スポーツの力で町を盛り上げます。岡山県備前市の地域おこし協力隊員が地元を盛り上げようと女子野球チームの設立を目指しています。
女子野球で備前市を盛り上げる
備前市の地域おこし協力隊・太田梨香子さんは、野球で地域を盛り上げようと、2022年4月の女子・硬式野球チーム設立を目指しています。今年3月、メンバー募集のための練習体験会を開きました。
(備前市地域おこし協力隊員/太田梨香子さん)
「備前市はプロ野球選手が3人も出てるのもあってか野球熱が高いように感じてて、市民の方々に応援されて愛されるような女子野球のチームにできたら」
競技人口は毎年増加
全日本女子野球連盟によりますと、女子野球の競技人口は2015年から毎年増加し、2018年には2万人を超えました。さらに2021年は高校女子野球の全国大会決勝が甲子園球場で行われるなど、その裾野は広がっています。
一方で、2010年に誕生した女子プロ野球のリーグは、選手の大量退団などで公式戦ができなくなり2021年、事実上消滅しました。社会人を中心とした「クラブチーム」も、男子の登録チームが約350なのに対し女子は約30チームです。社会人になった女性が野球をプレーできる場は限られています。
こうした背景を受け、社会人になっても野球を続けたい女性に、備前市に移り住んでもらったり県外チームとの試合を誘致したりして、人を呼び込もうという狙いです。
(備前市地域おこし協力隊員/太田梨香子さん)
「関東や関西はクラブチームが増えてきているんですけど、地方となるとまだまだチームが少ないので、高校・大学を卒業した後は都市圏に出てしまったりっていう子が結構いたので、そういう子がこの備前市で続ける環境ができれば」
監督には、元・女子野球日本代表として2度の世界一を経験した石田悠紀子さんを招きました。
(元・日本代表/石田悠紀子 監督)
「東京からこっちに引っ越したんですけれども、備前をまずは盛り上げるということが大事だと思うので、野球が好きで備前でしっかりといろんな方々と触れ合える人間性(の選手)を集めたい」
女子野球のクラブチームでは全日本女子野球連盟主催の全国大会が最高峰。中学生から出場可能ですが、エントリーするためには選手でもある太田さんと監督を含めて4月までに最低「11人」が必要です。
(備前市地域おこし協力隊員/太田梨香子さん)
「高校、大学を卒業した後にやっぱり何か悔いが残ってて続けたいなという子であったり、野球が好きな子に来ていただいて、自分たちの思う存分野球を楽しんでいただけたらなって思います」
果たしてメンバーは集まるのか……
監督に決まった元日本代表の石田さんらと、全国大会出場に必要な中学生以上11人の選手を集めに走りました。
活動開始から7カ月。球場には石田監督がいました。その周りには……たくさんの選手が! 地道に学校関係者などを当たり、地元の中高生や就職を控える大学生など、入団希望者が10人集まりました。
チーム名も決まりました。その名も「備前サンラッキーズ」。地元の小学生が考案したもので、いまの備前市の合併前の旧日生町、旧吉永町から「日」と「吉」を取り「サン」と「ラッキー」でサンラッキーズです。
備前サンラッキーズにはこんな選手も!
香川県坂出市出身の糸瀬瑠衣選手。
実は2021年夏の全国高校女子野球で優勝した神戸広陵高校の3年生。セカンドのレギュラーとして活躍しました。2022年の春からはサンラッキーズ入団のため県内の企業に就職し、備前市に移り住む予定です。
(備前サンラッキーズ/糸瀬瑠衣 選手)
「監督さんに紹介していただいて、それで何か楽しくやる野球だったんですごくやってみたいなと思って。年代広いんですけど楽しくやっていけたらな」
(備前サンラッキーズ/太田梨香子さん)
「まだまだ若い子たちなので、移住してくれて、野球だけじゃなくていろんな面で一緒に地域活性化につなげていけたら」
地元の中学生チームと初の実戦!
この日は入団予定のメンバーが集まって初めての実戦です。対戦相手は地元の中学生チーム、備前ボーイズ。
中学生とはいえ男子相手に1点をもぎ取るなど、はつらつプレー! 敗れはしたものの、順調なスタートを切りました。
(備前サンラッキーズ/糸瀬瑠衣 選手)
「いろんな年代でするのが初めてなので最初は緊張したんですけど、周りの方が優しくしてくれたのですごく楽しくできました。どれぐらいまで上を目指せるかをやっていきたいと思います」
(備前サンラッキーズ/太田梨香子さん)
「とりあえず、まずは楽しくみんなが笑顔でできたのがすごい良かったですね」
入団希望者による初の実戦を終え、2022年4月の本格始動に向け走り出したサンラッキーズ。現在は県内に住むメンバー6人ほどで週1回練習しています。グラウンドは備前市中心部からさらに10キロ離れた兵庫県との県境、三石の球場です。
(備前サンラッキーズ/太田梨香子さん)
「ナイターがあって硬式を使えるところがもうなかなかなくて……。できる中での練習を今はしています」
三石の人たちも歓迎ムード
この日の練習には入団予定の選手たちに加え、幅広い年代の人たちが。実は全員近くに住む三石の女性です。三石で練習していることを知った地元の人たちが練習を盛り上げようと参加してくれました。
(参加した人は―)
「三石も夜このナイターがつくことが夏祭り以外そう最近無いので、せっかく明るくなったので三石の人も参加した方がいいだろうなと思って声掛けしたら、たくさん来てくださって」
「親子で参加させてもらいました。女子って聞いたのですごいなと思って。頑張ってほしいなと思います」
「簡単そうに見えたけど、実際にやってみると結構難しかった。(Q.またやってみたい?)うん」
選手たちもさまざまな年代の人に野球を教えることで、逆に学ぶことも多かったようです。
(元・日本代表/石田悠紀子 監督)
「やっぱり(地元の人と)一緒にできるっていうのはすごくいいことなのかなと思っていて、ジムだったりがあまり無いので、憩いの場じゃないですけどそういう場にもなれば」
目指すは全国大会
2022年4月のチーム設立にめどが立ち、地域とのつながりもできつつあるサンラッキーズ。8月の全国大会出場を目指して練習を重ねます。
(備前サンラッキーズ/太田梨香子さん)
「人数がそろって連盟にも登録できそうな感じなので、少しずつでも仲を深めていって、できるだけ楽しく思いきりプレーできるようなチームにできたらなって思います」
用具の購入などには市の助成金を利用しますが、遠征費などには使えないため、スポンサーやクラウドファンディングなどで資金を集めるということです。