高松市のサンポート地区の「遊歩道化」について考えます。
サンポート地区では、香川県立アリーナやJR高松駅ビルなど新たな施設の建設が進められています。そんな中、香川県はサンポート地区を車中心の空間から歩行者中心の空間にして快適に歩くことができるよう「遊歩道化」することを検討しています。サンポート地区はどのように変わっていくのでしょうか?
(記者リポート)
「いつも片側2車線の車道ですが、きょうは車を通行止めにして、歩行者天国にしてイベントが開かれています」
8月6日、JR高松駅の北側の車道沿いにはキッチンカーや雑貨店などが並びました。
(訪れた人は―)
「誰もいないよりはにぎやかな方が歩いていても楽しいし、安心して歩ける」
「変な人にさらわれたりしても、誰かが見てるから安全だと思う」
この取り組みは「遊歩道化」に向けた社会実験の一つです。
香川県は、サンポート地区ににぎわいを創出するために、このエリアの「遊歩道化」を検討しています。
香川県は、方針などはまだ決まっていないとしていますが、検討用として示したイメージではJR高松駅の北側の車道が「遊歩道」になっています。木も植えられていて、緑豊かな空間が広がっています。
また、2025年に開館予定の香川県立アリーナができる海沿いのエリアでは、北側の車道をなくして県立アリーナと海がつながるように、歩道と芝生が整備されています。
8月2日と6日に行った社会実験では、「遊歩道化」を検討している車道を通行止めにすることで車がどのルートに迂回するかを調べました。
また、2日から6日にかけて、県立アリーナ北側の車道を車線規制して、現在の車の通行量でも混雑しないかを検証しました。
(記者リポート)
「10分ほど交通量を観察していますが、どちらの車線も混雑している様子はみられません」
(香川県 都市計画課/奥村武 課長)
「現状の交通量は十分把握しておりまして、今回の社会実験のような形態であれば、どうにか交通処理ができるのかなと思っている」
香川県はこの社会実験の結果を受けて、2023年10月ごろに開く3回目の検討会議で「遊歩道化」にあたってクリアすべき課題などを話し合うということです。
では、「遊歩道化」をにぎわいづくりにつなげるには何が必要となるのでしょうか?
まちづくりに詳しい香川大学の西成典久教授が「にぎわいづくりに必要だ」とするのは、歩行者が歩き続けたいと思える「高い回遊性」です。
(香川大学/西成典久 教授)
「ヨーロッパの方では、ウォーカブル、街中を歩けるようにして、個人所有の車を排除していく流れが30年以上前から行われています。例えば、イタリアの人口14万人ぐらいのサレルノという町があるんですけど、非常に多くの人が海辺と街中と駅をぐるぐるとまわって町を回遊して、楽しみながら町に実際お金を落としていっている。経済効果も非常に大きい」
今後、サンポート地区では、県立アリーナ、駅ビル、大学、外資系高級ホテルなど、多くの新しい建物が完成する予定です。しかし、現在 建物の敷地のほとんどが車道で区切られていて「回遊性が高い」とは言えません。
(香川大学/西成典久 教授)
「片側2車線、計4車線で、通常こういう道路は多いので、一般的な感覚からしたら、普通の道路があるという感じかもしれませんけど、実際にここから向こうに渡るっていうのが、この車道があることによって心理的な障壁になってるかとは思います」
香川県は、2023年5月にもJR高松駅北側の車道を歩行者天国にしたイベントを実施。このとき来場者にとったアンケートでは、3分の1以上の人が海沿いのエリアまで回遊していました。
(香川大学/西成典久 教授)
「にぎわいを生み出すときに、民間の力を利用して『そこでビジネス頑張りなさい』だけではなくて、街全体として魅力的にして、そこを回遊していく人たちを増やしていく。そのためには、官民連携の事業が必要だと思う。今は、魅力がそれぞれ点として存在している状況。それらを一気に回遊ができるようにして、つないであげることで、ここでしか感じられないような魅力を生み出していく」
にぎわいづくりのために、サンポート地区を魅力的な場所にすることは大切ですが、近隣の市民や普段道路を使う運送事業者には丁寧な説明が必要になります。