写真に映るマスクを着けた男性は、高松市出身の文豪・菊池寛です。 ちょうど100年前に大流行したスペイン風邪にかかることを極度に恐れ、マスクを手放さなかった菊池寛は、その名も「マスク」などスペイン風邪を題材にした3本の小説を残しているんです。
「父帰る」や「無名作家の日記」など様々な文学作品を世に残した菊池寛。 高松市の菊池寛記念館では現在、スペイン風邪をテーマにした特別展示を行っています。
スペイン風邪は1918年から1920年頃にかけて、全世界で約6億人が感染し、日本でも39万人が死亡しました。
特別展示では、この頃に書かれた「マスク」、「神の如く(ごとく)弱し」、「簡単な死去」の3つの作品を紹介しています。
(記者リポート) 「菊池寛は当時心臓を悪くしていたので、このようにスペイン風邪にかからないようにマスクをしていました。そのため、菊池寛の作品『マスク』も『神の如く弱し』も『簡単な死去』も全て彼の実体験をもとに作られた作品です」
(菊池寛記念館/学芸担当 福江成美さん) 「菊池寛は結構おおざっぱな人物のように映るものが多いんですけれども、こちらのスペイン風邪に関しては、かなり菊池寛は神経質な人だなと言われています。
小説「マスク」の主人公は菊池寛自身。 ある暑い日にふと恥ずかしくなってマスクを外すと、堂々とマスクをしている男に出会うという話です。
彼はマスクの着用以外にも、うがいを徹底し、さらに外出も控えてスペイン風邪を予防していたそうです。 作品からは、当時の社会の変化なども感じることができます。
(来場者はー) 「こういうの見ていると、今と本当変わらないし、やっている予防措置も今も、当時も100年前も全然変わらないということが、ちょっとびっくりしました」
スペイン風邪を通じて菊池寛の作品や、当時の世相を知ることができる展示会は30日まで開かれる予定です。