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【判決詳報】公益通報後に「仕事を干された」 製薬会社社員の訴え棄却「報復目的と推認できない」高松地裁

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 香川県に住む製薬会社の社員が勤務先の不正を国に公益通報した後、「仕事を干された」として会社に損害賠償を求めた裁判です。高松地裁は13日、原告側の訴えを退ける判決を言い渡しました。

 この裁判は東京に本社を置く外資系製薬会社の社員、小林まるさん(仮名・60歳)が2024年1月、勤務先の会社を相手に起こしたものです。

 訴状などによりますと、小林さんは2017年、勤務先の会社が扱う指定難病の治療薬について、本来は認められていない「適応外」の患者にも使用するよう促す不適切なプロモーション活動を行っている実態を厚生労働省に公益通報しました。

 厚労省は翌年、製薬会社のプロモーション資材に誤解が生じる可能性があるとして内容の削除や訂正などを文書で通知し、2019年2月には薬剤の使用上の注意の改訂も指示しました。

 小林さんはその後、配置転換となり、1人だけの部署で「ほぼ仕事がない」状態に……。2020年3月からの5年3カ月間の稼働時間は、1日平均わずか41分でした。

(原告 製薬会社勤務/小林まるさん[仮名]2024年1月)
「例えばエクセルに数字を打ち込む。私の経験や知識を生かせるような仕事ではなくて単純作業がほんの少しだけ。本当につらいです」

 小林さんは「人間関係からの切り離しと、過小な要求というパワーハラスメントに該当する」などとして、会社に対し精神的損害300万円の賠償を求めていました。

 一方、被告の製薬会社側は、原告の業務量が少ない状態にある理由として、上司の指示に反抗的な態度を示していることや、母親の介護への配慮を求めていることなどを挙げ、「嫌がらせ目的で意図的に仕事を干したなどという事実は存在しない」などと主張していました。

 13日の判決で、高松地裁の光野哲治裁判長は「原告の業務量が少なかったのは主に母親の介護を理由とする在宅勤務の要望に会社が対応したことによるもの」「公益通報に対する報復や嫌がらせ目的だと推認はできない」と指摘しました。

 さらに「原告は在宅勤務のため、実施すべき業務がないことによる精神的苦痛は、事業所で勤務する労働者と同視できるほどに大きいとは言えない」などとした上で、会社側の裁量権の濫用や職場環境配慮義務の違反は認められないとして原告側の訴えを退ける判決を言い渡しました。

 KSBの取材に対し、被告の製薬会社は「弊社としては引き続き適切に対応してまいります」とコメントしています。

(原告 製薬会社勤務/小林まるさん[仮名])
「現在の法制度では、会社には絶大な裁量権があるということになっているんだそうです。公益通報者に対して仕事を与えないという嫌がらせで報復されたら、このように勝つのは極めて難しい」

 原告側は判決を不服として控訴する方針です。また公益通報をした人が会社や組織から不利益な取り扱いを受けた場合、「通報が理由だと推認する規定」を設けるよう法律の改正も求めていくとしています。

(原告 製薬会社勤務/小林まるさん[仮名])
「こんなに苦しい思いをするのは私で最後になるように頑張りたいと思います」

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