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【特集】妻は若年性認知症 心の支えは「新たな命」と「SNSのつながり」 岡山・倉敷市

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 50歳で若年性認知症と診断された妻とその夫。妻の症状が少しずつ進む中で、新たに生まれた「命」とSNSを通じてできた「つながり」が夫婦を支えています。

 倉敷市に住む真吾さん(54)と妻のかおりさん(54)。かおりさんは4年半ほど前、50歳で「若年性アルツハイマー型認知症」と診断されました。

(夫/真吾さん)
「だいたい施設とうちの往復しかないから、刺激になるかなと思って。買い物って楽しいじゃないですか。欲しいもののところにしか母さんおらんもんな。ギョウザの前にずっと立ってるとか。ハハハ……」

 真吾さんが仕事に出ている間、かおりさんは朝から夕方までB型事業所で過ごしています。

(夫/真吾さん)
「(事業所の)迎えを待つのに外に出て落ち着かないんです。ここで待ってたらいいよって言うけど、それを忘れるじゃないですか」

 1人で迎えを待つかおりさんが困らないように、さまざまな工夫をしている真吾さん。半年前よりもその数が少し増えていました。

(夫/真吾さん)
「母さんお気に入りのブルゾンなんですけど、もともとチャックだったんです。でもチャックを閉めることが難しくなって、簡単なマジックテープにしたけど、これもいま難しいから僕が朝いつも出かける時までに着させる」

 かおりさんは認知症と診断されるまで、看護師として働きながら、2人の子どもを育ててきました。

(夫/真吾さん)
「(かおりさんは)家のことも子どものことも仕事もしていたから、それを考えたらすごいと思って。これからは自分が恩返しをしないといけない。父さんのこと忘れないように。『いつもありがとうございます、どなたか知らんけど』って言わんようにしてよ」

真吾さん 「28日は何月ですか?」
かおりさん「3月……にじゅう……」
真吾さん「22日の何曜日ですか?」
かおりさん「……」
真吾さん「分からん? 月火水木金……?」
かおりさん「土曜日」
真吾さん「では土曜日の薬を取ってください」

 65歳未満で発症し、脳の萎縮によって記憶力が低下するなどの症状が現れる「若年性アルツハイマー型認知症」。根本的な治療法はなく、かおりさんは進行を遅らせる薬を毎日飲んでいます。

(夫/真吾さん)
「たまに『何で分からんの』『何でできんの』っていう時があるじゃないですか。イラっとなった時は昔は泣きよったんです。今は怒って『もうええ』って出ていこうとするんです。この間もガンガンやられて『おおええよ、殴れ殴れ、ストレスたまってるんだろう、殴れ』って。本当にダメな時はそういう時があってもいいし、怒る時があってもいい」

 そんな真吾さんたちの心の支えになっているのは、2人の子どもと新しい「命」です。

真吾さん「母さんの血が流れてるんですよ。母さんの孫よ、分かっとるよな?」
かおりさん「知っとるよ」

 2024年7月、長男・まおさんと妻・さやかさんの間に初孫のゆいと君が生まれました。

(夫/真吾さん)
「調子よくなるんよ。会った日も次の日も調子がいい。だから頭が活性化されるんやろうな。ええ薬になる、ええリハビリじゃ」

(真吾さんの長男/まおさん)
「うれしいですよね。これが親孝行になってるのかなって実感します。母さんはだいぶ症状が進んで前みたいなはっきりとした意思疎通ができなくなっていると日に日に感じます。何やってもすぐに直後に忘れられているのがショックで、自分もそのうち忘れられるのかなって思ったらつらい気持ちになったり……。父さんは本当に母さんが認知症になってから見違えるように人が変わって本当に丸くなりました。TikTokの投稿も見ていてすごいと思います」

 真吾さんは同じ悩みを持つ人たちの力になりたいと、2023年から日常生活の様子をTikTokで発信しています。

 かおりさんがリハビリをかねて料理や洗濯をする様子や2人のやりとりに大きな反響が…。それを最初に提案したのは、まおさんでした。

(真吾さんの長男/まおさん)
「投稿が励みや癒やしになっているという人がけっこういるみたいで。父さん自身が動画をあげることでモチベーションになっているので、それが一番いいと思います」

 真吾さんは、かおりさんが少しでも長く元気に自宅で過ごせるよう、サポートを続けています。

(夫/真吾さん)
「今の状態を保てるように、とにかく笑ってもらって、それが一番の薬だと思っているから。一番は大切というか好きなので一緒にいたい。離れるのが嫌なので。なあ母さん…。なんで笑うん?『そうよ、あなた』って言ってくれんの?」

(妻/かおりさん)
「(Q.真吾さんってどんな人?)おもしろい人」

 TikTokで7万人以上のフォロワーがいる真吾さん。近くに住むフォロワーとのオフ会など、SNSから生まれた「リアルなつながり」も力になっています。

(夫/真吾さん)
「(怒って)ぼこぼこにされる。ガンガンって。『ごめんごめん、大丈夫』って言って頑張っていこう、頑張らないとしょうがないって母さんも出ていくって言うんよ。お前が出て行ってもみんなが困る、警察が連れて帰るだけじゃって」

(フォロワー)
「会話していたら笑える、絶対その笑いがいいんよ。負けてられんよ」

(夫/真吾さん)
「負けてられんよ。応援してくれている人がいっぱいいるんだから」

(フォロワー)
「そうじゃ、頑張れ頑張れ。大丈夫、大丈夫。(頑張っている様子を)動画やライブから私たちは感じているので、応援したい。みんな同じ気持ちだと私は思います」

(夫/真吾さん)
「でもそろそろ普通に戻ってもらってもいいんですよ、そんなふりをせんでもね。元気なんだから。元気、元気。元気でやっていきましょうね。今の状態を保てるようにね」

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