高松市の商店街でクリエイターや学生らが作ったオリジナルのゲームなどを楽しめる「お祭り」が開かれました。「ゲーム条例」で全国的な注目を集めた香川県で、ゲームとの付き合い方について考えようという新たな試みも行われました。
11月26日、高松南部3町商店街のあちこちに設けられたゲームのブース。交番裏の広場には畳が敷かれ、こたつに入りながらボードゲームに興じる人たちも。
子どもから大人まで楽しめるゲームのお祭り、「SANUKI X GAME」です。
小学生も参加 オリジナルゲームを展示
(記者リポート)
「学校ではおなじみの黒板消しを使ったゲーム。そしてこちらはトイレットペーパーがコントローラー。身近なものを使ったオリジナルゲームに子どもたちも盛り上がっています」
主催したのはゲーム制作の愛好家で作る一般社団法人「讃岐GameN」。3回目となる2023年は、県内外のクリエイターや学生ら約100人が約40のオリジナルゲームを出展しました。
香川大学付属高松小学校の児童が出展した「商店街すごろくパーティー」。縦割り学級での活動として、緑6組の1年から6年生34人は、「讃岐GameN」のメンバーの助言を受けながら、2023年4月からゲーム作りに挑んでいます。
SANUKI X GAMEでは、商店街のお店を題材にした「すごろく」ゲームを手作りし、訪れた親子連れらがサイコロを振って楽しんでいました。
(6年生は―)
「自分たちの作ったゲームでお客さんが喜んでくれるところを見るのが一番うれしいです」
「ゲーム作るのってこんなに楽しいんだって思ったり、ここをこうすればもっと楽しめるかなという、一つ一つの工夫が遊ぶという楽しみとは違う(作る)楽しみが感じられました」
Cygamesとうどん店のコラボ企画も
長~い行列ができているのは……讃岐うどん店。大手ゲームメーカー「Cygames」がSANUKI X GAMEに合わせ、さか枝うどん南新町店と行ったコラボレーション企画です。
店内で、対戦型オンラインゲーム「シャドウバース」のトーナメントが行われたほか、その人気キャラクター「ガルミーユ」をイメージした限定のコラボうどんも登場しました。
武器の爪をモチーフにした、ちくわの天ぷらと紅白のあんもちが入っています。
(Cygames/木村唯人 専務取締役)
「ゲームで人と人の縁をつないだり、地域を盛り上げることまで貢献できるようなゲームのイベントはすごくいいなと思ってます。シナジー(相乗効果)が生まれる形で何か盛り上げることがやりたいなと思って(コラボ企画を)始めました」
3回目を迎え、これまで以上の盛り上がりを見せたSANUKI X GAME。ただ、このイベントは単に「ゲーム好きの人」のためのものではないんです。
ゲームクリエイターと保護者が対話
(記者リポート)
「こちらの会場に集まったのは、ゲームクリエイターと小学生の保護者たち。普段接することのない人たちによる対話の場が持たれています」
今回初めて企画された「座談会」です。
『テイルズ オブ』シリーズのプロデューサーを務めた(現・東京情報デザイン専門職大学の准教授)大舘隆司さんや、『ゴッドイーター』シリーズなどを手掛けた保井俊之さんら有名なゲームクリエイターもゲスト参加しました。
(主催した「讃岐GameN」/渡辺大 代表理事)
「ゲーム条例のことがあった香川県だからこそっていうか、実際にゲームが今確かに一つの側面として抱えている、子どもたちと親との間で起きている問題みたいなものを話し合える、そんな場所がここに育っていったらいいなと思って企画させてもらった」
香川県では、2020年子どもをインターネットやゲームの依存から守るための条例が全国で初めて制定されました。条例には「子どものゲームの利用は1日60分まで」などとする家庭でのルール作りの目安が盛り込まれ、全国的な話題となりました。
SANUKI X GAMEが2021年始まったのもこの「ゲーム条例」が一つのきっかけです。
とはいえ、条例の賛否について議論を巻き起こすのが目的ではなく、ゲームが持つプラス面と、依存の問題というマイナス面の両方に向き合おうと、過去2回、依存症の専門医らを招いた講演会も開いてきました。
今回は、そこから一歩進んで小学生の保護者10人とゲームクリエイター10人がグループに分かれて「親と子どものうまいゲームの付き合い方」などをテーマに意見を交わしました。
(小学生の保護者)
「時間を決めてても(子ども)本人からしたらキリのいいところでやめたいっていうのがあるけど、でも親からしたらすぐやめないとよくないんじゃないかっていう気持ちが先走っていって……」
「『いい加減にやめなさい』とか、ぼやっとした言い方をしてたりとか、もしくは『そろそろ宿題……』とか、比較して勉強になりがちだったんです」
それぞれの家庭で直面している悩みを打ち明ける保護者に対し、かつて「ゲーム少年」だったクリエイターは……。
(ゲームクリエイター/保井俊之さん)
「私は子どもの頃遊びすぎてですね、ファミコンをお父さんに叩き割られた。『これをやるからこれで遊ばせてくれ』みたいなプレゼンテーションができるようになっていった」
(東京情報デザイン専門職大学/大舘隆司 准教授)
「結局『ゲームをやらせないことで何したいの?』っていうことが子どもに伝わらないと子どもはゲームをやめないし。あれダメ、これダメ、これダメ……って追い込んだ結果、子どもにどうなってほしいかを伝えてないと子どもは窮屈に感じる」
グループのメンバーやテーマを変えながら、対話は約2時間にわたって行われ、それぞれが多くの気付きを得たようです。
(小学生の保護者)
「親としてはちょっとやりすぎもどうなんと思うんですけど、ちょっとやっぱりちゃんと子どもと話して子どもの自主性も伸ばしつつ、落としどころを見つけるようなことも必要だと思います」
(謎解きイベントクリエイター・医師/近藤慶太さん)
「ちょっと困ってることがある親御さんとか、実際にゲームで遊んできたのを通り越してきた学生さんとか、作ってるクリエイターさんとか、いろんな立場の人がそれぞれどういうふうにゲームと向き合ってきたのかっていう経験則を持ちあえたっていうのは、すごくいい場だったなと思う」
今回のイベントを主催した「讃岐GameN」の渡辺さんは、条例制定を推し進めた県議会議員たちとも「対立」ではなく、「対話」したいと話します。
(主催した「讃岐GameN」/渡辺大 代表理事)
「いろんな方がその人たちなりに考えて一つ提案してくれたあの条例に対して、街の僕らとしてはこんなふうに(イベントを)作ってみてるけどっていう僕はボールを投げてる、投げ返してるつもりなので。条例を作ることになった人たちにも、やっぱりここに来て、なんなら一緒に遊んでほしいなって思うんですよね」