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【解説】岡山市のバス路線再編で何が変わる? 市が目指す「効率化」と「利便性の確保」

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 先週、岡山市のバス路線再編について話し合う協議会が開かれました。ここで市が示したのが「公設民営」で新たな路線を複数設けるなどするとした再編案です。この再編で何がどう変わるのでしょうか……。

バス再編 何が変わる?

(松木梨菜リポート)
「大森市長が会場に入ってきました。これから路線の再編に向けて議論されます」

 2月2日に開かれた協議会には岡山市で路線バスを運行する事業者9社と大森市長らが出席しました。ここで市が示したのが「再編計画案」です。

(岡山市/大森雅夫 市長)
「市としてサポートする、公設民営という形もありますし」

 岡山市は利用者数などに応じて運行するエリアや路線を「都心」「幹線」「支線」に分類しました。この「支線」のうち、1便あたりの利用者が9人未満で収支率が50%を下回る路線は「小さな車両で運行する」としています。

 さらに再編計画では岡山市内に12の「支線」を新たに設けるとしました。

 このうちの3つの支線は各地に設けた拠点同士をつなぐものです。

 岡南地区の大型商業施設からは妹尾地区の「JR妹尾駅」と芳泉地区の「拠点」への路線を新設。

 さらに「JR妹尾駅」と「JR北長瀬駅」も新たな支線で結びます。これまで鉄道やバスといった公共交通網はJR岡山駅を中心に放射線状に広がっていましたが、各地の拠点同士を支線で結ぶことで、より公共交通での移動がしやすくなると期待されています。

(岡山市/大森雅夫 市長)
「都市機能をある程度集約化して拠点から拠点に行きやすくなる、こんなイメージを抱いております」

 岡山市の再編計画では支線を「公設民営」で運行するとしています。

 これは新たな車両の購入やICカードシステムの導入など主に路線の設置にかかる費用は岡山市が負担し、運転手の確保や車両の維持管理などの実際の運行はバス事業者が担うというものです。

 さらに市は従来は事業者が負担する運行経費も最大で65%負担するとしています。

 岡山市は今回の再編にかかる総事業費を約29億円と見込んでいます。この半分を岡山市、4割を国、残る1割を事業者が負担する計画です。

市が費用を投じて再編する理由とは?

(岡山大学大学院/橋本成仁 教授)
「公共交通の会社として抱えている問題は費用面ですので、とにかくどこを走らせても赤字な状態ですので、やはり市民の移動手段を確保するということで行政として手を打たざるを得ないと」

再編成功の「カギ」は?

 岡山市は9つの事業者が運行する全国屈指の競合エリアです。

 利用が見込めるエリアでは複数の事業者が路線を運行。限られた利用者を奪い合っていました。

(岡山大学大学院/橋本成仁 教授)
「非常にたくさんの民間のバス会社が運行しているので、ある意味、自由競争にまかせて何十年もやってきたわけですよね」

 この状況を改善しようと岡山市は、2018年に事業者らとの協議をスタート。しかし意見はまとまらず、協議が中断した時期もありました。

 この状況を変えたのが「コロナ禍」。利用者の減少によって運賃収入が大幅に減り、岡山市によると2021年は全体の9割が赤字路線でした。

 再編にあたって市が目指したのは「効率化」と「利便性の確保」です。

(松木梨菜リポート)
「今回の再編では利用者が少ない路線など4つの路線を廃止します」

 JR岡山駅と中区の沖元地区を結ぶ路線は、ほかの路線と重複していて、利用も低迷していました。

 再編計画では重複している路線などを整理するとともに、それぞれの路線を運行する事業者を割り振りました。

 岡山市は支線の新設も含めて、路線バスが運行する区間は現在の340kmから356kmへと16kmのび、公共交通を使って中心部や拠点に移動する人は約1万7000人増えると見込んでいます。

 今回、岡山市が示した再編計画は9つの事業者全てが合意しました。

(両備グループ/小嶋光信 代表)
「都心と幹線と支線に分けてそれぞれの分担をしていく形を市が示されたのは画期的だと思うし、これは非常におもしろい取り組みになるだろうと思います」

(八晃運輸/成石敏昭 社長)
「市民目線で利便性の高い路線、これをこれから行政と一緒に考えていく。今までは事業者の目線で考えてたでしょ」

(岡山市/大森雅夫 市長)
「長い間時間がかかりましたけれども、いい計画ができたと思っています」

 岡山市の再編計画について利用者は……。

(街の人は―)
「利用する方に利便性が高くなるのはいいことだと思いますね、まずはやってみるというのが」
「利用者が増えるならいいかなって思います」

 大幅に変わろうとしている岡山市のバス路線ですが、橋本教授は「マイカー依存」とも言える状況の中、いかに「バス」を利用してもらえるのかを今後のポイントに挙げています。

 実際、岡山県が2022年10月に行った県民の移動手段に関するアンケート調査によると、平日、休日ともに最も多かったのは「自動車」で、7割を超えていました。

(岡山大学大学院/橋本成仁 教授)
「バスを走らせればお客さんがついてくるという話ではないということなんですよね。走らせても誰も乗ってくれない状態になるので、これがいかに魅力的な、車から変えよう、自転車から変えよう、と言えるようなサービスになるのか、ここが大きなポイントになるかと思います」

 魅力的なサービスとして橋本教授は、例えば運行本数が多いことや運賃が安いこと、乗ればポイントがたまるなどを例にあげています。

 市民の税金を投入する分「使いたいバス路線」になるよう期待したいと感じます。岡山市は、3月にも再編を盛り込んだ「利便増進実施計画」を国に申請する方針です。

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