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【台湾巡る高市答弁で日中緊迫】中国総領事が暴言投稿“汚い首斬る”非難応酬の行方

政治

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政府は11月13日、「総合経済対策」の原案を与党自民党に提示した。高市政権として初の大型経済対策となるもので、物価高や生活防衛への対応を最優先課題に据え、危機管理投資や防衛・外交分野の強化を含む3本柱で構成する。原案ではまず「生活の安全保障と物価高への対応」を中心に据える。内閣府の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を拡充し、食料品価格の高騰に対応するため「おこめ券」や「プレミアム商品券」など地域発行型の支援策を盛り込むほか、中小企業の賃上げ促進、医療・介護分野の経営支援を実施する。このほか、厳冬期の電気・ガス料金を補助を実施する方針。高市総理は14日、「電気ガス料金については寒さの厳しい冬の間、深掘りした支援を行う。これまでよりも、ちょっと金額を上げて支援を行う方針」との考えを示した。さらに、所得税の基礎控除を物価に連動させて引き上げる制度や、給付付き税額控除の設計を検討する。

第2の柱として、エネルギーや食料の安定供給などの「危機管理投資」、成長分野への戦略的投資を位置づけ、強い経済の実現を目指す。第3の柱には、防衛力と外交力の強化が掲げられた。12日の経済財政諮問会議では、「2024年度補正予算(13.9兆円)を上回る規模が必要」との見解があった。13日開催の自民党会合では、「20兆円規模を目指すべきだ」との声があがった。

物価高対策として一時期検討された「国民一律2万円給付」は見送られる方向。自民と日本維新の会が10月20日に交わした連立政権合意文書には、「国民一律2万円給付は実施しない」と明記された。石破前政権では、給付策の財源を「3兆円台半ば」と試算していた。公明は14日、政府に対し緊急経済提言を提出。幅広い所得層を対象とする現金給付や、電気・ガス料金への緊急支援措置を盛り込み、生活者目線の即効性ある支援を求めた。

11日の衆院予算委員会では、公明の岡本政調会長が「恒久財源として毎年5兆円を自由に使えるとしたら、何に充てたいか」と質問。高市総理は「自民党には怒られるかもしれませんが、恒久財源があれば、例えば食料品の消費税、軽減税率をゼロにすることも」と応えた。一方、自民党内では、麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長ら財政規律を重視するとされている。中でも、宮沢洋一参院議員(前税制調査会長)は財政健全化の旗手として知られ、齋藤健衆院議員(元経済産業大臣)は「財政再建のための消費増税」を公約に掲げる。古川禎久衆院議員も党財政改革検討本部の本部長代理として、財政健全化を目指している。

日中関係が再び緊張の色を帯びている。高市総理が台湾有事を念頭に「中国が武力行使に踏み切れば、存立危機事態になり得る」と発言したことに対し、中国側が一斉に反発。外交当局間の応酬が続いており、両国関係は新たな火種を抱えた。高市総理は11月7日、中国が台湾を完全に支配下に置くために「戦艦を動かし、武力行使を伴うような事態となれば、どう考えても存立危機事態に該当し得る」と述べた。この発言に対し、中国の薛剣駐大阪総領事は8日、SNS上で「勝手に突っ込んでくるなら、その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬るしかない」と投稿。日本政府を強く挑発する表現で波紋が広がった。

さらに、中国外務省の林剣副報道局長は10日の記者会見で、「日本政府による粗暴な内政干渉であり、日本政府のこれまでの政治的な約束とも一致しない」と述べた。木原官房長官は同日、「中国の在外公館の長として極めて不適切」と牽制。13日には、中国外務次官の孫衛東氏が金杉憲治駐中国大使を呼び出し、改めて答弁の撤回を求めた。一方、日本側では、自民党外交部会・外交調査会が11日、中国総領事の投稿を「外交儀礼を著しく逸脱した暴言」として非難。政府に対し、「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」の国外退去を含む毅然とした対応を求めた。14日には、大阪総領事館主催の行事への出席を控えるよう、党関係者に呼びかける意見書もまとめた。外務省は同日、呉江浩駐日中国大使を呼び出し、薛総領事の投稿に強く抗議した。非難応酬の緊迫した事態を受けて、中国外務省は14日、中国国民に対し、日本への渡航を回避するよう注意喚起を発出した。声明では「日本の指導者が公然と台湾問題に関して露骨な挑発発言を行い、日中間の人的交流の雰囲気を著しく悪化させた」と非難。さらに「在日中国国民の身体と生命の安全に重大なリスクをもたらしている」として、渡航を控えるよう警告した。

日本政府が外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ」として国外退去としたのは極めてまれで、これまでに1973年の在日韓国大使館書記官、2006年のコートジボワール外交官、2012年のシリア大使、2022年の札幌ロシア総領事の4件にとどまる。今回の事案は、戦後の日中関係においても緊張局面といえる。10日の衆院予算委で発言撤回について問われた高市総理は、「政府の従来の見解に沿ったもので、撤回・取り消しの考えはない」と述べた。一方で、「反省点としては特定のケースを想定したことについては この場で明言することは慎もうと思う」として、今後の答弁表現に慎重を期す考えを示した。

「存立危機事態」をめぐっては、安倍元総理が退任後の2021年12月、「台湾有事は日本有事、すなわち日米同盟の有事」と発言していた。中国国防省の報道官は14日、「もし日本が武力で台湾海峡情勢に介入すれば、中国軍の鉄壁の守りの前に粉砕され、痛烈な代償を払うことになる」と強調。軍事的抑止を前面にした異例の声明を出した。トランプ大統領は10日、米「FOXニュース」の取材に対し、「多くの同盟国も中国以上に米国を利用してきた。私は中国と良好な関係を築いている」と述べ、事態を静観する構えを示した。

政府は11月14日、国家安全保障戦略など安保関連3文書の見直しにあわせ、「非核三原則」の見直し検討に入ったと報じられた。政府内では、「持ち込ませず」の概念が米国の核抑止力の実効性を損ねかねないとの指摘が浮上している。非核三原則は、1967年に当時の佐藤栄作総理が表明した「核兵器を持たず・作らず・持ち込ませず」との方針に端を発する。安全保障関連3文書にも「非核三原則の堅持」が明記されている。こうした動きに対し、中国外務省の林剣副報道局長は14日、「高市政権は非核三原則について曖昧な態度を示し、言葉を曖昧にすることで放棄の可能性をほのめかしている」と強く批判した。

★ゲスト: 久江雅彦(共同通信特別編集委員)、林尚行(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役) ★アンカー: 末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)

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