自治体や議会がどのような意思決定をしたか、後世に伝えるための大切な資料の一つ「議会の議事録」。しかし、美作市議会では発言内容が20カ所以上分からない議事録が見つかりました。
2023年9月11日に開かれた美作市議会の文教厚生委員会の議事録では22カ所が「聴取不能」と記されています。この日は、建設が進められていた作東公民館の補正予算案についての議論が中心でした。
「聴取不能」とされた22カ所のうち16カ所は萩原誠司市長の発言です。
美作市議会の議会事務局によりますと、委員会での発言は録音機器で記録していて、それをもとに議事録を作成します。
しかし、聞き取れなかった部分は発言者に確認することなく「聴取不能」にしています。後から聞き取りをすることで発言の趣旨が変わる恐れがあるのが理由だということです。
委員会室は録音を前提とした造りになっていない上、機器が古いため質の高い録音をするのが難しいということです。
(美作市議会/倉地重夫 議員)
「だいたい萩原市長の話し方は不明瞭な部分が多い。ずーっとこうやって聞いている、歯切れが悪くもごもごしゃべる」
議会事務局は録音データについて「議事録に委員長のサインをもらったあとに削除した」としています。
これについて、委員長を務める田村秀昭市議にサインをした理由を聞こうと取材を申し込みましたが、応じていません。
萩原市長は、KSBの取材に議事録としては「適切でない」としましたが…
(記者リポート)
「発言のうち16カ所が『聴取不能』とされた萩原市長。議事録の中で私が内容を理解できないと感じた7カ所について質問しました。すると『当時の発言の内容はいずれも覚えていない』と文書で回答しました」
こうした状況に議員からは疑問の声があがっています。
(美作市議会/金谷のり子 議員)
「議事録自体を疑う。改ざんしてるのではないか、わざと隠しているのではないかと」
山本雅彦議長は「議事録に聴取不能が多いのは問題」とコメントしました。
議会事務局は2024年3月の委員会から、萩原市長の席の録音マイクを2本に増やしています。
地方議会に詳しい専門家は議事録の重要性について……。
(東北大学大学院 情報科学研究科/河村和徳 准教授)
「公民館の話になると、次の建て替えの時に絶対資料として必要になる話。この問題っていうのは20年、30年後にあの時どうだったって話が必ず出てくる問題。有権者にとってみると、いわゆる選挙の時に言ったことをきちんとやっているのか、ないしは議会活動をちゃんとやっているのかっていう検証する資料にもなる。それぐらい重要なもの」
河村准教授は、「発言した人の方言が強いときなど聴取不能自体は珍しくない」とした上で「動画で記録に残すことを進めていくべきだ」と話します。
(東北大学大学院 情報科学研究科/河村和徳 准教授)
「委員会の雰囲気であったり、非言語の情報も映像は提供することができる。かつては動画が撮れなかったので文書にして残してきた。それが配信できる時代になったときに公文書の作法があると思うが公文書とセットでそのもとになる動画を残していく取り組みが必要」
岡山の県議会、市町村議会が動画を撮影・保存して公開しているかについてまとめました。
本会議と委員会の両方の動画を公開・保存しているのは岡山県では赤磐市と鏡野町のみ。
7市町村は本会議、委員会ともに動画を残していません。
これらの市町村は動画を公開・保存しない理由については「撮影する設備がない」「議員から話が出ていない」などを挙げています。
そんな中、委員会の動画配信を岡山県で最も早く始めた赤磐市議会は一定の手応えを感じています。
(記者リポート)
「赤磐市議会の委員会室です。こちらでは執行部と委員、それぞれ発言者の顔が分かるように2つのカメラを使って配信しています」
赤磐市議会は、2018年12月から委員会の動画を配信しています。カメラの設置などにかかった費用は、約180万円です。
本会議の動画配信は2011年から行っていて、これらの編集作業やサイトの運営などの経費は年間で約180万円です。
(赤磐市議会/佐藤武 議長)
「インターネットでよくご覧になっているという市民の方の声を直接聞いている。公開の方向へ進むことが有権者市民の方にも求められているのではないか」
赤磐市議会は、配信した動画をDVDとして保存しているということです。