BMXやスケートボードの聖地として親しまれていた岡山県津山市のお店が2022年1月から休業しています。理由は、店主の男性の病気です。難病を患いながらお店の再開を目指す男性や、それを応援する人たち……それぞれが熱い思いを持っていました。
津山市のボンズ・ランプ・カフェ（BRC）は2022年1月から休業しています。以前は、BMXやスケートボードを楽しめる場所として、年間延べ4000人が利用していました。
また、岡山県北では唯一BMXのスクールを開校していたため、子どもたちがBMXに親しめる重要な拠点になっていました。
（BRC店主／櫛田定補さん）
「今、やっと1.5km歩けるようになって、時間的には30分ぐらい歩いてる感じです」
夕暮れ時、田んぼのまわりをゆったりとした足取りで歩く男性。BRCの店主、櫛田定補さん（43）です。病気からの回復を目指し、「リハビリ」のために毎日この道を散歩しています。
（BRC店主／櫛田定補さん）
「手術をなめてた訳じゃないですけど……起きていることができなくて、立ったり起きたりしてもつらくなって、すぐ寝て横に寝てしまうっていう感じがずっと続いてました」
櫛田さんが患ったのは潰瘍性大腸炎です。大腸などの粘膜に炎症や潰瘍を引き起こす国指定の難病で、血便、腹痛などの症状があります。
10年ほど前に潰瘍性大腸炎と診断された後は薬などで症状を抑えていましたが、2021年12月に体調が悪化、2022年1月に入院しました。その後3回手術を行い、大腸を全て摘出しました。
（BRC店主／櫛田定補さん）
「人生で最高に落ちた、って感じで……基本ポジティブに考えるタイプだったんですが、何かこの病気になって、落ち込むっていうのを覚えた」
もともと櫛田さんは「BMXの選手」として大会などで活躍していました。引退後は、岡山県北から世界に羽ばたくBMX選手を育てることを新たな目標にすえ、2011年、地元・津山市にBRCをオープンしました。
その傍ら、2021年12月まで全日本フリースタイルBMX連盟の副理事長として、国内で開かれる大会の会場設営を主導してきました。
BRCの休業が長引く中、今は店の賃料が櫛田さんに重くのしかかっています。
また、店に通っていた子どもたちは、BMXやスケートボードを楽しめる場所がなくなり困っていました。
（江口陽紀くん[11]）
「店長は大丈夫かなとか、BRCに行っていた人らがどこで（BMXに）乗ったりしてるのかなと思いました」
（野々上怜那さん[10]）
「（店長が）心配だったし、これからまたスクールとかも行けるのかなと思った」
その状況を何とかしたいと立ち上がったのが、BRCの常連だった津山高専の2人の学生です。
（津山高専4年／岡崎友亮さん）
「BRCはみんなが集まる家みたいなとこなので、絶対復活させたいなと思いました」
（津山高専4年／堤俊瑛さん）
「僕らにはなくてはならない存在というか。BRCっていう僕らの第2の家みたいな存在を、絶対に津山市からなくしたくないという気持ちがあったので、クラファンを始めようと思いました」
10代の2人が店を存続させるために始めたのは、クラウドファンディングです。金銭的な支援はもちもん、櫛田さんを励ますことが目的でした。
（妻／優希さん）
「すごく私は感動しました。みんな優しい人たちばかりだなって率直に思いました」
（BRC店主／櫛田定補さん）
「大変な時期にその話をいただいたので、本当にビックリというか、うれしいなというか、2人には感謝しかないです」
学生たちは2022年6月にも動画を撮影し櫛田さんを励ましていました。
この日、櫛田さんは学生らのために久しぶりに店を開けました。学生らは早速、思い思いに楽しみ始めました。
（BRC店主／櫛田定補さん）
「『あしたにでも復活させたい』そんな気持ちでいっぱいです。やっぱり楽しそうですね、みんな」
岡山に本部を置く全日本フリースタイルBMX連盟。理事長・出口智嗣さんも櫛田さんを支えていこうと考えている一人です。
（全日本フリースタイルBMX連盟／出口 智嗣 理事長）
「定補が少しでも動けるようなったら、僕自身も津山に行っていろいろ手伝いができるような態勢にはしておくからというので、BRCは絶対残すようにというのは、僕の強い気持ちでもあったので。みんなが大切な場所を定補自身が守っていくというのは、『お前一人じゃないよというのを覚えておいてほしいな』というふうに言いました」
櫛田さんは早ければ2023年の春にもBRCを再開させようとリハビリを続けています。
（BRC店主／櫛田定補さん）
「学生たち2人がすごく頑張ってくれてるんで、僕もこんなことじゃ負けないなという気持ちがより一層強くなったので。休業する前よりもパワーアップしてやっていけたらいいなと思ってます」
