6年前の西日本豪雨で、倉敷市真備地区の「まび記念病院」に避難していた人々が救助される様子を撮影したのは、1人の被災者。この経験をきっかけに会社を立ち上げ、これからの防災のあり方を伝え続けています。
(西日本豪雨で被災した/金藤純子さん)
「今見える2階の窓ですね。あそこが会議室なんですけど、あそこに最初両親と犬と一緒に避難していました」
2018年7月7日、車で避難所へ向かおうとした金藤純子さん。しかし、道が通行止めでたどり着けず、4階建てのまび記念病院に身を寄せることになりました。
(西日本豪雨で被災した/金藤純子さん)
「『2階まで水が上がるから3階に上がってください』と言われた時には『大変だ』という感じになりました」
(金藤純子さんリポート[7月7日午前10時40分ごろ]))
「どんどん水位が上がって病院の駐車場なんですけど車が全部浸かってしまいました」
金藤さんたちは300人ほどの避難者とともに一夜を過ごし、翌日、救助されました。
(金藤純子さんリポート[7月8日午前])
「自衛隊のボートに乗らせていただいています」
小田川とその支流で堤防が次々と決壊し、金藤さんが住んでいた真備町川辺は、ほぼ全域で浸水。
水害に対する備えはほとんどしていなかったと当時を振り返ります。
(西日本豪雨で被災した/金藤純子さん)
「ハザードマップも見たことがなくて何も知らなかったという自分に対してあきれ果てたというところが大きかったんです」
西日本豪雨から2年後、金藤さんは防災の啓発活動などに取り組む会社を立ち上げました。
(西日本豪雨で被災した/金藤純子さん)
「『EnPal』は、命が助かる街づくりということで、ショッピングセンターや自治体の防災イベント、防災の研修やセミナーなどを担当しています」
そして8月には、被災した経験やこれまでの活動を踏まえ、本を出版します。
金藤さんが、災害から命を守るために大切だと強調するのは、「自分が暮らす土地について知ること」。倉敷市真備町箭田には江戸時代、小田川の治水に尽力した「守屋勘兵衛」という人物のお墓があります。
(西日本豪雨で被災した/金藤純子さん)
「小田川が何度も氾濫していたことから、長さ2kmにわたって、治水の工事をした。土地の成り立ちを知ることはとても大事で、私たちが何を気を付けなければいけないのかを教えてくれる」
倉敷市真備地区は、昔から水害が繰り返し起こっていた場所。6年前に浸水した公民館の分館には水害を防ぐため、街を囲むように造られた堤防、「神楽土手」の跡が今も残っています。
そして、同じく被害を受けた源福寺にも、明治時代に起きた洪水の「供養塔」が建っていますが……。
(西日本豪雨で被災した/金藤純子さん)
「この石碑の存在は被災後に初めて知りました。高度成長期の時以降に引っ越してきた、うちもそうなんですけど、ここが水害常襲地だということはほとんど聞いていないまま土地を購入している。ここが危険だと分かっていたら、もう少し備えはできていたのではないか」
今後の水害に備え、氾濫リスクを抑えるために行われた高梁川と小田川との合流点付け替え工事。
金藤さんは本の出版にあたって、この治水対策を行った国土交通省にも取材をしました。
(西日本豪雨で被災した/金藤純子さん)
「西日本豪雨と同じクラスの雨であれば耐えられます、それだけの大事業ですと。でも『絶対に大丈夫だということはありません』と言われたことは、本当にびっくりしました。公助でできることはさまざまな手を尽くしていますが、それ以上の環境の変化に関しては、『自助』と『共助』で自分たちが何とかしていくしかない」
1階部分に水が押し寄せ、全壊となった金藤さんの実家。しかし、高齢の両親は被災後も同じ場所で暮らすことを望んだといいます。
(西日本豪雨で被災した/金藤純子さん)
「明治以来14回も水害があったということを被災後に知って『別の場所に引っ越そうよ』と持ちかけたんですが、両親からは『死んでもいいから戻らせてくれ』と。両親にとって彼らの人生そのものなんですね」
少子高齢化が進む中で高齢者や障害者など「要配慮者」の逃げ遅れを防ぐためには、家族で取り組む「自助」に加え、地域で取り組む「共助」も重要になると金藤さんは強調します。
(西日本豪雨で被災した/金藤純子さん)
「リスクがある場所で暮らすという中で、お互いに情報を共有しあっていざというときにはこうしようということが、話し合いができるこの形がもっと進んでいけばと強く願います」
金藤さんは、7月6日から11月9日まで岡山市北区表町の「さんかく岡山」で開かれる全7回の講座で講師を務めます。(金藤さんは2、4、5、6回を担当)
南海トラフ大地震など災害への備えや防災について学べる無料の講座です。申し込み締め切りは7月5日です。
申し込みと問い合わせは、岡山市男女共同参画社会推進センター「さんかく岡山」(086-803-3355)まで。