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79年前のまま残る地下壕…首里城地下に眠る“戦跡”

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23日は沖縄慰霊の日です。

5年前、火災により消失した『首里城正殿』。2026年秋の完成に向けて工事が進められるなか、その“地下”に残る戦争遺跡の保存・公開の動きが広がっています。

第32軍司令部壕。太平洋戦争末期の1945年、住民を巻き込み繰り広げられた地上戦を指揮した場所です。

沖縄県平和・地域外交推進課 安里隆行主任技師 「外気の流入で乾燥すると風化が進む。通常は扉を閉じている」

先月、内部の映像が公開されました。部屋のようなスペースや、地面から水が湧き出る場所も。また“生活の証し”でしょうか、ビールや酒の瓶が並んでいました。

これまでの調査とアメリカ軍の資料などから、壕は首里城の地下に南北約400メートル、総距離は1キロ余りあることがわかっています。深いところで30メートルほどのアリの巣状に掘られた壕内。ただ、調査が済んでいるのはごくわずかで、落盤の危険性や、土砂で埋まってしまっている場所が多いことから、中心部の調査はできていません。

戦争当時のままの地下壕を、残したい人たちがいます。

第32軍司令部壕の保存・公開を求める会 下郡みず恵さん 「首里城の地下にある司令部壕を模型を作って見える形に」

壕の存在が、県民の記憶からも消えていっているいま「もう一度思い返してほしい」という思いから、県内各地で展示会を行っています。

第32軍司令部壕の保存・公開を求める会 下郡みず恵さん 「消してしまいたい過去だけど、あえてみんなに見せる。広島の原爆ドームもそうですけど、いまとつながる重要な“負の歴史”を残そうと」

実は第32軍司令部壕は、“沖縄戦の悲劇”を生んだ場所でもありました。

激しい地上戦があった沖縄。20万人以上の命が奪われ、県民の4人に1人が犠牲になりました。

第32軍司令部壕は、“軍の頭脳”として機能し、沖縄戦のすべてを決めていた場所です。

当時を知る人に、話を聞くことができました。 瀬名波榮喜さん(95)は、当時の学生たちで組織された鉄血勤皇隊の一員として、旧日本軍の飛行場設営にかり出される日々を過ごしました。そのとき言われたことを、いまも覚えています。

瀬名波榮喜さん 「やんばるの森から木を一本でも担いできて、32軍壕のつっかえ棒に使うとかね。『一木一草にいたるまで戦力にせよ』。そういう命令を(旧日本軍が)出していた。(Q.32軍壕を掘った人はどう語っている)中身については、誰もわからない。軍の機密事項だから。全体像を知るものは1人もいない。誰もわからない。自分もわからない。『なぜか?』と、設計図がないから」

瀬名波さんは、この壕を残す“大きな意味”があるといいます。

1945年5月22日。第32軍は、アメリカ軍が“首里”に迫ってきたため、多くの住民が避難していた南部への撤退を決めました。いわゆる“南部撤退”です。

その決断の結果、逃げた先にいた住民などが戦闘に巻き込まれ、沖縄戦で亡くなった人の約半数が、犠牲になったといわれています。

瀬名波榮喜さん 「南部撤退をする必要はなかった。歴史に“もし”はないと言われているけれど、『最後の一兵まで首里城を守る』ということであれば、(南部撤退がなければ)何万もの住民を犠牲にしないでよかった」

いわば第32軍司令部壕は、沖縄戦の悲劇の“始まりの地”。

多くの住民を戦禍に巻き込む決定を下したのが司令部です。

元教員の牛島貞満さん(70)は、南部撤退を決めた牛島満司令官の孫です。40歳を過ぎてから、祖父が残した戦争の責任を探し続けています。

牛島貞満さん 「祖父が司令官だったこともあり、沖縄を避けていた。40歳になってから沖縄に来るようになって、住民の方、元兵士の方などから祖父のことをいろいろ教えていただいた。どうやって返したらいいのか、お礼をしたらいいのか。私は教員なので、沖縄戦の本当の姿を子どもたちに伝えたい」

『住民の犠牲者を増やした南部撤退を自分なら“するか”“しないか”』。中学校で、350人以上の生徒に問いかけました。

生徒 「少しでも(首里で)戦い、北への逃げ道を考えます」

生徒 「南部に下がると、戦いに住民を巻き込んでしまう」

生徒 「一般住民も巻き込んでいるのは、ウクライナもイスラエルも一緒。同じようにはなってほしくない」

戦後79年。戦争の体験者が、年々、少なくなるなか、事実を伝える戦跡を、どう活用し、未来につないでいくのか。

瀬名波榮喜さん 「32軍壕は、この世がどう変わろうと消えることはない。沖縄戦の実相を伝える永遠の語り部にしたい。それが第32軍司令部壕」

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