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【特集】「私は人間でしょうか?」29歳で難病ALSと診断された男性  “働くこと”でつないだ希望 香川

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 徐々に体が動かなくなる難病になった男性がいます。一度は働くことを諦めましたが病気が進行する中で起業しました。きっかけは自らのある「問いかけ」でした。

 問.私は人間でしょうか?

 こう問いかけたのは、合田朝輝さん34歳。ALS(筋萎縮性側索硬化症)。体を動かす命令が筋肉に届かなくなり、体のあらゆる筋肉が衰える難病です。

 今は自力で歩けなくなり、手はわずかに動くほど。言葉を発することは難しくパソコンで入力した文字を録音した自分の声で読み上げる合成音声を使うこともあります。

 合田さんがALSと診断されたのは29歳の時でした。

(合田朝輝さん)
「その時は、『マジか』。みたいな。驚きの方が大きかったです。できるだけ考えなくてもいいようにしてました。それに子どもがまだ小さかったから日々が忙しかった」

 診断を受けたのは3人の子どもを育てながら香川県観音寺市に一軒家を建てた矢先のこと。看護師として勤めていた病院をやめ、「働くこと」を諦めました。

 ALSは今のところ完全に治す方法はなく、進行すると自力で呼吸することもできなくなります。

(合田朝輝さん)
「だんだん、気を紛らわせるのも限界になってきたというか。まあ、考えんようにしよったけど、それが、とうとう目の前にきた。そこからどんどん精神的に落ち込んでいきました」

 そして、2021年1月、合田さんは自身のブログにこう記しました。

(合田さんのブログより)

「人間と猿の違い」
・できないこと
歩けません。立てません。
起き上がったり寝返りもできません。
・やりたいのにできないこと
子どもを肩車する。絵本を読む。
愛する妻を抱きしめる。

問.私は人間でしょうか?

 合田さんの友人・飯間将博さん(37)は、ブログを見た翌日、合田さんのもとへ駆けつけました。

(飯間将博さん)
「なんて言ったらいいんだろうかと思ったんですけど、ただ実際に人間って考えることもできるし、考えることができるのと感情があるっていうのが人間でしょうっていうので『そこで仕事をしろ』と言いましたね」

 合田さんは、飯間さんの勧めもあり、経営や起業などを学びコンサルティングなどを始めました。この日はクラウドファンディングを手伝った人との打合せ。合田さんは人々に訴えかけるストーリーを考えました。

(松本裕貴さん)
「文章力がとてつもない。そのクラウドファンディングを読んだ方がすごい感動しました。心がほっこりしましたっていう内容を送っていただいて、これ僕の力じゃなくて完全に合田さんの力やなと思って」

 クラウドファンディングではカフェを開くために170万円を超える資金が集まりました。

(合田朝輝さん)
「身体障害者は体が不自由だけど、考えることに問題はありません。スキルがありながら埋もれてる人がたくさんいます。障害を理由に諦めようとしている当事者の支援をします」

 ただ、合田さんは飯間さんと働く中で不安を口にしたことがあったそうです。

(飯間将博さん)
「合田君から『僕と関わって大丈夫ですか? 飯間さん』って言ってきたことがあって、『いずれお見送りする可能性もあるんですよ』って言われたんですけど」

 合田さんは、飯間さんが主催する月に1度の経営塾に参加しています。

(飯間将博さん)
「あきらめない経営塾。一番の目的、働く目的。この働く目的というのをみなさんに発表してもらいます」

(発表の様子)
「保険の営業のイメージアップ」
「人の役に立つため、人に喜んでいただくため」
「香川県で一番の接骨院グループにしていく」

 人々が思い描く「働く目的」。合田さんに順番が回ってきました。

(飯間将博さん)
「今回あえて資料は作らず、合成音声だけで合田君が挑戦したいってことでしたので、じゃ行きます」

(合田朝輝さんの発表)
「合田朝輝です。僕の働く目的はALSを治すことです。どうしてもそこは諦められないので、いろいろやりたいことはあるけど、自分中心の働く目的にたどり着きました。僕は働いていないと生きることに絶望し、死ぬと思うんです」
「この2年寝返りができないから、熟睡できたことはありません。夜は2時間ごとに目が覚めます。食べるのも寝るのも、自分の自由にできない」
「安全欲求も、病気があるから満たされない。だけど、所属欲求、承認欲求は、仕事をすることで満たされる。生理的欲求、安全欲求という、下のコップが割れているから。全ての欲求を満たすためには、仕事をして、上からどんどん注ぎ続けなければならない。割れたコップの自分が、いつか本当に誰かのために、何かできるようになるために」
「だけど、結構しんどいです。でも死なない。生きるって決めたから。ALSを治して、遊びまくって、ぐっすり眠って、子どもたちを思いっきり楽しませて、妻を力いっぱい抱きしめる。僕にとって働く目的は生きる目的でした」

(飯間将博さん)
「彼がいろいろしんどいことは知ってるし、しっかり生きていってほしいし、ALSがホンマに治るための応援ができたらなと思います」

問.私は人間でしょうか?

(合田朝輝さん)
「僕は皆さんと、つながる心で生きています。つながりがあるから、僕は人間でいられます。この2年間で生きるんだ、諦めないんだと言い続けていると、僕を一人の人間として、対等な仕事仲間として、接してくれる人たちが増えてきました。それがどんなにうれしかったことか。体が動かなくなっても、自分の声が出せなくなっても、諦めない男がここにいます。僕は生きています」

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