川沿いを歩いていると、突然水面からバシャっと跳ね上がる魚を見かけたことはありませんか?この魚は何なのか。また、なぜ跳ねているのか。専門家に話を聞くと、身近な魚の行動にも未解明な部分があることが見えてきました。
10月、岡山市南区の旭川で……
(魚を目撃した小学生)
「2回跳ねたり、3回跳ねたり。(Q.サイズは)中くらいや小さいのが跳んでいた。このくらい」
幾度となく目にする魚のジャンプ。目撃情報は先ほどの地点から約6km上流にある岡山城周辺でも……
(記者リポート)
「いま跳びました。大きな個体が跳んでいます。ワーすごい!」
遊覧船のスタッフは――
(遊覧船のスタッフ)
「(Q.川で跳んでいる魚を見る?)はい。しょっちゅう見る。このところ夏以降は見ない日はほとんどないぐらい。毎日跳んでいる。きょうも見た」
魚の正体はなんでしょうか。そしてなぜ、頻繁に跳ねているのでしょうか。魚の生態を研究する岡山理科大学の武山教授に撮影した映像を見てもらいました。
(岡山理科大学 生物地球学部/武山智博 教授)
「映像を見ると、ボラ」
武山教授によると、体に縦じま模様があり、尾びれの形がボラの特徴と一致しているということです。
ボラとは海や、海水と淡水が混じる汽水域に生息し、大きいものは1mほどにもなります。
実は食べることもあるボラ。あの高級珍味「カラスミ」はボラの卵だということ、皆さんご存じでしたか?
さらに、岡山市のスーパーでは1匹まるまる販売しているんです。
(新鮮市場きむら/國元勇治さん)
「白身でくせもなくおいしい。刺身でもフライとかいろいろある。煮付けもいける」
実際に刺身で食べてみると……
(記者リポート)
「タイみたい。臭みもなくてほどよく脂ものっていておいしい」
ボラはなぜ水面を跳ねる?
ここで今回の本題、「ボラはなぜ水面を跳ねるのか」。ボラを扱って30年余り鮮魚コーナーの國元さんに聞いてみると……
(新鮮市場きむら/國元勇治さん)
「分からない。体についた虫を落とすのに跳ねると聞いたことがあるが、そんなに虫はついていない」
ボラを展示している玉野市の渋川マリン水族館の岡館長は――
(渋川マリン水族館/岡秀彦 館長)
「(Q.ボラが跳ねている理由は?)私もどうしてかなというところであまり理由は分からない」
武山教授もボラの生態については「専門外」だそうで……
(岡山理科大学 生物地球学部/武山智博 教授)
「僕も詳しいわけでないので。私自身は(跳ぶ理由を)見つけられていない。考えられる可能性はいくつかあって、何かから逃げていて水面に飛び出す、あるいは空気中に出て直接空気を取り込む可能性がある」
有力なのは「酸素を取り入れる説」
こうした説を検証した研究はあるのでしょうか。調べると、国内で数少ないボラの研究者が、沖縄県の「沖縄美ら海水族館」にいるということで、早速電話してみると……。
沖縄美ら海水族館に勤務する福地伊芙映さんは、学生時代にボラの分類と生活史に関する研究で学位を取得し現在も研究を続けています。
(沖縄美ら海水族館/福地伊芙映さん)
「酸素を取り入れる説は1985年にアメリカ人の魚類学者(ホーズ)がJumping mullet(跳ねるボラ)というタイトルの論文を出している」
福地さんはボラが跳ねる理由に関する論文は世界でも数が少ないとした上で、この論文で示された仮説が有力ではないかと話します。
論文では、水中の酸素の量が減ると跳ねる頻度が多くなる傾向があると述べています。
また、ボラが着水するときの体の向きにも言及しています。
ボラが単体で跳ねる際は体を横向きにしたり、時には上下逆になったりして着水するとしています。
さらに、エラの後ろには空気が溜まる袋状の構造があるとした上で、空気を入れ替えるために体を回転させているのではないかと考察。
水中の酸素量と跳ぶ回数の相関関係と跳び方の特徴などから、「酸素を取り込むために跳んでいるのではないか」と分析しています。
ボラの研究者「結論はまだ出ていない」
ただ、福地さんはこうした説明は間接的な証拠に基づく仮説であり、「酸素を取り込むために跳ぶ」ことが直接的に証明されたとは言えないとしています。
(沖縄美ら海水族館/福地伊芙映さん)
「直接センサーを取り付けて血中酸素が減っているからジャンプが起こると証明するのは難しくて、少なくとも私が把握する限りでは結論はまだ出ていない。どなたかぜひチャレンジしてほしい課題」
身近な自然にも、まだまだ知らないことがある。そう思うといつもの川の景色も少し違ったふうに見えてきます。