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【解説】「牛乳」の未来はどうなる? エサ代の高騰などで生産者からは悲鳴も 岡山

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 新型コロナの感染拡大でさまざまな産業に深刻な影響が出ています。今回の解説では、影響が出ているものの一つ、「牛乳」への影響について考えます。

 農林水産省の畜産統計によりますと、2月1日時点で岡山県では、中四国で最も多い1万6800頭の乳牛が飼育されています。

 牛乳の原料となる生乳は供給量が増えていますが、今、さまざまな要因により生産者は苦境に立たされています。

エサ代の高騰で経営が厳しく……

 岡山県勝央町の酪農家・桧尾康知さんの農場。桧尾さんは95頭のメスのホルスタインを飼育していて、そのうち59頭から乳を搾っています。

 2021年の春には最新のドイツ製搾乳機8台と洗浄システムを約450万円かけて購入しました。

(桧尾牧場/桧尾康知さん)
「まだ20年は頑張ろうと思っているので、ここで替えておかないと、もっとボロボロになってからでは遅いので。でもまさかのこんなにエサが高くなる状況は想定していなかったので、さすがに厳しいですね」

 桧尾さんは殺菌処理などをしていない搾ったままの「生乳」を毎年550トンほど出荷しています。年間売り上げは約6500万円あるということですが、エサ代の高騰などで牧場の経営は厳しい状況です。

(桧尾牧場/桧尾康知さん)
「年間で3200万から3400万くらいのエサ代だった。去年1年が4200万から4400万くらい」

 桧尾さんは、乳牛に乾燥した牧草とトウモロコシなどを混ぜた配合飼料を与えています。これらの多くはアメリカから輸入されています。

 農林水産省によりますと、値上げの背景には原油価格の上昇による海上運賃の値上がりや新型コロナの影響で船での輸送が不安定なことのほか、円安や中国での需要増加など複数の要因があるということです。

(桧尾牧場/桧尾康知さん)
「あまりにも急激な変化なんで、対応がなかなか追い付かない。できる限りの対応はしてきたんですけど、自助努力ではどうにもならない状況になってますね」

 桧尾さんはこれまで生乳の売り上げの1割程度、利益を確保することを目標にしてきましたが、現状、黒字にするのは難しいということです。エサ代の高騰以外にも牛の衛生用品の値上げなど、悩みは尽きないそうです。

子牛の値段が下がったことも痛手に

 さらに、大きな痛手となっているのが、生乳の売り上げを補ってきた肉用の子牛の価格の下落です。

 桧尾さんは牧場の維持に必要なホルスタインの子牛を15頭ほど生産しています。これ以外に、ホルスタインと和牛を掛け合わせた肉用の子牛を毎年50頭ほど出荷しています。

 ところが、1頭20万円ほどだった子牛の値段が、ここ2年で約半額にまで下がったそうです。

 桧尾さんは、新型コロナの影響で飲食店が休業し牛肉が余っていることなどが理由だと考えています。

(桧尾牧場/桧尾康知さん)
「生乳出荷をした金額でいろんな経費を全て差し引いてゼロの状態。乳価では稼げないわけで。その上の肉用子牛を産ませた部分が所得になっていたとゆうことで、酪農家にとっては四面楚歌状態。今のままいってどんどん赤字になっていく前にやめようかという方が出てこられる状況にある。そういう恐怖感というか、もしかしたら、ぽつぽつ減るのが自分のところかもしれない」

 生乳の生産量は酪農家の高齢化や後継者不足で減少傾向にありました。そのため、業界をあげて基盤強化に取り組んできました。2019年度には生産量がようやく増加に転じましたが、その矢先に新型コロナの感染が広がりました。

 農林水産省によりますと、「生乳」を原料にして作る業務用の「牛乳」の生産量は2020年3月以降、12カ月連続で前年割れとなりました。これは、新型コロナの感染が広がり飲食店が休業していたことなどが影響しているとみられます。

今の季節は1年の中でも酪農家にとって苦しい時期

 2021年度の「生乳」の生産量をみてみると、牛は1年の中でも春に多くの乳を出します。一方、この時期は春休みやゴールデンウィークで学校の給食がない日が多く、牛乳の需要は高くありません。

 苦しい状況の中、乳業メーカーは牛乳の消費拡大を図っています。

 3月23日、岡山市の「オハヨー乳業」が出張授業を開きました。

 授業では赤磐市の山陽小学校の1年生が牛乳が作られる過程を学んだり、搾乳を体験したりしました。

(児童は―)

「楽しかった。結構力を入れないと出ない。牛乳とか牛に詳しくなった」

「本物(の牛)で(乳しぼりを)やってみたいと思った。いつも残さず飲んでるから、また残さず飲みたい」

 オハヨー乳業によりますと、牛乳の消費が落ち込む中、春休みやゴールデンウィークなど学校の休みが多い春は生乳が余り過ぎてしまい、廃棄される懸念もあるということです。

 余った生乳は脱脂粉乳やバターなど保存のきく乳製品に加工されてきましたが、こちらも在庫が膨れてきていて、その処理が課題になっています。

(オハヨー乳業 酪農部/桜井克久さん)
「生乳の生産量の調整というのは、エサを変えたりしてできるだけのことは酪農家さんはやっていただいてるんですけれども、今、頭数を減らしてしまうと、将来コロナ後の生乳需給が足りなくなってくる可能性もあるので、そういったことがないように、今なかなか調整ができないという状況になっています。できるだけ消費量を増やすことができるようにと、オハヨー乳業も頑張っております」

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