同性同士の結婚を認めないのは「憲法違反」だとして香川県三豊市の男性のカップルらが国を訴えた裁判は25日、大阪高裁で判決が言い渡されます。一連の集団訴訟ではこれまで全国の4つの高裁が「違憲判決」を出していて、大阪高裁の判断に注目が集まっています。
(原告/田中昭全さん)
「ともすればね、『当事者の人たちのために』とかって言われることもあるんですけど、そうじゃなくて、あくまで私たちは自分たちのことって割り切ってやっているところがあって、私たちは同性同士で結婚したいんですっていう、それだけのところから始まっているので」
田中昭全さん(47)と川田有希さん(39)。2008年から交際を始め、三豊市で一緒に暮らしています。
2019年2月、2人は三豊市役所を訪れ、婚姻届を提出しました。
(田中昭全さん[2019年2月])
「法律的にも家族になりたいという思いがすごく強くて。今回、婚姻届を出させていただこうかと思って」
しかし、「不適法」であるとして受理されず……。
その10日後、全国4つの地裁で一斉に提訴された集団訴訟で2人は大阪地裁の原告に名を連ねました。(その後5地裁、6件に)
原告側は、同性同士の結婚を認めない民法や戸籍法の規定は憲法が保障する「婚姻の自由」や「法の下の平等」に反すると訴え、国が法改正などを怠ったとして1人当たり100万円の慰謝料を請求しました。
一方、被告の国側は、憲法では「同性間」の婚姻は想定しておらず、民法などが違憲となる余地はないと主張しました。
2022年6月、大阪地裁は「同性カップルにどのような法的保護を与えるかについては議論の過程にあり、現在の法律の規定は憲法違反とは言えない」として原告の訴えを退けました。
(原告/田中昭全さん[2022年6月])
「結局司法で判断するのを逃げたというふうにしか僕らは思えなかった」
(原告/川田有希さん[2022年6月])
「まさしく司法が国に寄っているんじゃないかという疑いもあるぐらいのそういう受け答えだなと僕は思います」
その前の年に出ていた札幌地裁判決は「違憲」。その後、3つの地裁の4件の判決は「違憲」または「違憲状態」と判断が分かれました。
そして舞台は高等裁判所に…。
2024年3月の札幌高裁、10月の東京高裁(1次)、12月の福岡高裁、そして3月7日の名古屋高裁と、いずれも国への賠償請求は退けたものの、4件連続で「違憲」の判断が示されました。
(川田有希さん)
「裁判官がちゃんと原告、控訴人に寄り添った判決を出していただいて、まだちょっと信じられるのかなと」
(田中昭全さん)
「うちの大阪地裁以外がもう全部違憲っていうのが出ている状況では、やっぱり世論も変わってきているという実感がすごくありますね」
大阪地裁の判決では「同性カップルと異性カップルの得られる利益の差は婚姻に類似する制度などで緩和することも可能だ」と言及しました。
田中さんと川田さんらは自分たちが起こしている裁判を「結婚の自由をすべての人に訴訟」と銘打っています。
3月1日、高松市で講演した2人は「同性婚訴訟」という名称を使っていない理由を説明しました。
(田中昭全さん)
「同性婚という名前を使っちゃうと、異性婚とは別に『同性婚』を用意すればいいんでしょと言われても困るんですよ。私たちはあくまで、婚姻の平等を求めています。男女が使える婚姻制度を私たちにも使わせてくださいという名目なので、こういう長ったらしい名前になっています」
3月7日の名古屋高裁判決では「同性カップルが法律婚の制度を利用できないのは法的な差別だ」とし、自治体のパートナーシップ制度などでは不利益は解消されないと指摘しました。
原告弁護団の佐藤倫子弁護士は大阪地裁判決は当時、全国で2つ目の判決で、「まだ議論が深まっていなかった」と話します。
(関西訴訟の弁護団/佐藤倫子 弁護士)
「6つの地方裁判所の判決、そして4つの高等裁判所の判決、どんどんどんどん(議論が)深まっていっていると思う。その積み重ねを受けた上での大阪高裁の判決になりますので、大阪地裁とは全然違う判決になるというふうに期待しています」
一方、相次ぐ違憲判決を受けても、政府は「他の裁判所で継続している同種の訴訟を注視していく」と繰り返しています。
「結婚の平等」の実現を目指す公益社団法人Marriage For All Japanは2019年から国会議員に当事者の声を直接届ける院内集会「マリフォー国会」を開いています。田中さんと川田さんも毎回参加していますが……。
田中さん「党によってはまだ意見が統一できてないとかって言って保留にされたまんまのところが、もう何回参加しても保留のままなんですよね。だから全然議論が進まないし。完全に無視に近いよね」
川田さん「既読スルーだよね」
田中さん「既読スルーだ!それだ、それ。まさにそうだ。うまいこといいますね」
25日の大阪高裁判決で「違憲」の判断が示されると、唯一の「合憲」判決が覆り、5つの高裁全てが「違憲」判決となる、二重のインパクトを持つことになります。
(関西訴訟の弁護団/佐藤倫子 弁護士)
「大阪もやっぱり違憲だよってなると、もう注視するも何も、だって全部違憲ですから。大阪高裁で、いい違憲判決をもらって、ぐっと加速、立法への流れを加速させたいなっていうふうに思っています」
大阪高裁の判決は25日午前11時に言い渡されます。