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【特集】若年性アルツハイマー型認知症の妻と生きる 夫婦が模索する「新たな道」 岡山

 「若年性アルツハイマー型認知症」を患う妻と、6年近く介護を続けている夫。病気が進行する中で、2人が模索する「新たな道」とは?

(岡山県在住 夫/しんごさん[55])
「これからがもっと大変かも分からないけど、頑張りましょうよ、母さん。なるべく施設には入れたくないので……一緒におりたいから。なぜなら、好きだから。母さんがよ、母さんが父さんのこと好きなんでしょ? 離れたくないんでしょ? どうなんですか? カメラの前で全世界の方に言ってくださいよ。よく笑ってもらって、それが一番の薬だと思っているから。若年性アルツハイマーでも、これだけ笑わせてあげれば、元気に長く生きていけることを証明したい」

(妻/かおりさん[55])
「(Q.しんごさんはどんな人ですか?)おもしろい人。フフフ」

50歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断

 取材を始めて、約2年。岡山県に住むかおりさんは50歳の時に「若年性アルツハイマー型認知症」と診断されました。

 お気に入りのタオルなどをテーブルに並べてトントンとたたき、きれいに整えるのが最近の日課です。

(夫/しんごさん)
「これ(薬)をセットするんですけどね。ドネペジルっていう進行を遅らせる薬しか今のところ母さんにはない」

しんごさん「これは何月ですか?」
かおりさん「5」
しんごさん「そうそう5月……何日?」
かおりさん「何やったっけ……」
しんごさん「何やったかな? これ17日」

 記憶障害や言語障害などさまざまな症状が現われ、日常生活が困難になっていく「若年性アルツハイマー型認知症」。根本的な治療法はまだありません。

日記につづられた苦悩

 看護師として働きながら2人の子どもを育て上げたかおりさん。

(夫/しんごさん)
「『何これ? 母さんの日記があるわ』と思って。大事な記憶、記録。な、母さん。一生懸命書いとるもんな。文字も読めない、書けない状況ですから。今はね」

 日記には、当時の苦悩がつづられていました。「早く復帰してお仕事を続けたい」「調子がよかったのにまた物忘れがひどい……自己嫌悪」

(夫/しんごさん)
「最後が、『友達と……』っていうところで染みている。たぶん涙が……書けない自分、次が出んかったんじゃろうな」

しんごさん「母さん名前は何て言うんです? お名前は?」
かおりさん「えっと……」
しんごさん「自分の名前は? 何やったっけ?」
かおりさん「うーん……」
しんごさん「か……」
かおりさん「か……かおり」
しんごさん「かおりって言った? うんうんそう、母さんはかおりですよ」

時間・場所を認識する能力も低下

(夫/しんごさん)
「きょうはどっちかというと調子がええ方じゃないかな。確実にできないこともいっぱい増えていますね。家でトイレの失敗が増えてきたんです。やばいと思って。『トイレ行きたい、トイレが、あれ、どこ?』って。まったく見当違いな感じになってしまう時があるけん、玄関で失敗があって、まさかそんなことになると思わなかった。トイレの位置ぐらい分かると思っていたから」

 時間や場所などを認識する能力が低下するのも症状の1つです。

(夫/しんごさん)
「今はちょっとでも開けたら自動で開くんです。ここにペットボトルが」

 ペットボトルのおもりを使った手作りの「自動ドア」。かおりさんがトイレを認識しやすいように常に電気をつけ、ドアを開けた状態にしています。

 かおりさんは3月、日常生活でほぼ全面的に介助を必要とする「要介護3」の認定を受けました。しんごさんが仕事で家にいない平日の昼間は、デイサービスを利用しています。

しんごさん「母さんお帰り。おやつ食べる?」
かおりさん「うん」
しんごさん「中のおやつを食べたらいいよ、どうぞ。のどを詰まらさんようにちょっとずつ食べてよ」

 かおりさんが1人でいる時間は、見守りカメラを使って話しかけています。

(夫/しんごさん)
「そうよ、もう母さんを中心に生きてます。母さんに捧げてるんですから、父さんの人生は」

仕事と介護を両立に限界「ついに来たかと」

 約6年もの間、さまざまな工夫をしながら仕事と介護を両立してきましたが……

(夫/しんごさん)
「好きだし、一緒におりたい。ちょっとでもおりたいという気持ちがあるから、少々どんなことがあってもやってやろうと思っていたけど、ちょっと限界を感じて、ついに来たかと」

