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【特集】里山の資源を生かして暮らしてきた五名地区 地域の未来を見据える移住者の思いとは 香川・東かがわ市

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 林業や農業など里山の資源を生かして暮らしを続けてきた東かがわ市の五名地区。8年前に移住してきた男性は山での仕事を引き継ぎつつ、発展させようと試みています。地域の未来を見据える男性の思いとは。

 香川県東かがわ市に住む飯村大吾さん、33歳。

(五名ふるさとの家/飯村大吾さん)
「シカのお肉が7割、イノシシが3割。油は全部イノシシの油を使っています」

 作るのは、この地域で捕れたシカやイノシシの肉を使ったハンバーグです。(お山のハンバーグランチ ジビエ100% 1400円)

 オムライスのケチャップライスにもシカやイノシシの肉が使われています。(岩瀬さんの卵を使ったオムライス 1200円)

(お客さん)
「お肉、全然くせがないですね。とってもおいしい」

 北海道出身の飯村さんは、林業の研修生として2016年に東かがわ市に移住してきました。

 その3年後には産直カフェ「五名ふるさとの家」の店長を任されました。この施設は東かがわ市が、地域のにぎわいの拠点として小学校の跡地に整備しました。

 香川県と徳島県の県境にあり、人口約280人の東かがわ市・五名地区。

 林業や農業が盛んでしたが、その一方で、農作物を荒らすイノシシの被害に悩まされていました。

 20年ほど前には、駆除したイノシシの肉を活用しようと四国で初めての解体所が造られました。

 飯村さんも林業の研修を受けながら、狩猟や解体を習ったそうです。

(五名ふるさとの家/飯村大吾さん)
「お客さんに届くまで自分の手を掛けて一貫してやっていくということは、すごく自分の中で大切なことだなと思っていて、五名という集落は、小さな集落ではありますが、ジビエだけではなく林業にしても農業にしても一から十まで全部自分たちでやっていくと、販売まで。というところがこの田舎には、この五名には残っていますね。そして素晴らしい仕事が残っています。お客さんを通して、五名の良さをつないでいく。良さを伝えていくということはすごく大事になってくると思いますし、それができる環境がこの五名にはあると思っています」

 そんな五名地区周辺では近年、変化があったそうです。

(五名ふるさとの家/飯村大吾さん)
「大体例年80頭超えてくるんですけど、イノシシが。今年はまぁ、50頭ちょっとですね。その代わりにシカが増えてきちゃって……」

 シカは木の皮や新芽を食べたり、農作物を荒らしたりするため、有害鳥獣に指定されています。

 飯村さんは山に入り仕掛けた罠を見て回っています。

 香川県によりますと、東かがわ市で捕獲されたシカは2013年度まではゼロでしたが、その後、右肩上がりに増え、2022年度は303頭が捕獲されました。

(五名ふるさとの家/飯村大吾さん)
「おいしくなんとか食べれるようにするけんな、と言い聞かせてますね、自分に。自分で扱う食材というものを、原点みたいなところを自分の手でやりたいという気持ちで命と向き合っているつもりですし、そこを知りたい気持ちも強い。皮とか骨とか捨てているものが、なんか違和感が出てきちゃって」

 増えるシカの肉だけではなく皮の活用も試みています。

 今取り組んでいるのは、シカの革を使った手袋です。手袋は、東かがわ市が日本一のシェアを誇る特産品。

 デザイナーや地元の縫製会社に協力してもらい、形にすることができました。

(デザイナー/得丸成人さん)
「シカの革の柔らかい質感、触った感じとか、手に着けてなじむ感じ。そういうフィーリングがダイレクトに伝わるような感じで」

 この冬からの受注生産を目指しているそうです。

(五名ふるさとの家/飯村大吾さん)
「新しい移住者の方とか、若い人たちが反応するような発信ができないかなって」

 また、イノシシの油を使った革製品用のワックスをふるさとの家で手作りし、2023年12月から販売しています。

 飯村さんは、シカやイノシシの肉について自分で調理するだけではなく、販路を広げてきました。

 今では、高松市を中心に飲食店10店舗ほどに肉を提供しています。

(食と酒 風のじょうけい/川田祐平さん)
「上質なお肉というイメージで使っていて、調理するたびに希望通りになってくれる、お肉が」

 「食と酒 風のじょうけい」では、シカ肉はコース料理のメインディッシュです。

 この日は、飯村さんがお世話になっている地元の人たちに、シカ肉を食べてもらおうと食事に招きました。

 飯村さんは、里山での仕事を引き継ぎ、発展させて、若い世代の移住を呼び込むことで、五名の未来へバトンをつなぎます。

(五名ふるさとの家/飯村大吾さん)
「8年前に移住してきて、本当に自分の母親、父親のような形で本当によくしてもらっていると、何もわからない若造が来た時にいっぱいもらった恩を返していけるのかなと思いながらやってますね。また恩を返すだけではいかんと思いますから、僕が学んだことを次の移住者の方たちにつなげていくですとか、この小さな集落から大きな未来じゃないですけど、そういったところを見ながらやっていきたいなと思います」

 飯村さんは2025年、五名に宿をオープンする予定で準備を進めているということです。

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