10日、自民・公明の党首会談が行われ、公明党の斉藤鉄夫代表は自民党の高市早苗総裁に対し、連立政権からの離脱を伝えました。26年続いてきた協力の歴史が突然の幕切れとなりました。
■高市総裁「一方的に伝えられた」
公明党 斉藤代表 「自公連立政権については、いったん白紙とし、これまでの関係に区切りをつけることとしたい」
自民党 高市総裁 「一方的に連立からの離脱を伝えられました」 10日午後2時前、笑顔をたたえる自民党・高市総裁。一方、笑顔のない公明党・斉藤代表。対照的な表情の2人が会談に臨みました。そして、およそ1時間半にわたる話し合いを終えて、斉藤代表は会見でその内幕をこう語りました。
「納得された様子ではなかった。こちらが出した条件に対して、『これから検討するから』ということを何度も言っていた。『私は改革の精神は誰にも負けないんだ』と。『だから検討の時間をほしい』と、このように何回も何回も言われた」
公明党が自民党に突き付けたのは「決別宣言」。それは、26年間続いた連立政権の終わりを意味するものでした。
■政治とカネ「解明の動きない」
連立解消の最大の理由は「政治とカネ」の問題です。斉藤代表はこう話しました。
「企業・団体献金の規制強化をする案は今回言い出したわけではありません。自民党はいつも『検討する』『検討する』『検討する』と。今回の連立政権協議にあたっては、こういう過去の経緯も含めて、新総裁として決断していただきたいと申し上げてきました」
これに対し高市総裁は会談前とは打って変わり、強張った表情で「一方的に離脱を伝えられた」と話しました。
「本日、公明党からは政治資金規正法の改正に関する公明党案について、この場で賛否を示すように求められました。この場で私1人で判断する、2人だけで判断することはできないので、党内に持ち帰って協議をして、手続きにのっとって速やかに対応したいとお返事を申し上げました。しかしながら、先方からは『それは具体的な回答ではない』と、一方的に連立政権からの離脱を伝えられました」
もし高市氏が総裁にならなかったら、連立解消はなかったのでしょうか?
「例えば総裁が私でなかったら、このような連立離脱はないのか。例えば総裁が代われば、連立協議することはあるのか聞いたが、『今回の総裁選挙で誰が選ばれていても同じです』ということをおっしゃいました」
高市総裁が自民党の執行部に収支報告書への不記載があった萩生田光一幹事長代行を加えたことも公明党との溝を深めました。斉藤代表はこう指摘したといいます。
「その秘書である方が略式起訴されたということに対して明確な説明なり、全容解明に向けた動きが全くなかったことは指摘しました」
9日、高市氏はNHKの番組で萩生田氏の登用について「あえての起用。党内へのメッセージでもある」と説明しましたが、裏目に出た形です。
連立離脱の発表後、萩生田氏はブログを更新しました。
「最大の信頼回復は人目を避け、自粛を続けて時間が過ぎるのを待つのではなく、批判にさらされても仕事をもって信頼を取り戻す事が残された唯一の道と信じ、職責を果たしてまいります」(ブログから)
政界に激震が走った公明党の連立離脱。政治ジャーナリストの田崎史郎さんは自民党に油断があったのではと指摘します。
「それは自民党サイドが公明党の本音をつかんでなかったんじゃないか。公明党はわりと本気で連立離脱を考えていた。自民党の方はこれまで繰り返してきたように、いざと言ったら公明党は折れてくれると。それ以上勝手に思い込んでたんじゃないか」
一方、連立の解消に踏み切った公明党の本音を次のように分析します。
「公明党は参院選で97万票も減らして、それはやっぱり政治とカネの問題だと。一方で、政権に参加している、連立を組んでいる、つまり権力の一角を占めるメリットというのは大きいんですよ。そのメリットの部分が、高市体制になってどうやら減りそうだと。減りそうな政権のうまみと、政治とカネの問題に対して答えていくことをてんびんにかけた結果、やっぱり政治とカネの問題にしっかり答えていかないと、党はこの危機を乗り越えられないというふうに判断したと思います」
■選挙協力も白紙に
これまで26年間、当たり前のように行われてきた選挙協力もこれからはなくなります。斉藤代表はこう述べました。
「国政選挙における党同士の選挙協力はいったん白紙に致します。それでも人物本位・政策本位で応援できる地域も少なくない。このように思います。我が党が擁立する衆議院小選挙区候補への自民党からの推薦は求めません。自民党候補への推薦も行いません」
これまで自民党の議員は、公明党の協力があって当選してきたケースも少なくありません。自民党の平沢勝栄議員に話を聞きました。
「このままだったら自民党の議員のなかで、議席を失う人がかなり出てくるということになるんじゃないか。自民党で公明党の選挙協力を受けていない人の方が少ない。黙っていても1万5000から2万の票が入ってくる。それがなくなっちゃうんですから、自民党の多くの議員にとってみれば、これは本当に死活問題じゃないですかね」
差し迫っているのが再来週にも行われる総理大臣を決める総理指名選挙です。
公明党の斉藤代表は「総理指名では公明党代表である『斉藤鉄夫』に票を投じます」と話しました。
■総理は誰に? 野党一本化は…
果たして次の総理大臣は誰になるのでしょうか?政局は一気に混沌(こんとん)としてきました。
日本維新の会 藤田文武共同代表 「少数与党の国会がさらに少数になるということで、国会の意思決定が非常に難しい」
立憲民主党 野田佳彦代表 「やっぱり野党第1党・第2党・第3党しっかり固まれば間違いなく(自民党の)196を超すことはできると思います」
立憲民主党の安住淳幹事長は8日、野党候補を一本化すべきとして、国民民主党の玉木雄一郎代表も有力候補だとしました。
これには否定的だった玉木氏でしたが、10日は総理への意欲を見せました。
「私自身、公党の代表として内閣総理大臣を務める覚悟はある。大切な国家を担うに足る基本政策、とりわけ安全保障について、立憲民主党の中の意見をまとめていただきたいし、国民民主党と同じ方向で行くんだということをぜひ確認してもらいたい」
立憲民主党に対し、「基本政策を一致できるか確認してほしい」と注文をつけました。
公明党の政権離脱で総理大臣指名選挙の後ろ倒しの可能性があるなか、月末に迫るトランプ大統領の訪日や韓国で開かれるAPECなどの外交日程への影響も懸念されています。
(「グッド!モーニング」2025年10月11日放送分より)