各地で広がるクマの出没。それに伴い増えているのが、クマと車の衝突事故です。3週間で2回も被害に遭った男性が、当時の状況を語ってくれました。(11月15日「サタデーステーション」)
■柿を食べ尽くすクマ 番組カメラが捉える
報告・鈴木闘匠ディレクター(15日 秋田・能代市) 「柿の木にクマがのぼっています。いま柿を食べているのが見えます。クマが柿を食べているのが見えます」
15日午後4時ごろ、秋田県能代市でクマが木の上で手を伸ばし、次から次へと、柿を食べ続けています。
報告・鈴木闘匠ディレクター(15日 秋田・能代市) 「周りには住宅もあります。人は誰も歩いていません。住宅の近くに柿を食べているクマが確認できました」
いまや“日常の光景”となってしまった、人里に出没するクマ。
■柿の木の上にクマ“6時間超”
仙台市でも柿の木にのぼるクマが…。しかし、よく見ると、少し様相が違います。
報告・川村彩音記者(15日 仙台市) 「降りられない状態になっています。時折、引っ張っているようにも見えるが、外れない状況です」
警察によると午前6時半ごろ、仙台市青葉区の住宅近くの柿の木で、体長1メートルほどのクマ1頭がワナにかかっているのが発見されました。胸元には、ツキノワグマの特徴である、「白い三日月」の模様が確認できます。現場は物々しい雰囲気に包まれています。
ワナから逃れようとクマは、木の上へと登っていきます。そこへ駆除業者の2人が近づいていきます。1人が盾を、そしてもう1人が麻酔銃を手にしています。
「いま矢のようなものがクマの体に刺さりました。クマが今、落ちそうになっています」
しばらくすると麻酔が効き、動きが鈍くなるクマ…。駆除業者の男性が盾を手にしながら、その様子を伺いに行きます。そして完全に眠ったことが確認されると、クマの近くに「脚立」のようなものが用意されます。
「猟友会と思しき人がロープを持っています。ロープを持ってクマのもとへと近づいています。クマの片足が縛られた状態ですね」
その後、クマは捕獲され、駆除されました。体長は1メートルほどの成獣のメスで、近くには子グマもいたといいます。
宮城総合支所まちづくり推進課 大須賀淳課長 「ワナはイノシシ用のワナ。いわゆる獣害対策用として設置されたものでございます。クマが拘束された状態で、かつ周りも取り囲んで、ある程度、安全が確保された中で対応できたということで、良い対応だったと認識しております」
けが人は1人も出なかったといいます。
一方、群馬県では人身被害が起きています。午前9時すぎ、群馬県藤岡市の山林で、狩猟中だった60歳の男性がクマに襲われました。男性は頭や顔、そして左腕にけがをしていて、搬送時には意識がなかったといいます。群馬県内でもクマは連日のように目撃されています。
■甚大被害の果樹園 箱ワナでクマ捕獲
クマは、山形県上山市にある果樹園にも出没。14日午後6時12分ごろ、園内にある防犯カメラに1頭のクマが走り抜けているのが映っていました。その45分後の午後7時前、園内に仕掛けた箱ワナにクマがかかったと地元の猟友会に連絡が入り、15日朝、駆除されました。映像のクマと同じ個体かは分かっていません。
長沼果樹園 長沼由紀さん 「クマの檻がばちっと閉まるとメールが届くんです。猟友会の方に捕まりましたというメールが届いて」
箱ワナにかかったクマの体長はおよそ1.2メートル。
長沼果樹園 長沼由紀さん 「(Qこれが仕掛けた箱ワナですか?)そう、ここにかけていただいて、あそこ破って入ってきて、(クマの)足跡が…」
この果樹園では、クマによる被害が深刻で「ラ・フランス」などが大量に食べられたといいます。その量は10月だけでなんと2トン分。果樹園では、先月も防犯カメラに1頭のツキノワグマが映っていました。長沼さんは、15日朝に駆除されたクマは、このときのクマと大きさが似ているといいます。
長沼果樹園 長沼由紀さん 「これかもしれない」
■“3週間に2回”被害も クマ衝突過去最多に…秋田
