名古屋大、岡山大などの研究グループは21日、AI技術で得られたタンパク質の立体構造と薬との結合具合を調べることにより、薬の効能や副作用を予測する新しい計算方法を開発したと発表しました。
研究成果は21日午前9時に、Cell Press社の国際学術誌「iScience」で公開されました。
研究グループは、Google DeepMind社の人工知能プログラム「AlphaFold」により推定された約2万種類のヒトのタンパク質の立体構造を用いて、約8000種類の薬との親和性を調べる大規模なドッキングシミュレーションを行いました。薬とタンパク質との結合親和性スコアを計算して、それを基に約560種類の疾患に対する効能を予測しました。
ある疾患を治療する時に、標的となるタンパク質の立体構造に対して薬の結合親和性が高ければ、その薬は効能があると考えられます。例えば、鎮痛薬のひとつが腸管炎症性疾患の誘因となるタンパク質との結合親和性が高かったことから、鎮静薬の成分が腸管炎症性疾患に効能があると予測し、実際に、マウスによる過去の研究と整合したということです。
さらに研究グループは、薬の副作用を予測する機械学習モデルを構築し、副作用の発現に関与するタンパク質を抽出できることを確かめました。
岡山大学学術研究院医歯薬学域の澤田隆介助教らは「薬が体内でどんなタンパク質と結合する可能性があるかを明らかにした。医薬品開発の期間短縮と費用削減が期待される」としています。