香川県立アリーナがオープンし、にぎわいが期待される高松市のサンポート地区。その中心にあるのが2004年にオープンした高松シンボルタワーです。商業エリアにはアリーナのオープンに合わせて複数の店が入る一方で、まだ空き店舗も多く残っています。
サンポートの盛り上がりをシンボルタワーが最大限に生かすためには何が必要なんでしょうか?
アリーナ効果で高松シンボルタワーに新店舗
あなぶきアリーナ香川の隣にそびえ立つ高松シンボルタワーは、香川県所有の国際会議場や賃貸用オフィスが入る高さ151mの高層棟と、高松市所有のサンポートホールが入る低層棟で構成されています。そのうち、飲食店などが入る商業エリアに2月、新たに2つの店舗が加わりました。
2階にオープンしたのはスポーツバー。イギリス風パブをイメージした内装に4台のモニターを備えていて、スポーツを観戦しながらお酒を楽しむことができます。
(ブルーザブルー/小出克元 オーナー)
「中四国最大規模の、最高で1万人入る規模のアリーナができることは人の流れもできるんじゃないか」
1階にオープンしたのはうどん店です。県内に14店舗を展開する「こだわり麺や」が初めてサンポート地区に出店しました。
(こだわり麺や サンポート高松店/岡田幸一 オーナー)
「県立アリーナのオープンが大きい一つのポイントですよね」
さらに、3月上旬にも29階に1店舗がオープンする予定です。1カ月間に3店舗がオープンするのはシンボルタワーの開業以来初めてのことです。
(シンボルタワー開発 商業担当/大平貴晴さん)
「アリーナができるのが一番大きいと思います。このエリアで商売ができるというお客さまが増えてきた」
タワーの「顔」に空き店舗…
盛り上がりの一方で、商業エリアの「見栄え」は決して良くありません。
(記者リポート)
「飲食店が入るホール棟の3階です。入口から入ってすぐのスペース、お店が入っておらず空き店舗のままになっています。そして2階です。こちらも入口のすぐ横はシャッターがおりています。こちらの大きな区画もシャッターがおりていて、寂しい印象を受けます」
また、JR高松駅とアリーナを結ぶ歩道に面した1階の区画も空いたままになっています。これらの空き店舗に共通するのは、タワーの印象を左右する「顔」とも言えるスペースであることです。
(シンボルタワー開発 商業担当/大平貴晴さん)
「閉まっているのは一番に圧迫感があると思います。入ってすぐのところに圧迫感があるとフロア全体にマイナスのイメージが出ると思いますので、そこは早急に優先して誘致したい」
2004年の開業時には43の店が入り、全ての区画が埋まっていたシンボルタワー。全国6カ所の有名ラーメン店が集った高松拉麺築港や「料理の鉄人」として知られた陳建一さんのレストランなどが人気でした。しかし、新型コロナの影響で2020年度からの3年間で11店舗が撤退しました。
カレーやガトーショコラを販売する店は「シンボルタワーを元気にしたい」とコロナ禍の2022年にオープン。それでも、フロアの雰囲気を改善することは簡単ではありません。
(カリガリ 高松店/三井陽子 オーナー)
「空き店舗が多いので『あそこ行っても何がある?』て思い出されない。理由がないとなかなか一般の人は(シンボルタワーに)入ってきにくいかなとは思います」
現在、9つの区画が空き店舗となっていて入居率は約68%にとどまっています。これからアリーナで人気アーティストのライブや大きなイベントが開かれる中、そのチャンスを生かす準備が整っているとは言えません。
実際に観光客からも……。
(観光客[大阪府から])
「実は今、上に行ってきたんですよ(Q.展望台?)うん。展望台。(Q.そこ以外は?)いやいや、そこ以外は何もないかなと思って。いきなり1階に下りましたけど、2階3階にもあります?」
(観光客[神奈川県から])
「2階3階は通り道でしたね」
「どういうビルなのかが分からなかったですね」
マーケティングの専門家「明確なコンセプトを」
マーケティングの専門家がシンボルタワーに必要だと指摘するのは「明確なコンセプト」です。
(香川大学経済学部/藤村和宏 教授)
「地域の文化性とか歴史性をシンボルしたものなのか、建物自体がシンボルなのか、どっちか分からない。コンセプトですよね、何を提供していくか、あの地域・シンボルタワーが顧客に対してどんな問題解決、あるいはポジティブな変化を提供できるか」
運営するシンボルタワー開発は、開業した21年前に決めたコンセプトを一から見直すことを検討しているということです。
(シンボルタワー開発 商業担当/大平貴晴さん)
「アリーナだけに頼らずに、施設としてお客さんがここに何を求めるかをきちんとコンセプト化して、コンセプトに基づいて施設づくりを行っていくことが課題だと思っております」
また、入居店舗のオーナーはサンポート地区全体の「連携」が必要だと訴えます。
(ブルーザブルー/小出克元 オーナー)
「シンボルタワーはシンボルタワー、オルネはオルネ、駅前は駅前で連携がうまく取れていない。もっとお客さまをぐるぐると回遊させられる仕組みをみんなで知恵を出し合って考える必要があると思います」
(こだわり麺や サンポート高松店/岡田幸一 オーナー)
「サンポート地区を(一周したら)楽しめるよっていう、計画ルートを作りながらやってもいいかなと」
(シンボルタワー開発 商業担当/大平貴晴さん)
「周辺にさまざまな施設ができるのはプラスの要因だと思っておりますが、そこだけに頼らずにお客さまが来ていただける施設になりたい」