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【解説】コロナ禍でドライバー減…タクシー業界の現状と今後は 「定着率の低さ」が大きな壁に 香川

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 私たちの「生活の足」の一つ、タクシーについてお伝えします。
 香川県のタクシードライバーの数は、新型コロナ禍前の2018年は1630人いたドライバーが2023年3月には1443人と1割以上減っています。コロナの感染拡大で外出や移動が減った影響などで大きな打撃を受けたタクシー業界。現状と今後について取材しました。

(街の人は―)
「近くのタクシー会社がなくなって、タクシー会社そのものが少なくなった感じはうける」
「夜間とか拒否される場合があると聞きました。この時間は無理ですとか」
「たまに飲食店街が(タクシーが)少ない気がした。いつも空車がいるはずなのにいないというか」

 高松タクシー協会によりますと、2024年3月時点で高松地区のタクシー事業者が保有する車両台数は806台で、コロナ禍前よりも30台ほど減りました。また、40社あった事業者も営業不振や先行きの不透明さなどによる廃業や事業統合によって33社まで減りました。

 一方で、この5年間減り続けてきたドライバーの数に変化が起きています。

 5月2日、公共交通の事業者や有識者らで作る高松市の協議会で高松地区のタクシー事業者が合わせて37人のドライバーを新たに採用したことが報告されました。

 2023年12月、高松市は運転手の雇用促進の費用などに充ててもらおうと国の臨時交付金を活用してタクシー1台当たり10万円を支援。「新型コロナの5類移行」も追い風になりました。

(高松タクシー協会/川﨑武文 会長)
「(新型コロナの5類移行で)人流が活発に動き出したと同時にタクシーも動き出したのでそういう影響もあり、運転者数は回復傾向、増加傾向に転じています」

 5月、高松市のタクシー会社に入社した50歳の男性ドライバーは、乗務経験はなく乗務に必要な「2種免許」も1週間ほど前に取得したばかり。

 現在は本格的な乗務開始に備えて先輩社員の指導のもと研修を受けています。「生涯続けられる」ところがタクシードライバーを選んだ理由だと言います。

(新人タクシードライバー[50])
「体力、精神力、あと病気にならなければ続けることができる職業。(給与面も)頑張れば頑張っただけ、歩合も含めてもらえる仕事なので」

 高松タクシー協会によると、23万円ほどかかる「2種免許」の取得費用を会社が負担するドライバー養成制度は勤続期間などの条件付きではありますが、多くの会社で採用されつつあるそうです。

 すでに4月から乗務を始めている新人ドライバーもいます。安藤七菜さん(22)は飲食店勤務からタクシードライバーに転職しました。

 周囲からは「反対する声」もあったそうです。

(平成レッグス/安藤七菜さん[22])
「お酒を飲まれた方からのセクハラ発言だったり、やはり夜遅く働くというイメージがあるので女性として大丈夫かっていう親からの反対の言葉とかありましたね」

 現在、朝8時から夜9時までの勤務を2日間続けて1日休む「2勤1休」シフトで乗務している安藤さん。「女性ドライバーが増えれば女性のお客さんももっと気軽にタクシーを利用できる」と話し、SNSでも仕事の楽しさを発信しています。

 新型コロナ禍を経て、ドライバーの数はようやく回復傾向にありますが、高松タクシー協会の川﨑会長は「雨天時やイレギュラーのときなど運転手が足りないシーンもあり、まだ十分ではない」と話します。

 その大きな壁となっているのが「ドライバーの定着率の低さ」です。長時間、変則的な就業時間や低い賃金がネックとなり若い人が入っても短い期間で辞めてしまうという課題があります。

 タクシー業界はどう取り組むべきなのか専門家に聞きました。

 地域公共交通を研究している香川高等専門学校の宮崎耕輔教授は「収益やドライバーの賃金など業界全体の底上げを図るにはタクシーの『実車率』を上げるべき」と話します。

 「実車率」とは保有するタクシーに客を乗せている時間の割合のこと。その鍵を握るのがスマホで近くにいるタクシーを呼べる「配車アプリ」です。

(香川高専/宮崎耕輔 教授)
「都市圏、都市部においては、まさに60代以下の方はほぼほぼ配車アプリでタクシー予約している。配車が上手にできるということは、次のお客さんをすぐに乗せることができるので当然ドライバーの収入もアップしてくることが期待できると感じている」

 高松地区では大手2つの事業者がそれぞれ複数の小規模事業者を集めて共同で配車を行うシステムを導入していて、実車率の向上につなげています。

 高松タクシー協会は、2025年の瀬戸内国際芸術祭や大阪・関西万博で訪れる観光客やインバウンド客に向けて「配車アプリ」を導入すべく動いています。

 また、商品学を専門とする香川大学経済学部の古川尚幸教授は、タクシーの自動運転の実証実験が行われていることも踏まえ、ドライバーの仕事が先進技術に取って代わられることへの対策も必要だと指摘します。

(香川大学経済学部/古川尚幸 教授)
「高齢者の方々であったり、サポートが必要な方々がおられるので、そういったところ人間ならではと言いますか、人間だからこそできるようなそういったサービスに特化してドライバーさんがその役割を担うことがこれからの一つの方向でもあるかと思います」

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