香川県が解体を決めた旧県立体育館の保存と活用を目指す団体が民間による買い取りで「観光交流拠点」への再生を目指す提案を発表しました。
複数の企業のサポートを受けて設立した「旧香川県立体育館再生委員会」が23日、高松市で記者会見を開きました。
世界的な建築家、丹下健三が設計した旧香川県立体育館は耐震性に問題があるとして2014年に閉館。香川県が約10億円かけて解体することを決めています。
再生委員会は県から建物と敷地を買い取るか借りるなどして旧体育館をブックラウンジを併設したホテルにする案などを提示しました。
耐震改修や用途変更に伴う初期投資を30億から60億円と見込んでいて、参画を検討する企業や複数のファンドから資金調達のめどは立っているとしています。
また、建築文化の継承に向け、「再生」を目指す建物への経済的支援に動き出している文化庁にも働き掛ける意向です。
香川県教委は8月にも解体工事の事業者を選定する一般競争入札の公告を行う準備を進めています。
再生委員会は7月18日、県教委に対し、入札の手続きを一旦止め、買い取りなどに向けた協議を始めるよう申し入れました。
しかし香川県の池田知事は22日の会見で「時間をかけて検討が必要な提案であって、地震発生の可能性が高まる中、早期に安全を確保する必要がある」として予定通り解体を進める考えを示しました。
再生委員会の委員長を務める高松市の建築家、長田慶太さんは会見で、「戦後間もない時代にこの建物を作った人たちの情熱を、街の資産として次世代につないでいきたい」と話しました。一方で「これまでの保存運動は感情論だととらえられ、民意に届きづらかった」と、買い取りを目指した理由を述べました。
(旧香川県立体育館再生委員会/長田慶太 委員長[高松市の建築家])
「この提案はこのひとつの建築を、文化や芸術や歴史とかいう言語だけでなく私たちの税金の使い道、解体費10億円と売却による利益、それをどう考えるかというお金の使い道の議論でもあります。いろんな場所で議論や再思考の場所が生まれ、結果として民意がうねり、やがて行政を動かしてくれると信じています」