かつて関西と九州を結んでいた寝台特急「ブルートレインなは」。この車両を遍路宿にしようと2021年、香川県観音寺市に移設されました。移設から1年。なるべく当時のまま残そうと整備が進められる一方、資金面では苦しい状況に立たされています。
ブルートレインを案内してくれるのは、善通寺市でうどん店を営む岸井正樹さん(61)。
(岸井正樹さん)
「カーテンを開けると瀬戸内海、伊吹島がパッと。夜眠れない人がここ(通路)へ出てきて外を見たりとか、朝早く起きて外の景色を眺めたりとか。やっぱり昭和の出来たときのその姿、当時のままのほうがいいかなというのがあって」
子どものころから憧れだったブルートレインを香川県で遍路宿にしたいと2021年4月、岸井さんは鹿児島県の阿久根駅前に置かれていた2両を観音寺市の雲辺寺ロープウェイ山麓駅駐車場に4日掛かりで移設しました。
クラウドファンディングで全国の鉄道ファンなどから集めた1700万円を輸送費と設置費に充てました。
この1年間は15人ほどのボランティアの手を借りながら車体を塗り直したり、ライトをLEDにしたりするなど、人が泊まるために整備を進めてきました。
1両には、4人泊まれる部屋が8区画備わっています。
(記者リポート)
「当時の車内販売で売られていた飲み物が瓶だったのかせん抜きが付いていたり、灰皿が付いていたり、当時の時代の空気感を感じることができます」
(岸井正樹さん)
「列車が到着して今から行くというときに、これ(通路に設置されている鏡)をちょろっと見るんだろうと」
思っていたよりも修理が必要な箇所もありました。
(岸井正樹さん)
「電気関係がどれだけ水をかぶっているのか分からん」
エアコンの交換で400万円ほど、屋根の塗装で120万円ほど、当初予定していなかった費用が追加で掛かると言います。しかし、岸井さんは、費用が掛かってもできるだけ当時の状態にこだわっています。
(岸井正樹さん)
「元の状態、後から付けたものが見えない状態、写真に写り込まない状態にしたいというのが鉄道マニア皆の思いなので」
岸井さんは、6月から土日に限って1両を一般に公開していて、見に来た人たちにグッズを売るなどして資金を集めています。
(岸井正樹さん)
「少しでも足しになればと思って」
今後は、電気や水を引いたり、周囲にトイレやシャワーを始め飲食できる場所や小さな植物園などを整備したりする予定です。夏ごろには、2両を宿として開業したいとしています。
(岸井正樹さん)
「自分が昔乗って感動したままを再現したいというのがある。僕はそう。みんなの思い出のあるものだから、できるだけそれから外れないようにちゃんと(整備)していきたい」