小型で天ぷらや煮物、おでんの具材としても人気のイイダコですが、漁獲量が激減しています。貴重な水産資源を増やそうと香川県の水産試験場が世界初というイイダコの「完全養殖」に成功しました。
魚介類を研究している香川県水産試験場です。
(記者リポート)
「約1カ月前に孵化したイイダコの赤ちゃんです。直径約2cmくらいでとてもかわいいです。この黒い容器の中にいる赤ちゃんの親は香川県水産試験場でふ化して大きくなって産卵したイイダコです」
(香川県水産試験場/中山博志 増養殖研究課長)
「今回の完全養殖イイダコは去年、香川県水産試験場で生まれたイイダコを親まで成長させて、その親が産んだ卵から生まれたイイダコ」
人工的にふ化した魚介類が大きくなって産卵し、その卵がふ化することを「完全養殖」といいます。人工的に生まれたイイダコはなかなか大きく育たないため、完全養殖に成功したのは世界で初めてだということです。
(香川県水産試験場/中山博志 増養殖研究課長)
「この研究を進めていけば天然のイイダコを使わずに次の世代を生み出せるので、その一歩になったと思う」
香川県は2024年5月、底引き網の漁業者と連携し、貝殻に卵を産み付けたメスのイイダコを多度津町沖に放流しました。
香川県のイイダコの漁獲量は2002年に210tでしたが、2023年は1.7tと120分の1まで落ち込んでいます。
激減した背景には海の環境の変化で餌となる二枚貝などが減った事や、イイダコを捕食するマダイやハモが増えたことが考えられます。また底引き網漁だけでなくレジャーの釣りでイイダコを取り過ぎているためとみられています。
香川県水産試験場は9日、漁業者と共同でイイダコの赤ちゃん・稚ダコを宇多津町沖に放流しました。
「完全養殖」に成功した稚ダコ42匹と天然のイイダコから生産した稚ダコ1958匹です。
「完全養殖」の稚ダコは、6月末まで200匹以上が生息していましたが、餌を食べない個体が相次ぎ、5分の1まで減ったそうです。
(香川県水産試験場/中山博志 増養殖研究課長)
「どんどんへい死が続いた状況。原因については全く不明で、餌のやり方や種類とか課題がまだたくさん残っている」
香川県では2023年から釣り人に対してイイダコ釣りの期間を9月1日から10月15日までの午前中に限定しています。漁業者も8月と9月にイイダコが網に入った場合、海に戻しているそうです。
(中讃地区底曳網協議会/丸本裕司 会長)
「やれることはやっていこうと、出来ることを一つでも増やそうと頑張っている」
(香川県水産試験場/中山博志 増養殖研究課長)
「漁業者も漁獲の制限など協力を頂いている。また遊漁者も釣りに関する協力をいただいている中でみんな全体で(水産)資源の回復を進めたい」