各地で広がるクマの出没。それに伴い増えているのが、クマと車の衝突事故です。14日、富山県砺波市で走行中の車に、藪から出てきたクマが衝突。
運転中にクマと衝突事故に遭った男性 「会社に向かっているときに、いきなりクマが左から来て。まさか自分がクマとぶつかるなんて…」
山形県尾花沢市でも今年9月、クマとの衝突事故が発生。クマは泥道を走っていたのでしょうか、車のドアにはクマに付着していた泥がつき、タイヤにはクマの毛が絡まっていました。クマが走るスピードは時速40キロから50キロともいわれ、当たり方次第では車が大破してしまう可能性も…。
深刻なのは秋田県です。今年1月から先月までの事故件数は118件。これは去年のおよそ5倍でおととしの101件を上回り、過去最多です。
“3週間に2回クマと衝突” 高橋大樹さん 「まさか3週間で(クマと)2回もぶつかるとは思っていなかったし…」
能代市で鮮魚や総菜などを販売する高橋さん。この3週間に2回もクマと衝突事故に遭いました。1回目は、先月19日の午後6時前、高橋さんのお店から車で2分ほどの場所にある片側1車線の道路。配達用の軽トラックで自宅に帰る途中でした。
“3週間に2回クマと衝突” 高橋大樹さん 「ちょうどこの交差点、横断歩道のところで、向こうからクマが走ってきて、ガツンという感じ。大きさは50~60センチかな。子どもかなという感じ」
衝突したのは“子グマ”。車はかすり傷で済んだといいます。
2回目の衝突事故は今月9日。高橋さんのお店から車で15分ほど離れた県道を走行中に起きました。
“3週間に2回クマと衝突” 高橋大樹さん 「親戚の家に遊びに行こうかなと思って走っているときに、(クマが)田んぼから上がってきたのをみつけて、ハンドル切ったけど間に合わない感じ。バンパーが外れてしまって。1回目よりも大きかった感じで、1メートル弱くらい」
車は現在修理中。修理代は15万円ほどかかりますが、車両保険に加入していたため、全額補償されるそうです。なぜ道路にクマが出没するのでしょうか?
クマの生態に詳しい 東京農業大学 山崎晃司教授 「集落周辺で人慣れしたクマが増えているのは確かなんですよね。最近は道路にクマ注意の標識なんかも出ていますけれども、そういう場所を走るときは速度を落とすとか、すぐ止まれるような状況を作っておいた方がいいかもしれないですね」
■柿の木伐採 希望殺到で予算枯渇も
政府は14日、クマ被害の対策パッケージを発表。人の生活圏への出没防止策として、管理されていない柿の木などの誘引物の管理や、電気柵の設置、緩衝帯の整備などの支援拡充が盛り込まれています。秋田県能代市では、クマの出没が増えたことから柿や栗の木などを伐採したいという依頼が殺到。
能代市二ッ井地域局環境産業課 児玉博幸課長 「家庭を訪問したうえで切るところを測って。(幹の太さが)33センチくらいだと、助成額は6000円」
申請者には、幹の太さに応じて1本あたり3000円から9000円の助成金が出ますが、今年は一時、予算が底をつきかけたといいます。
能代市二ッ井地域局環境産業課 児玉博幸課長 「当初は10万円ほどで見込んでいたんですが、6月1日に60万円ほど(予算を)補正して、10月前の段階で予算的に厳しくなってきたので、新たに50万円。ここまで(予算規模が)大きくなったことはない」
市内で取材を続けていると、柿の木を切ったばかりの住民に遭遇。
14日に柿の木を伐採した住民 「主人の友だちが来て、(柿の木を)切ってくれまして。クマがいるってことで」
この家には60年以上、柿の木がありましたが、14日に急遽伐採。今週、付近で体長50センチほどの子グマを目撃したからだといいます。市に申請せずに柿の木を伐採した場合は助成金の対象外ですが…。
能代市二ッ井地域局環境産業課 児玉博幸課長 「クマが頻発に来ています。申請する暇がないということであれば、木があるという事実、これを切りたいという事実があれば、(助成の対象になるよう)検討していきたい」