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近代建築の保存に必要なものは? 解体方針の「船の体育館」巡りトークイベント 香川

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 香川県は「船の体育館」として親しまれた旧香川県立体育館を解体する方針を示しています。老朽化を理由に全国的に解体が相次いでいる貴重な建築物をどう守ればいいかを考えるトークイベントが高松市で開かれました。

 新しい香川県立アリーナの建設工事現場を臨む高松オルネの屋外広場で8月21日に開かれたトークイベントです。

 近代建築の保存や再生に詳しい京都工芸繊維大学の笠原一人准教授は、京都で明治以降に建てられた名建築を一斉に特別公開する「京都モダン建築祭」の取り組みを紹介。長期的に市民の建築への関心を高めていく必要性を訴えました。

(京都工芸繊維大学/笠原一人 准教授)
「強制的にヨーロッパみたいに保存ができる国じゃない。日本ではみんなを盛り上げて、みんなが(建築物を)好きになってもらうことでしかなかなか残っていかないのだろうと。長くやり続けることで、建築が一つの文化として定着していく」

 笠原さんは、ヨーロッパと違い、日本では建築物の保存制度が緩く、特に戦後建築は文化財として体系的な調査ができておらず壊されやすいと話しました。

 1964年に完成した「船の体育館」こと旧香川県立体育館も、戦後モダニズム建築の代表作の一つです。しかし、耐震性に問題があるとして2014年に閉館。2023年2月、県が「苦渋の選択」として解体する方針を示しました。

 これを受け、建物の価値を改めて認識してもらおうと、建築士や研究者らが8月21日から「船の体育館」の設計図などの展示会を開いています。

 丹下健三さんの事務所が担当した外観や内観、間取りなどの「意匠図」と、岡本剛さんの事務所が担当した土台や骨組みといった「構造図」はいずれも手書きで、設計者たちの試行錯誤の跡が見て取れます。

 トークイベントはこの設計図展の一環で、展示に携わった建築士や研究者らが船の体育館への思いを語りました。

(高松市の建築士/木村拓実さん)
「(船の体育館は)現在見られる建物に至るまでに、だいたい6案ほどの変遷を経ておりまして。構造の理論が意匠にも乗っかってきて、全体のイメージを変えるような変更を余儀なくされている。それが悪い変更じゃないんですよね。これが変更することによって、意匠の方も洗練されていっている」

(愛知工業大学/清水隆宏 准教授)
「建物の良さってなかなか一般の方は気づいていないこともあったりして。でも取り壊されると今まであったものがなくなる。そこですごい喪失感というか、残念な思い、悲しい思いをされるってことがよくある」

 一方、建築構造を専門とする東海大学の田中正史准教授は、設計した段階から耐久性やどれくらい使えるかの議論をしておくべきだったと指摘しました。

(東海大学/田中正史 准教授)
「200年使えるんであれば、100年前からどういうふうに使い続ける、もしくは解体するという話を、建築との付き合い方の文化の中で皆さんと一緒に議論できてくと何かしらの考え方、もしくはお金の使い方も含めてなんですけど、できたんじゃないか」

 これを受け、解体方針の撤回を求めて活動している「船の体育館再生の会」の河西範幸さんも……。

(船の体育館再生の会/河西範幸 代表)
「設計者ではない第三者の方が見て『この建物、ここが多分弱いので、メンテナンス、ここちょっと頑張った方がいいよ』みたいな、第三者視点みたいなものが当初からあれば、もうちょっと違った未来が描けたのかもしれない」

(来場者はー)
「建物が結局誰のものか、社会にとってどういう価値があるか。なくなって寂しいっていうのは、地元の者として素朴な感想だと思うんですけど、社会的に建物をどうしていくっていう(議論に)広げていく、そういうことに気がつくきっかけになった」

「今回、耐震改修がうまくいかなくて解体することになって、そのことは残念なんですけど、部材の傷みとかメンテナンスのこととかも考えていかないといけなかったのにっていう話が出てきて。『丹下健三だからすごい!』みたいなのに酔ってたのかなって。ちょっと戒めというか。そうなってほしくないなら、できたときからその話をしておかないといけないなって思いました」

 設計図展「沈みゆく船からの手紙」は9月17日まで高松オルネ4階で開かれています。

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