南海トラフ地震が発生する可能性が高まった時に気象庁から発表される「南海トラフ地震臨時情報」。この臨時情報は東日本大震災を教訓に運用が始まりました。発表されたときにわたしたちはどう行動すればいいのでしょうか。
(香川大学/金田義行 特任教授)
「3.11が起こる前、2日前にマグニチュード7.3の地震が起こって(マグニチュード)9.0っていう地震が起こるっていうのは想定しがたかった。命を守るために臨時情報を出すということにしたんですね」
香川大学で地震学が専門の金田特任教授は、東日本大震災の2日前にも三陸沖で地震が発生していたことを例にあげ、「南海トラフ地震臨時情報」は規模の大きい地震があった後に、続いて発生する「後発地震」に対し「防災の対応」を呼び掛けていると話します。
「臨時情報」は2019年から運用が始まり、南海トラフ沿いでマグニチュード6.8以上の地震が発生した場合などに気象庁が発表します。
「南海トラフ地震臨時情報」の仕組み
マグニチュード6.8以上の地震が発生するなどした後、5~30分後にまず「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が発表されます。
そして専門家などで作る評価検討会が巨大地震と関連があるかを検討し、地震発生から最短で2時間後に調査結果を発表します。その結果は3段階にわかれます。
まず「調査終了」の場合は地震の発生に注意しながら通常の生活をするよう求められます。
次に「巨大地震注意」はマグニチュード7クラスが発生したときに発表され、2024年8月に初めて発表されました。すぐに避難を呼びかけるものではありませんが、備えを再確認し、地震が発生したら逃げられる態勢をとるよう呼びかけるものです。
そして3段階のうちもっとも深刻な「巨大地震警戒」はマグニチュード8クラスが発生した場合に発表されるものです。
もし巨大地震警戒が発表されたら?
(松木梨菜リポート)
「正午過ぎの高松市の商店街です。お昼を食べるためにお店に入るなど、皆さん日常を過ごしています。もし巨大地震警戒が出された場合はどうなるのでしょうか」
(街の人は―)
「香川もあまり大きな地震とかが今まであんまりなくて想像できないんですけど、ここに避難してとかはすぐできるように備えときたいなって」
「警戒が出たときに、もしそれが日中で旦那と別々だったときは家に集まろうとか行動については話し合いしました。(子どもが)今6カ月なんで、これから幼稚園に入ったときにどうするか新たに考えていかないといけないと思ってるんですけど」
(香川大学/金田義行 特任教授)
「前の巨大地震注意と同じだと思ってるとそれは大きな間違いだと思います。切迫感がだいぶ違ってくるのであした(大地震が)起こっても不思議はないという状況になりかねないですね」
香川県の「独自基準」では津波被害も想定
「巨大地震警戒」の発表時は、地震発生後の避難では間に合わない可能性がある人に対して事前に避難するよう呼び掛けています。
香川県では、これに加え津波での被害を想定して独自の基準を設けています。
(香川県危機管理課/藪根正浩 課長補佐)
「30cm以上の浸水が、地震が発生して30分以内に生じるようなところにお住いの高齢者と要配慮者の方に対しては、後発地震の発生に備えて1週間程度は事前避難の対応をとっていくことを基本としています」
香川県は南海トラフ地震で震度6強が観測された時の地震・津波被害想定を公表しています。
たとえば高松市で30分後に30cm以上浸水する地域は紫と赤で示しています。
避難できなくなる恐れのある浸水の深さは30cmといわれていて、それを基準に該当するエリアに住んでいる高齢者や乳幼児がいる世帯などに対して1週間程度、事前の避難を検討するよう求めています。
これをもとにそれぞれの市や町が避難エリアを発表する方針です。
学校などの対応は?
一方、徳島市では巨大地震警戒が発表された場合に、市立の幼稚園や小中高を1週間休校するなどとした対応計画案をまとめています。
香川県の場合、学校などの対応は?
(香川県危機管理課/藪根正浩 課長補佐)
「各学校のハザード、地震が発生したときの対応が決められていると思いますので、地震が発生したときの通常学校が決めている基準に基づいて行動していただくのが基本になってくる」
備えを考えるきっかけに
南海トラフ臨時情報は「普段に比べて相対的に地震が発生する可能性が高まった」ことを伝える情報で、この情報が発表されないまま大きな地震が発生したり、巨大地震警戒が出され事前避難の期間が過ぎ解除された後に巨大地震が起こることも考えられます。
そのため国や香川県、そして香川大の金田特任教授も避難経路を確認することや家具の固定などの備え、住宅の耐震化などを呼び掛けています。このうち住宅の耐震化についてですが、自治体で補助を出すところもあります。
臨時情報はまさにこうした備えを考えるきっかけにしてほしいと思います。