なぜ、車の「逆走」が繰り返されるのでしょうか。東北自動車道では「逆走」事故をきっかけに3人が死亡。特にこのゴールデンウィーク、注意が必要だといいます。
■“逆走”GW中は特に注意!
27日、三重県内で撮影されたドライブレコーダーの映像です。追い越し車線を走っていると、前から向かってきたのはスピードを落とすことなくすれ違っていった白の軽トラック。「逆走」です。
軽トラに気付いた運転手が直前で車線を変更し、間一髪で接触を避けられましたが、運転手は「気付くのや避けるのが遅れていたらと思うと、とても怖かったです」とコメントしています。
同じく27日の映像。埼玉県狭山市の道路です。交差点を右折してきた車。本来であれば中央分離帯を越えなければいけませんが、手前の車線に入ってきました。逆走していることに気付いたのか、数十メートル走ったところで停止しました。
逆走は28日も起きていました。午前4時すぎ、まだ暗い茨城県内を走っていると…。追い越し車線をヘッドライトをつけた車が逆走していきました。
■東北道で3人死亡
各地で後を絶たない車の「逆走」。この危険な行為が、また悲劇を生みました。
26日夜、栃木県那須塩原市の東北道上り線で逆走による複数の事故が起きました。逆走した車と正面衝突された車、2人の運転手が死亡。さらに、この事故で発生した渋滞の列にトラックが突っ込み、追突された車の女性も死亡しました。
正面衝突された平岡さんの知人 「これから楽しめる人生を奪っていったんだから、許せない」
今回の現場付近では、去年も逆走による事故が起きています。
那須塩原市の東北道下り線。軽自動車が追い越し車線を逆走しています。この後、車は高速を走行していた乗用車と正面衝突。それぞれの運転手が死亡しました。
理由は分かりませんが、事故を起こす前、軽自動車は突如、道路をUターンし、逆走を始めたということです。
では今回は、なぜ逆走したのでしょうか。専門家の見立ては…。
交通事故鑑定人 熊谷宗徳さん 「左に行ってしまうと逆走になる」
最寄りの黒磯板室インターチェンジから東北道上り線に合流する場合、直前の交差点を右の方向に進む必要があります。専門家が指摘するのは、この交差点を間違えて左折し、上り車線に逆走して入ってしまった可能性です。
交通事故鑑定人 熊谷宗徳さん 「標識であったり、左に曲がりづらいようにポールをギリギリまで立てていたり、色々手は打っているが、それでも物理的に(左に)行けてしまう。特に交通量が少ない地域では(左から)車がなかなか来ない。左に行けるのではないかと左に行く可能性も考えられる」
実は、逆走は全国の高速道路で2日に1回ペースで発生しているとのデータもあります。さらに…。
交通事故鑑定人 熊谷宗徳さん 「連休中は特に多いと思う」
全国で相次ぐ車の「逆走」。NEXCO東日本によりますと、おととしには全国の高速道路で年間200件以上の逆走が発生したそうです。運転手の年齢はおよそ7割を65歳以上の高齢者が占めますが、30代など若い世代の逆走も確認されています。
事故を目撃した運転手の男性は、目を疑ったといいます。先月下旬、東京・日本橋の片側2車線の幹線道路で事故は起きました。
動画を撮影していた車は右車線を走っていましたが、後方右側からものすごい勢いで赤い車が男性の車を追い越していき、スピードを落とすことなく反対車線の歩道に衝突。車体がバウンドするように弾み、街路樹がなぎ倒される様子が衝撃の大きさを物語っています。
後方のドライブレコーダー映像です。事故直前、対向車線には黒のワゴン車が走行していましたが、一瞬、左によける動きが映っていました。その直後、赤い車が反対車線を逆走しながら追い抜いていったのです。
この事故で街路樹などが折れたほか、バス停の時刻表示板が曲がるなどの被害が…。警視庁によりますと、運転していたのは60代の女性で、軽いけがをして病院に搬送されたといいます。
関東屈指の観光地・栃木県日光市の「いろは坂」で起きた逆走です。まだ雪の残るなか、前方から1台の車が…。運転手の男性がクラクションを鳴らします。
運転していた男性 「(いろは坂は)上りのルートと下りのルートが別な道になるので…」
走っていたのは片側2車線の「第二いろは坂」で、前方から向かってきた車は逆走車だったのです。さらに、立て続けに逆走車と遭遇。男性は安全を確認し、路肩に車を止め、110番通報しました。
警察に通報 「もしもし、今『いろは坂』なんですけど、逆走しているのが3台もいました」
状況を説明している、その時でした。
警察に通報 「また下りてきた、ワゴン車。『世田谷』とか県外ナンバーです」
通報している最中にも、4台目の逆走車が…。
男性 「(逆走していった車は)山道で上り坂ですので、(雪で)上れなくなって、Uターンして下りてしまった感じですかね。事故がなかったのは、不幸中の幸いではありますけれども…」
東京・奥多摩町の道路を走る1台のバイク。緩やかなカーブを曲がった次の瞬間、“逆走”。
被害に遭った男性 「突然“逆走車”と遭遇して、そのまま気付いたらぶつかってた」
ぶつかった衝撃でバイクは倒れ、破損した車体の破片が辺りに散らばります。今回の衝突、幸い被害者は全治2週間のけがで済んだといいます。
被害に遭った男性 「(スピードが)出ていたらもっと激しくぶつかって、命に関わるような事故になった可能性もありますよね。すごく後から恐怖を感じました」
一般道での逆走が相次ぐ一方、高速道路でも…。
早朝の外環道を撮影した映像です。1台のトラックが進んでいった後、追い越し車線には前からヘッドライトが付いた車が。車はそのまま追い越し車線を逆走し続けると、その正面には追い越し車線を走行してきた車が…。あわや事故に。
間一髪のところで車はブレーキを踏み、減速。左の車線に逆走車を避け、何とか衝突を免れました。逆走車も危険を感じたのか、ハザードランプを点灯させながら走り去っていきます。
北関東自動車道で撮影されたドライブレコーダーの映像。突如、ハザードランプを付け、路肩へと車を寄せる運転手。追い越し車線には逆走車が…。後続車はとっさに減速し、左へと回避したことで何とか衝突は免れました。
NEXCO東日本担当者 「逆走車は“追い越し車線”を走行してくる傾向がある。自分は走行している時に正しい方向だと思い込んでしまっている」
■なぜ“逆走”相次ぐ?専門家は
なぜ逆走が相次ぐのか、専門家に聞くと…。
交通事故鑑定人 熊谷宗徳さん 「まず第一に『勘違い』。まさか自分が逆走していると思わずに、いつの間にか逆走してしまっているというのがほとんど」
そして、ゴールデンウィークの今は「逆走が増えやすい」と警鐘を鳴らします。
交通事故鑑定人 熊谷宗徳さん 「普段、仕事で車を使わない人も長期の休暇で遠出することが多いと思うが、いつも運転していれば分かるようなところを分からずに入ってしまうこともあるのかなと。逆走してきた車を見たら、大体逆走車は右側車線、追い越し車線を逆走してくるので、できるだけ左側車線を走ることが第一の予防策」