約50の国と地域のバーテンダーが参加する世界規模のカクテル大会「DIAGEO WORLD CLASS 2026」の日本予選「DIAGEO WORLD CLASS 2026 Japan Final」が2026年7月9日、東京都の六本木ヒルズで開かれ、香川県綾川町出身で現在は東京都の池袋にある「Bar LIBRE」に勤務する長尾和明さん(36)が総合優勝を果たしました。
「WORLD CLASS」はイギリスの大手酒造会社ディアジオ社が主催する世界最大級かつ最も権威があるとされるカクテルの大会です。他の一般的なカクテル大会と違って、数カ月で数10種類ものカクテルを作ってプレゼンする必要があり、参加者にはトライアスロンのような総合的な力が求められる非常にハードな大会です。また、カクテルの完成度や創造性はもちろん、バーテンダーのホスピタリティやプレゼンテーションも重要な評価基準となります。
2026年10月にスコットランドで開かれる世界大会への出場権をかけた日本予選の応募者は非公表ですが、数多くのエントリーの中から、まず書類選考で50人に絞られました。続く2次審査でTOP10が決まり、そこからいよいよ実技審査がスタートです。
今回が6回目の出場となった長尾さんは、故郷・香川のバーや東京、海外でのバーテンダー生活で得た経験を生かし、4部門のうち3部門で1位という圧倒的な成績で見事、総合優勝を勝ち取りました。
長尾さんは香川県綾川町出身の36歳です。高校卒業後、アパレル勤務を経て地元の飲食店で働き始めたのをきっかけに、お酒を提供する仕事に興味を持つようになりました。23歳から勤務した高松市古馬場町の「Bar HEEL」で、その後の飛躍につながる師匠・柾木あすかさんに出会います。
柾木さんは、若手を対象としたカクテルの大会で日本一になったこともある実力者でした。長尾さんは、師匠と同じ「日本一」を目標に、バー勤務が終わった深夜2時から明け方まで、連日、柾木さんと厳しい特訓に明け暮れたそうです。
猛練習の成果もあり、2017年、長尾さんは若手バーテンダーの大会で全国2位になりましたが、惜しくも1位には届きませんでした。日本一になる、という夢を抱いて東京・池袋の「Bar LIBRE」に移籍し、東京の師匠・清崎雄二郎オーナーの元で新たな修業が始まりました。そして、「Bar LIBRE」の海外進出に伴いベトナムのダナンで5年間、世界の最先端のバー文化に触れ、国際感覚を磨きました。
大会の最後のチャレンジ、「世界チャンピオンになれるか!?」を問われたカクテルは、タンカレー・ジンをベースに、出身地の綾川町や高松市、そしてダナンなどの要素を柚子やレモングラスなどのフレーバーに込めました。
綾川町での少年時代には、庭に柚子や橙がある自然豊かな中で育ち、また、祖母を通して華道や茶道などの文化にも触れたという長尾さん。そうした経験が、今のカクテルづくりの強みになっているということです。
また高松市の「Bar HEEL」オーナーの佐竹翔子さんとチーフバーテンダーの柾木あすかさんに対しては、「2人の強く魅力的な女性から技術やレシピだけでなく、お客様への向き合い方、自分の感性を信じること、既成概念にとらわれずに表現することなど、現在の僕のバーテンディングスタイルやクリエイティブスタイルの土台となるものを教えていただだいた」と改めて深く感謝していました。
総合優勝を受けて、「Bar HEEL」オーナーの佐竹さんは「総合優勝おめでとう!オープン当時、実力派の柾木さんとの出会いが私の転機でした。その場所が長尾君の快挙に繋がったと思ってくれてうれしいです。長尾君の姿は2号店『BAR TIE』の後輩たちの刺激となり、夢や希望を与えてくれて、心から感謝してます!」
現在は高松市瓦町でバー「A’s」を営む師匠・柾木さんのもとには、優勝決定後に長尾さんから、日本一になったという意味で「やっと富士山」と一言、メッセージが届いたそうです。柾木さんは「昔、初めてコンペの動きを練習したりレシピを考えたりした頃を思い出して、本当に嬉しくなりました。『やっと富士山』…積み重ねてきた努力が実を結んだ結果だと思います。今まで支えてくれた方々に感謝しながら、次の世界大会でも長尾らしい1杯を作ってきてほしいと思います!」と我がことのように喜んでいました。
これから世界一を目指して新たな戦いが始まる長尾さんに、地元・香川への思いを聞くと、こんな答えが返ってきました。
「香川には素晴らしいバー文化が根付いており、アーティストや職人、ものづくりに興味を持つ方々も数多くいます。 将来的には、空間設計を仕事にしている妻と一緒に、香川で小さなホテルを開業することが夢です。 その場所を通して、香川の食材やお酒、器、工芸、空間、そして人の魅力を、国内外の方々に伝えていきたいと思っています。
そのためにも、今後は地元の作家さんや農家の方、生産者の方々と、より深い関係を築いていきたいです。 僕自身が世界で経験したことを香川に持ち帰り、香川の素晴らしさを再び世界へ発信する。そんな循環を作ることが、地元への恩返しになると考えています」