岡山で活動する99歳の舞台俳優、岡田忠雄さん。2年ぶりに舞台に立ち、次は福岡での公演です。様々な困難を抱えながら舞台を実現させた背景には、多くの人のサポートがありました。
岡田忠雄さん、99歳。「老い」をテーマに岡山を拠点に活動する、劇団OiBokkeShiの看板俳優です。2025年6月、岡山芸術創造劇場ハレノワで2年ぶりに舞台に復帰しました。
演技で涙を誘い、カーテンコールでは観客から万雷の拍手。ただ、この舞台裏ではセリフ覚えや着替え、トイレの介助などを出演者らが出演などの合間を縫ってサポートしています。
劇団はこの岡山公演の3週間後に福岡県久留米市での公演を控えていました。ただ岡田さんの出演は……
(劇団OiBokkeShi/菅原直樹 主宰)
「迷っているところですね。いろいろと。ちょっと様子見ながら。やっぱり公演一回やるだけでもだいぶ体力を使うんで。あとスタッフなんですよね。夜間、岡田さんと一緒に同じ部屋で泊まる、介護のスタッフが必要になるんじゃないか」
岡田さんは2024年10月、岡山市の高齢者住宅に入居。胆管炎で入院した後、トイレや入浴などは介助が必要になり、一人で暮らせなくなりました。
福岡での公演は、岡田さんが入居する施設の管理者・柴山さんも長距離移動や体力面などから難色を示していました。
しかし、岡田さんは―
劇団関係者「久留米に行く気、満々ですか?」
岡田さん「もちろん行きますよ! 何を言ってんだよ! 失礼な!」
岡山公演の初日、劇場に岡田さんの主治医・橋本医師や柴山さんがやってきました。
柴山さん「おめでとうございます。素晴らしい舞台でした」
岡田さん「とんでもない」
岡田さんの演技に心を動かされる
(劇団OiBokkeShi/菅原直樹 主宰)
「次の久留米公演に向けて、動き出せたらなと思ってます」
岡山公演の直後、柴山さんが岡田さんの久留米公演の全面サポートを劇団に申し出たのです。
(劇団OiBokkeShi/岡田忠雄さん[99])
「やっぱりね。舞台に出ると思ったらね。疲れも吹き飛ぶ。その気持ち。倒れてもいいんじゃないですか。倒れたらそれでおしまいっていう」
(あゆむの家/柴山祐一郎 管理者)
「やっぱり僕らも土曜日(公演)を見させてもらって心が変わったといいますか、本当にこの人の生きがい、この人の意向を尊重しようというところですね。そこに心を動かされました」
岡田さんの演技に心を動かされたもう一人、主治医の橋本医師も……旅立つ直前、往診に来ました。
橋本医師「久留米は行くんですかね」
岡田さん「もちろん行きますよ」
橋本医師「行きますか。紹介状持って、困ったら電話してもらって、もともと本人が望んでいることだから、その時困ってなければ行きましょうか」
(岡田さんの主治医/橋本健二 医師)
「格好いいじゃないですか。人生として。何百万人に一人しかチャンスないですよ。こんな99歳で県外に夢をかなえに行くっていう人って」
仲間のサポートを受け夢の舞台へ
7月4日、岡田さんの姿は久留米にありました。
菅原さん「ようこそ」
岡田さん「おめーは……監督じゃねぇか」
菅原さん「そうです。ようこそ久留米に」
岡田さん「久留米か」
菅原さん「ここ久留米。ここ劇場です」
99歳の決意と周りの支援が、ここ久留米での公演を実現させたのです。
岡田さん「もったいない」
菅原さん「泣くのは早いです。まだあすあります。無事に久留米に来られてよかったです」
公演は2日間ともほぼ満席となりました。岡田さんもいつも通り仲間のサポートを受けて久留米のお客さんが待つ舞台へ。
99歳が見せた熱演。「演劇」を介して集まった仲間に支えられ実現した舞台。最後に岡田さんがお客さんに伝えたこと。
岡田さん「またのときお話ししましょう」
菅原さん「また会いましょう」
次の舞台での再会を誓いました。
99歳の看板俳優、「おかじい」こと、岡田さんの活動を追ったドキュメンタリー映画の製作に向けたクラウドファンディングを行っています。「おかじい 映画」で検索して応援してください。