介護施設などを訪問し高齢者らにネイルを施す「福祉ネイリスト」と呼ばれる人たちがいます。ネイルを通して目指しているのは「心のケア」です。
岡山県倉敷市の真備地区にあるグループホーム「まきびの丘」。認知症の診断を受けた70代から90代の利用者、約20人が暮らしています。
この日施設を訪れたのは、福祉ネイリストの川添朗子さんです。
川添さん「ハートもあります。ハート」
利用者「ハート?」
「福祉ネイル」は主に高齢者や病気、障害を抱えている人に対して行うネイルです。
(福祉ネイリスト/川添朗子さん)
「福祉ネイルっていうのはどちらかというと『心のケア』を重視してまして、コミュニケーションをしっかり取らせていただいて」
日本保健福祉ネイリスト協会は「ネイルの技術」に加えて「介護」や「心のケア」などを学んだ人を「福祉ネイリスト」に認定しています。
(記者リポート)
「こうして、たくさん声を掛けながらネイルを行います」
川添さん「ちょっと緊張してる? 大丈夫です? してない?」
高齢者「ぼーっとしてる」
川添さん「ぼーっとしてる!」
川添さんは女性の手を取り声をかけながら、ネイルを塗っていきます。
川添さん「ラメとかつけますか?」
高齢者「ラメ?」
川添さん「ぴかぴかと、ちょっと入れますか?」
高齢者「うん」
高齢者の負担にならないよう、施術は20分以内で終わらせるようにしています。
(福祉ネイリスト/川添朗子さん)
「できましたー!」
(高齢者)
「ハッピーです、楽しいよなあ。きれいになるってことはいいことやなあ。ああきれいになったね。ありがとう」
高齢者「……ふふ。かわいい」
川添さん「よかったです」
高齢者「また当分、こうやって見て、楽しみができた」
(福祉ネイリスト/川添朗子さん)
「その方の生きてきた人生だったり、そういうのを手と手を握らせていただいて、ネイルをさせていただく。やっぱりすごいそこは、言葉に変えられない通じ合うものがあると思います」
東京通信大学で介護予防などを研究している佐藤三矢教授は「福祉ネイル」の効果について……。
(東京通信大学/佐藤三矢 教授)
「爪を塗って差し上げるだけで笑顔になられる、心の豊かさを取り戻す後押しをする、そういう効果としては十分期待できるものではないかと考えております。爪というのは日常生活の中で、必ず目につくんですよね。そのたびごとに『私きれいに彩られてるわ』っていうふうに認識できるんですよね。お風呂に入ってリセットされないっていうのがすごく大きいと思います」
(介護施設職員)
「私たちも声掛けはするんです、『きれいね』とか。やっぱりそういうときに一緒に気持ちを分かち合うというか、そういう機会になってるかなと思います」
川添さんによると、現在、岡山県で「福祉ネイリスト」として活動しているのは約50人。川添さんは今後、その数を増やしていきたいと考えています。
(福祉ネイリスト/川添朗子さん)
「ほんとにおしゃれするのに年齢は関係ないなっていうのは思ってますね。一人でも多くの方にこの福祉ネイルの夢の体験を広げていきたいなと思っています」