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「難民・移民を追い返す」ドイツで極右政党躍進の“現実”大越キャスター緊急取材

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今年は11月のアメリカ大統領選挙を始め“世界的な選挙イヤー”と言われますが、ドイツで行われた地方選挙が世界の注目を集めました。 移民・難民の排斥を強く訴える極右政党が躍進。 ドイツで進む分断の現場を大越健介キャスターが取材しました。

■“移民排斥”訴え 支持拡大

大越健介キャスター 「今日で選挙戦最終日ということで支持者が集まっています。ごく普通の市民が集っている印象です」

ベルリン近郊のブランデンブルク州では21日、州議会選挙を翌日に控え『AfD(ドイツのための選択肢)』の支持者が集まっていました。

AfDは移民排斥を掲げる極右政党です。連邦議会やEU議会でも議席を伸ばし、今月行われたチューリンゲン州議会選挙では、初めて第一党に躍進しました。

大越健介キャスター 「AfDが躍進している一番の理由は?」

AfD連邦議会議員 レネ・シュプリンガー氏 「私たちの政策はドイツ国民のための政策です。連邦政府は世界を救いたいようですが、私たちはドイツ人のための政策をやります」

ドイツはメルケル政権以降、中東などからの難民・移民受け入れを積極的に進めてきました。しかし今、高まっているのは、治安悪化や彼らに対する優遇政策への不満です。

大越健介キャスター 「世界の難民を助けようとしたメルケル前首相の方針は世界からリスペクトされました。それが失われるとは?」

AfD連邦議会議員 レネ・シュプリンガー氏 「誤った決断でした。まともな国は国境を守り、簡単には難民を入れません。それが犯罪の増加につながると認識すべきでした」

大越健介キャスター 「支持する一番の理由は?」

AfD支持者 「税金面からの移民政策。多くの税金がドイツ人ではなく移民に使われています。シリア人は帰国しない。ウクライナ人もそうなるかも」

■揺らぐウクライナ支援

大越健介キャスター 「日曜日のベルリン市内の公園には、ウクライナの国旗を身にまとった人たちもいます。このイベントは、ウクライナ支援のためのチャリティーマラソンです。ここで集まった寄付金をウクライナでけがをした兵士たちのリハビリの資金に充てるということです。こうしたイベントはベルリンでは日常的に行われているそうです」

ロシアによるウクライナ侵攻後、100万人以上の避難民を受け入れてきたドイツ。その支援の輪が、大きく揺らいでいます。

ドイツ人の参加者 「2年前は支援の気持ちが広がってとても強いものでした。でもドイツではその機運が低下していて、寄付やイベントの参加などでそうした傾向が見られます」

■旧東ドイツで不満の“受け皿”に

一体何が起きているのでしょうか。ポーランドに接する旧東ドイツの国境沿いの街を取材しました。

大越健介キャスター 「コットブスは2022年にロシアがウクライナに侵攻した際、たくさんのウクライナの避難民たちが、ポーランドを経由して到着した街です。一日最大1000人の避難民がここに逃れてきました。駅周辺では、そうした人たちを支えるボランティアの人たちが活動していたということです」

コットブスは正にウクライナ支援の中心地でした。親身なってウクライナの人々に寄り添ってきた住民たちですが、今は様子が違います。

大越健介キャスター 「ウクライナから逃れてきた人たちへの市民の気持ちに変化は?」

住民 「親切心やサポートは限界です。はっきりと言えます。国を支えてきた年金生活者がお金をもらうべきで、こうした意見が国民の雰囲気としてあります」」

旧東ドイツでは経済格差に対する怒りの矛先が移民に向けられ、AfDがその受け皿となっています。

今回、ブランデンブルク州の州議会選挙に立候補したAfDのレナ・コトレさん。弁護士出身で、2児の母でもあります。

AfD州議会議員候補 レナ・コトレ氏 「今、必要なのは難民・移民を追い出すシステム。この地にふさわしくない者は追い返すべきです」

この辺りは東ドイツ時代、炭鉱で栄えてきた地域です。しかし、国のエネルギー政策の変化で、街の雇用を支えてきた石炭火力発電所は閉鎖することに。経済が悪化するなか、手厚い移民支援を続ける政権に対する批判は、先の見えない不安を抱える人々の心を駆り立てています。

AfD州議会議員候補 レナ・コトレ氏 「大きな手応えがあって、どこでも声をかけられます。『来てくれてありがとう』『私たちの不安などを伝えてくれた』人々は変化を求めているのです」

ただ、AfDは当局の監視対象となっている支部もある極右政党です。

大越健介キャスター 「この批判に反論は?」

AfD州議会議員候補 レナ・コトレ氏 「国民の関心事を代表するのがポピュリズムだというなら、もう何もできません。私たちをどう形容するかなんてどうでもいいことです」

AfD支持者 「AfDはファシストでもない。ナチスでもない」

22日に行われたブランデンブルク州の州議会選選挙で、コトレさんは与党候補に大差をつけて当選しました。AfDは議席を大きく伸ばし、来年行われる連邦議会の選挙に向け、再び躍進した形です。

■批判の押収 深まる“分断”

寛容さや多様性を重視してきたドイツでも分断は深刻化していました。

大越健介キャスター 「AfDに反対する集会に来ました。AfDに対する危機感が強いのと、ここにあるのは分断じゃないかと感じます。そして、子ども連れが多いです。しっかり教えたいという親の気持ちがあるように思います」

大越健介キャスター 「AfDについてどう思う?」

参加者 「まるでダメ。評価できる主張が1つもない。否定的な見解ばかりでドイツをおとしめる発信だけ」

大越健介キャスター 「戦後大事にしてきたドイツの価値観が崩れつつある。どう思いますか?」

参加者 「壊れる可能性はあります。だからここに来ました。何ができるかを示したい。家にて陰に隠れることはしない。ドイツは右傾化していて、それに反対との姿勢をみせるべき。80年前、90年前の世界に二度と戻ってはならないのです」

■大越キャスターが見た“分断”

(Q.州議会選挙で極右政党が躍進していますが、国政にも影響すると思いますか)

大越健介キャスター 「そういうレベルだと思います。AfDは旧東ドイツの地域での躍進が顕著ですが、ドイツ全体に影響を及ぼしていると言っていいと感じました。ドイツでは日本と違って、単独で議会の過半数をとる政党は現れにくいので、連立政権を組むのが常ということです。現在の主要政党はいずれもAfDと連立を組む考えはないという立場をとっているので、AfDがすぐに政権与党になる可能性は高くないと思います。ただそれでも、支持が広がれば政権にとって無視できない存在となる可能性は否定できません」

(Q.経済が落ち込んでいる地域で支持されるのは、アメリカのトランプ氏のケースと似ていませんか)

大越健介キャスター 「集会に来ていたAfDの国会議員に聞くと、トランプ氏を支持すると明確に答えていました。その是非はともかく、その主張に同調する人と、穏健な考え方を持つ人との間で分断が広がっているという点で、大統領選挙を間近に控えたアメリカと非常に似かよっていると思いました。分断が深まっていく先にどのような社会が待ち受けているのか。どうしたら分断の溝を埋めていくことができるのか。私たち日本も対岸の火事と捉えるのではなく、目を凝らしていく必要があると思いました」

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