しんごさん「母さんは父さんよりも施設の方がいい? 父さんと一緒にいたい?」
かおりさん「うーん……」

 しんごさんは、自宅近くにあるグループホームに入居の相談をしたといいます。

(夫/しんごさん)
「自分が預けたいという気持ちで言ったけど、めちゃくちゃ何とも言えない気持ちになって、結局は断った。ボロボロ泣きよったら、そこで母さんが『どうしたん? 父さん』って。いやいや大丈夫よって」

かおりさん「ちょっと、ちゃんとしてよ」
しんごさん「こっちのセリフじゃわ。ほんま疲れた。人生疲れとるわ、父さん」

SNSで思い出を発信 新たなつながりも

 しんごさんは、リハビリを兼ねた日常生活の様子をSNSのティックトックで発信しています。2年前に5万人ほどだったフォロワーは約14万7000人に増えました。

(動画撮影の様子)
「はい、では母さん、洗濯しますか? やってみますか? 頑張りましょうね」

 毎日欠かさず投稿している動画は、消えることのない「思い出」です。SNSを通じて、新しいつながりも増えました。

しんごさん「母さんをずっと応援してくれとるんよ、ありがたいな」
かおりさん「ありがとうございます」
しんごさん「奥さんの介護をしとるんよ」

(しんごさんのフォロワー/肉まんさん)
「うちも嫁が脳梗塞で倒れてから、家でじっとおる時に考えるじゃないですか、これからどうしようかと。そういう時に出会った感じです」

 寝たきりの妻の介護を続けている、フォロワーの「肉まん」さん。しんごさんとリアルな経験を語り合います。

(しんごさんのフォロワー/肉まんさん)
「(食事が)いよいよあかんようになって。『どうする? 胃に穴を開けてでも生きたい?』って聞いたら、『うん』って言うから」

(夫/しんごさん)
「肉まんさんも奥さんのこと愛してるし、大事に思っとるけん、いつまでも」

(しんごさんのフォロワー/肉まんさん)
「いける間は添い遂げようという、なかなかできないことだけど、頑張っている人がいるという力はもらえます」

(夫/しんごさん)
「でも、次のタイミングですわ、多分。もう難しいかな……ぎりぎりまで頑張っとるから、お前と一緒にずっとおりたいけん。できりゃほんまにおりたいんよ、母さん、分かっとる?」

仲間や家族とのつながりが「かおりさんの笑顔の源」

しんごさん「ゆいと、じいちゃんですよ。母さんの血が流れてるんですよ、母さんの孫よ、分かっとるよな」
かおりさん「知っとるよ」

 2024年、息子夫婦に誕生したゆいとくん。すくすくと成長し、もうすぐ2歳になります。
そして……

(夫/しんごさん)
「母さんの心の友」

 娘のりなさんにも2025年6月、すずかちゃんが生まれ、孫が2人になりました。

りなさん「本当に父親はよくやってるなって思います」
しんごさん「ありがとう」
りなさん「母親も母親で、楽しそうに毎日を送っているので安心しています。看護師をしていたんですけど、すずかが危ない行動をとった時とかにサポートしてくれるのでそういうところは忘れてない。優しい母親だと思います。私もたまに母親を預かるけど、これを毎日仕事しながらしているのは本当にすごいと思います」

しんごさん「母さん、神よ。父さんは神ですからね。母さんにとってワイは神なんですよ。そこを感じ取ってほしいけど、感じてもらえんのが寂しい。しょうがない、病気なんで」
りなさん「周りが感じてるから、大丈夫」

かおりさん「は?」
しんごさん「肩!」
かおりさん「もう……」
しんごさん「お願い、こっち来て早くこっち来て、おいで。マッサージ」
かおりさん「じゃけん今しよる」
しんごさん「そうじゃなくて、父さんの」
かおりさん「もう……」
しんごさん「枕はマッサージせんでええ」

 言葉が減り、意思疎通が難しくなっているかおりさんですが、1年前と同じ質問をしてみると……

(妻/かおりさん)
「(Q.しんごさんはどんな人ですか?)おもしろい人。フフフ」

(夫/しんごさん)
「ダメな状態でお互いどんどん嫌になるより、距離をあければ新しい2人の関係性で、最後まで楽しくやっていけるんかなということもあって、そっちにシフトしていこうかなってまさに思っているところ」

 これからも2人で笑って生きていくために。しんごさんは新しい道を模索しています。

(2026年5月25日放送「News Park KSB」より)

KSB 報道
執筆:KSB報道
岡山・香川エリアを中心に日々ニュースを取材、発信しています。
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