岡山市の商店街で約20年前に閉店した食器店が10月2日から「閉店セール」を行っています。創業者の娘が「亡き父が集めた品を誰かに使ってほしい」という思いから店を開けました。
岡山市の表町商店街にあるマツオヤ食器店。閉店セール初日の2日、店の前に長蛇の列ができました。
午前11時にセールが始まると、訪れた人は洋食器や和食器調理器具などを手に取り、真剣なまなざしで品定めをしていました。
マツオヤ食器店は約20年前に閉店しましたが、商品は手つかずのまま店内に残っていました。
普段使いの器やヨーロッパの高級メーカーの製品。レトロな雰囲気のものからプロ仕様の調理器具まで当時の価格の4割引きなどで売られています。
(訪れた人は―)
「すごい悩みます」
「レトロな食器が多かった。あまり普通の店には売ってない柄が置いてあって、お買い得な感じもあり、コーヒーカップもあまり見たことないような……高さが低いデザインは珍しい。使えそうだなと思って選んでみました~えへへ」
(かつての常連は―)
「これは、つまようじ。箱がレトロな。食器店というより博物館的な見方をしてよくこのお店に来てたんですよね。いきなり閉店になって、ご主人が亡くなられたという話は聞いたんですけど。毎日(店の前を)通るごとに、どうなってるのかなと思いながら通っていたら、こういう企画があったので、仕事を休んで来ました。懐かしいですね」
「エッグ・スタンド。(Q.ゆで卵を?)そうですそうです。ここがまだ開いている時、高くて買えなかったから。いつも岡山に来ればここに寄ってました」
(訪れた人は―)
「お店、開業をもうちょっとしたらするんで、そのために。(Q.何のお店をされるんですか?)お寿司屋です。すごい安く買えるんで、たくさん買おうと思います。おしゃれなお店をつくりたくて」
「娘がプリンアラモードが好きなので、しようと思って。(器を)見た瞬間、プリンアラモードと思って。(Q.娘さんおいくつ?)中学生なんですけど、レトロ喫茶とか、そういうのにハマってて、そこで食べたプリンアラモードを家でつくるのに器がない、と。(Q.お母さんもお好きですよね?)そうです、一緒に行ってます。回ってます。家喫茶しま~す、これで」
戦後まもなく創業したマツオヤ食器店は約60年間、表町商店街で営業を続け、20年ほど前に創業者が亡くなり、閉店しました。
現在の店の所有者は、県外に暮らしている創業者の娘、有松潤子さん(73)です。「父がこだわって集めた品を誰かに使ってほしい」との思いから、約20年ぶりに店を開けました。
閉店セールを有松さんに持ちかけた岡山市表町商店街連盟の片山進平理事長です。
(岡山市表町商店街連盟/片山進平 理事長)
「(マツオヤ食器店は)長年、いろんな方の思い出の店になっていた。これで終了となりますが、そこから歴史が始まって、つながって継承されていくようなことだと思う。それこそが商店街のあるべき姿だと思う」
(創業者の娘[店の所有者]/有松潤子さん)
「こんなに来てくださると思ってなかったので、大変でしたけどうれしいというか、感激しました。大切に使ってくださったらその食器とかも生きるので、ここでじっとほこりまみれでいるよりは食器たちも幸せだと思います。両親に顔向けができます、亡くなった両親に」
マツオヤ食器店の閉店セールは、12月28日まで行われる予定です。