2014年、香川県善通寺市で危険ドラッグを使った男が運転する車に当時11歳の女の子がはねられ死亡しました。女の子が亡くなってから10年……1人娘を失った遺族の心の変化を見つめました。
(一人娘を失った/秋山隆志さん)
「七五三のときに撮ってもらったこの写真ですかね、これはもうかわいいですね本当に」
善通寺市の秋山実久さんは、2014年2月に11歳で亡くなりました。
(実久さんの父/秋山隆志さん[54])
「実久が元気だったら21歳なので、他のお子さんとか二十歳ぐらいの人を見て心が悲しくなったりとかすることはよくあります。なかなか、つらいよね……」
2014年1月29日、小学校から下校中だった実久さんは対向車線から直進してきた軽自動車にはねられました。
頭をフロントガラスに打ちつけられ、意識不明の重体となり、9日後、病院で息を引き取りました。
運転していた男は事故の直前に危険ドラッグを使っていました。
(実久さんの父/秋山隆志さん)
Q.事故があったときに背負っていたランドセル?
「そうですね、はい。大変な事故の内容というのは分かりますけど。でも客観的に実久を思い出させてもらえるものなので、このランドセルをずっと背負っていたので。本当にこう、思い出深いものです」
(実久さんの母/秋山裕紀子さん[52])
「時間が経てば(癒えていく)というのは私には当てはまらなくて、(実久さんに)『ありがとう』『ごめんなさい』がずっと相反する言葉ではあるんですけど、内容的にはずっとこの気持ちが続いていて」
実久さんの両親は当初、名前や顔を出さないことを条件に取材に応じてくれました。それでも、時間の経過とともに気持ちが変化していきました。
(実久さんの父/秋山隆志さん[2017年10月])
「(名前や顔が出るのが)実久だけでは可哀想だなっていう気持ちが今までありましたし、少しでもメッセージ性が
高まるのであればと思いました」
隆志さんは若い人たちに命の大切さを伝えようと2017年から中学校や高校で講演をしています。
(講演での秋山隆志さん)
「一番悲しく思ったことは喪主として実久の火葬のボタンを妻と2人で押したことでした。さまざまな法律や交通ルールがあります。守っていれば絶対大丈夫とは言いませんが、加害者や被害者になる確率は少なくできると思います」
これまでに行った学校での講演は約30回になりました。
(実久さんの父/秋山隆志さん)
「自分が実久の父親に戻れるっていうところがすごくうれしいところでもありますし、一つの生きがいとして今はあります」
そんな中……事故から10年が経ち、両親には新たな不安が生まれています。
(実久さんの父/秋山隆志さん)
「もしどこかですれ違ったりとか姿を見かけたりすることがすごく怖くて」
2015年1月に危険運転致死の罪で懲役12年の判決を受けた男。事故当時は秋山さん一家と同じ善通寺市に住んでいました。
刑期の12年が経つ前に仮釈放される可能性もあるため、そう遠くない未来に隆志さんや裕紀子さんと顔を合わせることも否定できません。
(実久さんの母/秋山裕紀子さん)
「なんとも言えない気持ちになるのは目に見えているので。できれば近くに住んでほしくないというのは本音です」
(実久さんの父/秋山隆志さん)
「心が休まらないっていうか、ずっと被害者であり続けるっていうのがこれだけつらいものなのかっていうことをすごく思い知らされます」
10年前、危険ドラッグによって奪われた命……10年経ってもその傷は癒えません。
(実久さんの母/秋山裕紀子さん)
「未だに違法薬物とかそれに関わるワードを聞いてしまうとフラッシュバックを起こして気分が悪くなってしまうので」
厚生労働省などによりますと危険ドラッグの販売店は2015年に一度ゼロになりましたが、2023年8月末時点で全国に約300店舗あることが分かっています。
(実久さんの父/秋山隆志さん)
「いろんな活動もした中で大変な思いをしてきましたけど、実久に恥じないような内容の10年にできたかなとは思います。どの写真も実久は笑っていますので、笑っている実久に会えるようにしたいなと思います」