60年以上の歴史がある岡山県津山市の博物館で貴重なはく製の劣化が進んでいます。将来的に展示できなくなる恐れがあるとして修復のための支援活動が行われています。
迫力満点のジャガーに、大きなホッキョクグマ。すでに絶滅したとされる二ホンカワウソも。
2024年で開館61周年を迎えた津山市の「つやま自然のふしぎ館」。
創設者の森本慶三さんが集めた珍しいはく製などを展示する「自然科学の総合博物館」で、展示総数は2万点を超えます。
(つやま自然のふしぎ館/森本信一 館長)
「動物の実物はく製が約800体ございます。これらがまるで生きているような感じで、皆さんをお迎えしているのが大きな特徴ですね。ワシントン条約という動物の商取引を規制する条約を日本も批准しましたので、非常にある意味では残っているものが貴重なものと言えるかもしれません」
見応えたっぷりの展示は、世代を問わず、多くの人々を魅了していて年間に2万人ほどが訪れます。
(来館者は―)
「本物がいっぱいあってちょっとびっくりしています。こんなにいろんな種類があると思っていなかったので」
「おばあちゃんの家に来て、この博物館に来たいと思って来ました。特にライオンがすごかったです」
「もう絶対に残してほしいです。津山の宝ですから」
その一方で、長い年月が経ち、劣化が進んでいるはく製の修復・保存が課題となっています。
体長約3mのミナミゾウアザラシのはく製はひび割れができています。
(つやま自然のふしぎ館/森本信一 館長)
「表皮がはげていくのと中に入っている詰め物が悪いので、それが温度変化で膨張したり収縮したりする。それで表面の皮を押し上げて破れてくる」
このはく製の修復にかかる費用は材料費だけで10万円ほどかかる可能性があるといいます。
劣化が進んでいるはく製は他にもたくさんありますが、どれだけの費用がかかるかは見通しが立っていません。
コロナ禍で入館料収入が激減したほか光熱費の値上げなどの影響を受ける中で全て修復するのは難しいのが現状です。
時には、SNSで切ないつぶやきも……。
(二ホンカワウソ)
「今日はお客が少ないのう……」
(シマウマ)
「今日は土曜日だしお天気だから、みんな来てくれるんじゃないかなって、まってるの」
そんな中、この博物館を応援しようと、クラウドファンディングが行われています。約800体のはく製を掲載した「写真集」を出版し、施設を全国にPRしようというものです。目標の500万円を超える支援があれば、はく製の修復・保存の費用にあてることにしています。
発起人は東京在住の写真家、村松桂さん。15年ほど前に初めてつやま自然のふしぎ館を訪れ、創設者の熱意に心を打たれたといいます。
(写真家/村松桂さん)
「今は東京で写真で歴史的なものを撮って残していくという仕事をしているんですが、ふしぎ館に行かなかったらこの仕事にも就いていなかったし、人生を変えられたなと思っているので」
村松さんは、はく製の今の姿を記録したいと2023年の秋から2024年の春にかけて施設を訪れ、写真を撮影しました。
(写真家/村松桂さん)
「(写真集が実現すれば)1つ1つのはく製が1ページずつ載る予定なんですね。すべてはく製の横顔で、モノクロ写真なんですけど、その横顔を眺めてはく製が何を見てきたのかとか、どういう経験をしてきたのかそういったことを考えながら見ていただきたいです」
(つやま自然のふしぎ館/森本信一 館長)
「もううれしい限りで私たちも陰ながら村松さんを応援すると同時に、博物館の知名度ももっと上がるのではないかという期待もあります」
クラウドファンディングは11月24日までで、詳しい内容は「つやま自然のふしぎ館」のホームページなどに掲載されています。