生活に欠かせない食料品が次々と値上げ。今年、その数は2万品目を超えそうな勢いです。家計を直撃する物価高に、政治はどう応えるのでしょうか。
■与野党“物価高対策”の長所短所
参院選を前に、与野党が物価高対策を打ち出しています。与党は1人あたり2万円の給付金を軸に。一方、野党の多くは「消費税率の引き下げや撤廃」などを主張しています。それぞれの対策にどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
野村総研のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英さんに聞きました。
■与党 現金給付 メリット
まずは、与党が掲げる現金給付について。
野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏 「メリットは3つあり、1つ目は比較的スムーズに給付できるということ。2つ目は低所得者の人に的を絞ったピンポイントの給付支援策ができるということ。3つ目は1回限りなのでコストの負担が小さくなる」
■与党 現金給付 デメリット
迅速に対象を絞った支援がしやすい反面、デメリットも…。
木内登英氏 「デメリットは、貯蓄に回ってしまう部分が大きいので、景気浮揚効果が大きくない」
給付金をすぐに消費に回さなければ、景気の底上げにはつながりにくいといいます。
■野党 消費減税 メリット
次に、野党が訴える消費税の減税について。
木内登英氏 「消費税減税の場合は、給付金と比べると短期的だが景気浮揚効果が大きくなる」
買い物のたびに支出が減るため、すぐに効果が期待できる一方で…。
■野党 消費減税 デメリット
木内登英氏 「デメリットとしては、税制改正が必要なので、実行するまでに時間がかかる。もう1つのデメリットは、税収を減らすので財政が悪化する、社会保障支出も支える基礎的な財源である消費税が減税になることで、社会保障政策に悪影響が出てくる可能性がある」
減税政策が思わぬ混乱を招いた国もあります。
イギリス トラス元首相 「私たちはやり遂げる、やり遂げる」
3年前、イギリスのトラス政権が掲げた大型減税。財源が不透明なまま進めた結果、金融市場の信頼を失いポンドは急落、金利は急上昇。いわゆる“トラス・ショック”に発展しました。
同じことが日本でも起こる可能性はあるのでしょうか?
木内登英氏 「日本の場合、金融市場が財政政策に敏感に反応することは起きにくい。日本の国債は9割以上国内の人が買っている。“トラス・ショック”と同じことが起こるとまでは言えないが、悪い金利上昇・円安につながり、国民生活にマイナスの影響が出るリスク」
■専門家「対策の先にある社会を考えて」
木内さんは、物価高対策を行った先の社会を見据える必要があると訴えます。
木内登英氏 「消費税減税が良いか悪いかではなく、それがどういった効果を生み、どういった社会の選択につながってくるのかを(各政党は)説明する必要があるし、それを踏まえて有権者は、各党の政策を評価して投票行動に反映させることが重要」