2024年1年間を上回りました。このうちニセ警察詐欺の被害額は約4億円です。
2025年6月には県西部の60代の男性が約5200万円をだまし取られるといった巨額の被害も発生しています。
岡山県警はネットバンキングなどの普及により、携帯電話で通話から送金まで完結できることも、ニセ警察詐欺の被害拡大の要因の1つだとしています。
(岡山県警察本部 生活安全企画課/小川俊幸 課長補佐)
「『時間がない』『きょうだけしか処理できない』『今しかできない』というようなことを言って不安にさせる、焦らせるというのは犯人が(特殊詐欺の)どの手口においても使ってくるもの。捜査の名目で金銭を要求するということは本物の警察であればやることはない」
岡山県警は「+」から始まる国際電話番号に注意すること。もしかかってきた場合には一度通話を切り、相手が名乗った捜査機関の電話番号を自分でしっかりと調べること。そして警察や家族など誰かに必ず相談してほしいとしています。
警察はニセ警察詐欺について個人単位での犯罪ではなく、匿名・流動型犯罪グループいわゆる「トクリュウ」がかかわっている可能性が高いとしています。だまされたお金が新たな犯罪資金になってしまうこともあるということです。
視聴者の皆さんにPark KSBアプリで「あやしい電話がかかってきたことがあるか」聞いてみました。すると「ある」と答えた人は34.1%でした。
「ある」と答えた人にどのような電話だったか聞いてみると……。
・「警視庁の生活安全課」から電話があり、明るく対応したら切られた
名前などの個人情報は既に把握されていた
・弁護士を名乗る者がマイナカードの手続きで金銭の要求をしてきた
などがありました。