自宅と土地を担保に金融機関から融資を受ける「リバースモーゲージ」というローンがあります。西日本豪雨で大規模な浸水被害を受けた倉敷市真備町では、この「リバースモーゲージ」を活用して家を再建し、長年住み慣れた場所へ戻る人が増えています。
2月、倉敷市真備町箭田に新しい家が建ちました。
(川西洋子さん) 「ここですぐこしらえてそこで食べるんです。お薬を私が1日に10種類くらい飲んでるんです、(飲み水用 の)水道を余分に付けていただいた」 Q.そのまま飲める? 「飲めるんです」
この家に住む川西洋子さん、80歳。2LDKの家は至る所に川西さんの好みを反映させています。
(川西洋子さん) 「もう1人だから、ピンクピンクで(ピンクの布団みせ)。結婚してから真備にここに家を建てたから、やっぱしいい、自分のふるさとだからね」
2018年7月の西日本豪雨で、川西さんの自宅は1階の天井近くまで浸水しました。被災後、岡山市のみなし仮設住宅などで暮らしていましたが自宅があった場所に家を建て直しました。
川西さんは26年前、夫の典男さんが亡くなってから1人暮らしです。
(川西洋子さん) 「娘の所もいいと思ったけど、やっぱし友達がおらんでしょ、ここへ帰ったらお友達がたくさんおるからね、それでもう帰ろうと思って自分で決めて」
川西さんは住宅金融支援機構が被災した60歳以上を対象に行っている「リバースモーゲージ」という融資を利用しました。
(倉敷市住宅課/大本進 課長) 「返済は存命期間中は利息だけ、そしてお亡くなりになられた時に担保となっている土地とか家を売却して返済する、そういった制度なんですけど、そちらに対して倉敷市が補助を入れます」
川西さんは再建する自宅と土地を担保に、住宅金融支援機構から約1000万円の融資を受けました。それに自己資金と支援金を足した約1500万円で自宅を再建しました。 川西さんは、倉敷市の補助制度も利用しました。川西さんが利子の半分を生涯にわたって負担する仕組みで、毎月の支払額は約8000円です。 融資を受けた1000万円は、川西さんが亡くなった後、自宅と土地を売って返済します。
(川西洋子さん) 「娘も孫もみんな真備には帰らない(家は)いらないと言うから、だからそういうふうに返済してくれたらいいからといってしたんです。よかった、だから一番に飛びついたが」
(記者) 「真備町では住宅を再建する際、平屋建てを選ぶ人が増えています」
川西さんの家は平屋建てです。西日本豪雨の時に避難した経験で心に決めたことがあったからです。
(川西洋子さん) 「今度は早く逃げないといかんでしょう。2階がないんだから」
建築研究所が倉敷市でリバースモーゲージを利用した被災者を対象に行ったアンケートによると、被災前は92パーセントが3階建てでしたが再建した住宅の74パーセントが平屋建てでした。
利用者の平均年齢が72歳と高齢で、夫婦2人暮らしの世帯が多く移動の負担が少ない平屋を希望する人が増えているとみられます。
真備町有井にもリバースモーゲージを利用して再建した住宅があります。
(井川博之さん) 「こちらが玄関と店、店といいますか事務所ですね」
化粧品の訪問販売を行っている井川博之さん、72歳です。 西日本豪雨では自宅が2階まで浸水しました。事務所の奥の扉を開けると自宅につながっています。この自宅部分をリバースモーゲージを利用して建て直しました。
(井川博之さん) 「一家団らんの場所をつくっておくと子どもたちも帰ってくるという、こういうものなかったら帰ってこないでしょ」
井川さんの子ども3人は独立して真備町を離れています。
(井川博之さん) 「将来10年か20年、その時には(相続人の)子どもたちがどうするかいい家を建てとけば使うなり買い取って、賃借出すなりそういうこともできるだろうしいろんな方法があるから、われわれはそこまで考える必要ないかなと」
(倉敷市住宅課/大本進 課長) 「(家を)残したいということがあれば、必ずしも売却をされなくても融資を受けた金額を支払いすればそれで土地や家はそのまま残すことができます」
倉敷市の補助制度を適用したリバースモーゲージの利用は2020年5月末現在、100件を超えていて6割が家を再建して新たな生活を始めています。
(井川博之さん) 「生まれ育った所、長くいた居住の地域は愛着があるし、思い出がいっぱい詰まってるし、それから周りの人たちの交流関係全てありますので、これからまた頑張っていこうという気はこちらに帰ってきたおかげであるような気がする」